女性キャラが痩せて文句を言われるという謎
ダイエット。
いわゆる減量のことですが、実はダイエットという言葉そのものの意味は健康のために食事を制限するというものであり、必ずしも痩せるために行われるものではありません。
女性にとってはある意味最大の敵とも言えますが、日本人女性の多くは痩せ型なのにさらに痩せようとする場合が多いので、ある意味本来のダイエットとはかけ離れたダイエットが行われているのが現状です。
でも痩せてた方が健康的だよねと思う人は多いでしょうが、実は日本人はめっさ糖尿病になりやすいので、痩せてても普通に糖尿病を発症したりします。
大切なのは栄養バランスを考えることと、よく噛んでゆっくりと食べることです。
「フッ。しかし今の私に隙はありません!」
そう言ってリビングの真ん中で謎のポージングをしているのは、元意識高い系エルフなイネルティアさんです。
まん丸エルフとかオークはエルフが太って変質する説とか言われたい放題のイネルティアさんでしたが、青いキャミソールとデニムに包まれたその体は痩せていながらも出るところは出ている正に芸術とすら言える美しさです。
その眼福な光景にローマンさんが目を押さえて転がり回り、ナタンさんが親の仇のように白玉こねまくってます。
「おのれおのれおのれおのれおのれ! 私のささやかな願いを踏みにじって楽しいというのですか!」
「ナタンさんこねすぎです。茹でるから丸めてください」
「あ、ハイ」
相変わらず言ってることがおかしいナタンさんでしたが、シーナさんに注意されると素に戻って白玉を丸め始めました。
安達家のオカンに逆らえる人間など存在しないのです。
「ふふっ。今となってはナタンさんの悪魔の如き菓子類も可愛いものです」
「むしろわしにはおぬしのその態度が可愛い」
積極的にフラグを立てていくイネルティアさんを頬杖ついて生温かい目で見るリィンベルさん。
同族とフリーダム神官の高度なプレイに巻き込まれたせいか、少し疲れているように見えます。
なおからかうわけでもなくしみじみとした様子で「……老けたな」と言った吸血鬼風貴族メンが居ましたが、足の指を角にぶつける呪いが発動し、爪がトイレの蓋みたいになったので地味に凹んで引きこもりました。
「しかしまあおぬしにとってはいい経験になったのではないか」
「どこがですか!?」
太ってよかったねと言われてゆで上がった白玉を輝く目で眺めながら抗議するイネルティアさん。
でも実際息のつまるような意識の高さはなくなったので、エルテさんみたいな小動物系女子からすれば接しやすくなったのは間違いありません。
「おぬしはエルフにしては珍しく人間を高く評価しているようじゃがな。だからといってエルフが人間のように生きるのは無理じゃよ。何せ人間の何倍、下手をすれば何十倍もの時を生きねばならんからな。同じペースで生きたら息切れするぞ」
そう言って微笑むリィンベルさんには、老いとも違う経験に裏打ちされた落ち着きと余裕がありました。
伊達に千年以上もの時を生きているBBAではないのです。
「そういえば、リィンベル様は故郷にご家族は?」
「居るには居たがの。わしはどうも他のエルフよりもさらに寿命が長いらしい。玄孫あたりまでは面倒を見ておったが、それより先はどうにも他人にしか思えなんだ」
懐かしむように言うリィンベルさんの顔は、同時にどこか寂し気でした。
家族に見守られて死ぬのは一つの幸せでしょうが、家族の死を一方的に見守り続けるというのはどのような思いを彼女に刻んだのでしょうか。
「すいません。お辛かったでしょう」
「いや別に」
「はい?」
まずいことを聞いてしまったと謝ったイネルティアさんでしたが、当のリィンベルさんは案外ケロッとしていました。
「そこはホレ。他人にしか思えないのならば改めて知り合いになればいいと思えば新鮮じゃろう。別れが多いのならばそれ以上の出会いをすればいい」
そう言って笑うリィンベルさんは、先ほどまでの沈んだ空気は何だったのかと言いたくなるほど明るく、若々しくすらありました。
それを見て毒気を抜かれたイネルティアさんも、ほっと息をつきます。
「つまりは、長い人生楽しまなければ損ということでしょうか」
「そうそう。おぬしの場合このまま食に拘ればいいのではないか。ずっと日本に居るつもりならば、千年後くらいに重宝されるかもしれんぞ」
「私は普通のエルフですからそこまで長生きはできませんよ」
「フルーツ白玉できましたよー」
「これを食べてせいぜい太るといいでしょう!」
そう呆れたようにイネルティアさんと、朗らかに笑みを浮かべるリィンベルさん。
そして本日のおやつを持ってくるシーナさんとナタンさん。
今日も日本は平和です。