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魔王惨状

 ぎりぎり二週間経ってないからセーフ(アウト)。

 明日も更新します。

「実はもう一国参加する予定でね」


 ドワーフ王国で始まった対日本会議。

 しかしいざ会議を始めようかと各国の代表及び補佐役が席に着いたところで、この会議の発起人であるフィッツガルドの皇帝陛下が唐突にそんなことを言いました。


「おや? アルジェント公国からは『全てメルディアにお任せします』と快い返事をいただいていますが」


 そうにこやかに言うメルディアのハインツ王子ですが、事情を知る者が聞いたら快く(涙目)だったであろうことは明白です。

 実質属国なアルジェント公国に発言権とかありません。これも何もかも貧乏が悪いのです。


「いやいや。恐らくここに居る誰もが予想していない国だよ。だからちょっとしたサプライズとして伏せさせてもらった」

「ほう。それは楽しみだな」


 そう言って笑うガルディアのリチャード陛下ですが、隣の王妃様は嫌な予感がするのか眉間に皺が寄っています。


「というわけで魔界から魔王陛下にお越しいただいた」

「私、参上!」

『ちょっと待て!?』


 扉をバーンッと開け放ち、謎のポーズを決めながら現れる魔王様とつっこむ各国代表。

 最初からクライマックスだぜ!


 ちなみにこうして魔王様が一人遅れて参加したのは皇帝陛下の言う通りサプライズであり、決して作者が出すのを忘れていたわけではありません(自白)。


「魔王!? 何で魔王!?」

「あとお付きのスケルトンさんだ」

「どうでもいいわ!?」

「というかスケルトンは役職でも個人名でもなく種族名だろ!?」


 笑顔で紹介を続ける皇帝陛下に対し、ガルディアメルディア連合から加速する怒涛のつっこみ。

 魔王様の隣でどうでもいいと言われたスケルトンさんがいじけています。


「いやー熱烈歓迎やね。あ、私の席ここ?」

「貴様は貴様でマイペースだな!?」


 そしてそんな騒ぎも気にせず、空いている席の前に「魔界代表魔王」と書かれたプレートを置いて座る魔王様。

 この程度の騒乱で怯むようなら脳筋だらけの魔界で魔王とかやってられません。


「……アンタもしかして日本人か?」


 一方普段なら真っ先につっこんでいたであろう王妃様でしたが、目の前の髪が赤くて何か角生えてる人を冷静に観察していました。


「おお! よく分かったなあ。こんななりやのに」

「色合いはともかく顔立ちがこっちの人間とは違うからな。私は利根川アサヒ。いや、もう結婚してるからアサヒ・ガルディアか?」

「私は天海レイナ。よろしゅう……って結婚しとんかい!? ええなあ、隣の王様やろ。イケメンやん」

「あー……ソウダネ」

「アサヒ。何故目をそらす」


 魔王様に羨ましがられる王妃様ですが、その王様の残念っぷりを知っているので素直に自慢できません。

 実際王妃様が喝を入れて目を覚まさせていなかったら、ガルディアは今頃滅びていたことでしょう。

 それはそれで隣のメルディアの王子様が嬉々として占領とかしそうですが、それはそれです。


「聞いての通り魔王陛下は日本人でね。彼女が魔王になってからは魔族も大人しくなり平和路線を取っているそうだ」

「大陸西部の国とは和平交渉終わったし、フィッツガルドとも同盟組めたから次はドワーフ王国やな!」

「ほほ。わしのところかい?」


 魔王様の突然の「仲良くしようぜ!」発言に余裕で返すラーズ陛下。

 流石年の功。まったく動じていません。


「あ、そうそう。ケロス共和国の代表の人どなた?」

「え、あ、はい。私ですが?」


 魔王様からのいきなりの指名に震えながら手をあげるカルモさん。

 カルモさんは常識的な人間であり戦闘力も常識的にないので、魔王と対峙しろとか死ねと同義です。

 もっとも目の前の魔王様と対峙してたら別の場所が死にそうですが。


「農業大国で米も扱っとるんやろ? うちでも食料輸入したいんやけど」

「は、はあ。それは構いませんが。魔界となると大陸西部のさらに西でしょう。輸送にかかる時間もコストも馬鹿にならないと思うのですが……」

「ああ、その辺は大丈夫。空飛べる連中に空輸させるからはよできるやろ」

『なにぃ!?』


 空飛ぶ魔族による空中輸送。

 それを聞いた皇帝陛下と王様と王子様が食いつきます。


「……魔王陛下。その空を飛べる方々を借りられないだろうか。転移魔術は研究させているが、普及するには難易度が高くてね」

「うちでも借りたいな。報酬はちゃんと払うが」

「海や山をショートカットできるならメルディアとも結構近くなりますよね。これを機に貿易でも……」


 そして始まる多国間交渉。

 清々しいほどに会議の本来の目的が投げ捨てられています。


「あの……止めなくてよろしいのでしょうか?」

「止めても文句言うだろこいつら。もう満足するまでほっとけ」


 そして自国の皇帝はともかく他の国の代表には強く言えず困った様子のヴィルヘルミナさんと、ある意味馬鹿男どもの相手には慣れている王妃様。


 今日も異世界は平和です。


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