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自転車がスリップし十メートル滑走

 冬。

 いわゆる春夏秋冬のうち一番寒い季節ですが、同じ日本国内でも北と南で結構気温が違うため、印象は異なるかもしれません。

 特に積雪の差は顕著であり、毎年雪かきが大変だという人も居れば、雪だるまとか作ったことねえよという人も居るはずです。


 ちなみに日本では雪が積もるたびに、各地の暇人たちが大量の雪だるまや雪像を作るのが海外にすら知れ渡ったりしています。

 最近では渋谷駅のハチ公が増えたりしています。

 ハチ公が増えたらご主人様が困りそうですが、お盆には溶けてるので多分問題ありません。


「あー寒かったです」


 そんな冬も深くなってきたある日の午後。

 休日ということで学校の友人たちと出かけていたエルテさんが半ば駆け込むようにドアを開けて帰宅しました。

 首回りがもこもこしたコートを着ていますがそれでも寒かったようです。外気との差のせいか頬が赤くなっています。


「おかえりでござる~」

「おかえり」

「ただいまです」


 そんなエルテさんを出迎えたのは、ヤヨイさんとマカミさんのケモ耳コンビ。

 バラエティ番組を見ているようですがマカミさんが相変わらず無表情です。でも笑うタイミングで耳と尻尾がピコピコしてるので楽しんではいるようです。


「ふあ~。こんなに寒いのによく外出できるでござるなあ~」

「ヤヨイさん平日は普通に学校行ってるじゃないですか」


 寒さに弱いのか、ヤヨイさんが日本の誇る冬のリーサルウェポンこたつに突っ伏して丸まっています。

 寒さに弱いというより、こたつの魔力から抜け出せないだけかもしれません。


「……」


 一方引き続き無表情にテレビを見ているマカミさん。

 背筋が伸びています。猫液体説を体現する蕩けっぷりのヤヨイさんとは正反対の堅物っぷりです。


「……庭駆けまわらないんですか?」

「何故そうな……俺は犬ではなく狼だ」


 思わず言ってしまったエルテさんに対し途中で言いたいことに気付きつっこむマカミさん。

 でも普段無表情なマカミさんが喜んで庭駆けまわってたら軽いホラーです。


「アハハ。マカミ殿は普段から警察犬として駆け回ってるから今更外になど出ないでござるよ」

「俺は犬ではなく狼なのだが」


 ヤヨイさんの言い様に一応つっこむマカミさんですが、警察狼というのは自分でも語呂が悪いと思ったのか先ほどより勢いが弱めです。

 耳が若干垂れてます。どうやら地味に凹んだようです。


「そういえばヤヨイさんは猫扱いされるの嫌とかじゃないんですか?」

「ん~? 嫌も何も実際拙者半分猫でござる故。猫としての習性が抑えきれないのだから猫扱いは仕方ないと思ってるでござるよ」


 こたつ布団をめくって隣に入るエルテさんに、顔をこたつにくっつけたまま答えるヤヨイさん。

 今まさにこたつで丸くなっているので凄い説得力です。


「……でも唐突に目の前に猫じゃらしを出してくるのはやめてほしいでござる」

「ああ」


 確かにそれはおもちゃで遊ぶような子供だと思われて嫌だろう。

 そう思ったエルテさんでしたが。


「……いきなり出されると咄嗟にじゃれつきたくなる故」

「……」


 じゃれるんだ。

 そう思ったエルテさんでしたが、何か言っちゃうとかわいそうな気がしたので沈黙を守りました。

 ちなみにこのことが巡り巡ってシーナさんの耳に入り、ヤヨイさんが身も心も弄ばれるのは少し先の話です。


 今日も日本は平和です。



「はうあ~。やっぱり冬はこたつにみかんだよね~」


 一方高天原。

 天津神の主神がこたつに入って溶けています。

 相変わらずコンセントの数が足りないのでPCを取るかこたつを取るか悩みまくりましたが、呆れ顔でタコ足持ってきたオモイカネ様によって解決しました。

 でも規格以上のものを繋いだりすると熱が発生してコンセントが溶けたりするので気をつけましょう。

 ……あの時は本当に恐かった。


「完全にだらけきってますね。姉上も風の子なのですからたまには外に出た方がいいのでは?」

「私子供じゃないもん!?」


 ツクヨミ様からの姉を姉と思わぬ発言にこたつを叩きながら立ち上がるアマテラス様。

 反応が完全に子供です。


「大体ツクヨミは夜はトヨちゃんと引っ付いてるんだからこたついらないでしょ!?」

「そういうことに言及しないでくださいよ!?」


 珍しくツクヨミ様への反撃に成功するアマテラス様。

 姉に自分の交際関係が筒抜けなのは弟に大ダメージです。


「あら? 私と一緒なのは嫌なんですかツクヨミ様?」

「いやそういうことではなく……」


 トヨウケヒメ様からの追撃。

 姉と彼女がタッグを組みました。ツクヨミ様完全敗北です。


「じゃあ今日は私がトヨちゃんと一緒に寝る!」

「あらあら。よろしいんですかアマテラス様?」

「……」


 一瞬「何それ混ざりたい」と思ったツクヨミ様でしたが、口にしたら塵を見るような目で見られるのは確実なので口をつぐみました。

 今日も高天原は平和です。

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[一言] ↪︎  ……あの時は本当に恐かった。 義務教育がどれだけ大事か分かる瞬間
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