病んだこよみ
時雨の帰りが遅いまた千夜先輩と一緒にいるのかな?このままじゃ時雨を取られちゃう。どうしよう。また一人になっちゃう。…そうだ時雨を私だけのものにしちゃえばいいんだ…。
ふと目が覚めたら俺は拘束されていた。
時雨「ん?なんだ?」
なんでこんな事に?たしかこよみが淹れてくれたお茶を飲んで…あれ?それからの記憶がない…?
こよみ「あ、時雨、目覚めたんだ」
時雨「こよみ!これはなんだ⁉」
こよみ「なんだろうね」
こよみがそう言った時俺は感じた
ことのない恐怖に襲われた。声色はこよみとは思えない低い声、目はまるで底なし沼のような黒く濁った色
こよみ「ねえ時雨、昨日帰りが遅かったけど何をしてたの?」
時雨「そ、それは…」
こよみ「また千夜先輩と一緒にいたの?」
時雨「…」
こよみ「沈黙は肯定とみなすよ。時雨何で他の女なんかに浮気なんかしてるの?」
浮気って俺たち付き合ってるわけじゃないのに…。そう思ったところで俺は周りを見渡した。
時雨「っ‼‼⁉」
ここはっ⁉まさか⁉
全身から冷や汗が流れる。呼吸もだんだん苦しくなってくる
時雨「こよみ…ここは…」
こよみ「んー?パパとママがいた部屋だよー?」
そうここはあの赤い人形が置かれていた部屋だった。
こよみ「時雨これからはずっと一緒だよ?」
彼女はそう笑顔で言った。しかし俺にはその笑顔がとても恐ろしく映った。
時雨「こよみ冗談はやめろ」
こよみ「冗談なんかじゃないよ」
時雨「憂姫はっ」
俺がそう言いかけた時恐ろしいスピードで投げられた包丁が顔すれすれに壁に刺さった。
こよみ「なんで他の女の名前が出てくるの…?ここは私と時雨の二人っきりなんだよ?」
こよみは正気じゃない何でこんな事に…。
こよみ「時雨が悪いんだよ? 私がどれだけ尽くしても全く気づいてくれないどころか他の女に浮気までして」
…こよみが俺の事を異性として好きだったのは薄々勘付いていた。でも、俺はこよみの事を幼馴染として好きだ。そして何よりこよみにそれを聞く事によってギリギリで保ってきた関係が崩れるのが嫌だった。でも、それのせいでこんな事になるなんて。
こよみ「時雨、私だけを見て他の女なんかになびかないで、お願い…」
泣そうな顔で懇願してくるこよみ
でも、俺は…
時雨「こよみ、俺はお前の事が好きだ。」
こよみ「え?」
こよみが驚いた顔をする
時雨「でもそれは幼馴染としてなんだ。お前が望むような関係にはなれない」
こよみ「そっか…、ふふっあはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
こよみは狂ったように笑いだした
こよみ「ははっ、そう…。また時雨は私を裏切ったんだね。あの時約束したのに!」
俺は答えられない。
こよみ「なんで何も言わないの?ねえ!」
何も言えない。
こよみ「私を一人なんかにはしないってあの時言ったよね‼‼」
激昂したこよみの言葉の一言一言が俺の胸に突き刺さる。
あの時の人形は俺がいればこよみは大丈夫だと信じてこよみを俺に預けてくれた。でも俺の優柔不断さがこよみを再び孤独にしてしまった。俺はこよみをまた裏切ってしまった。
こよみ「もういいよ」
こよみはそう言って壁に刺さっていた包丁を引き抜いた。
こよみ「最近ねパパとママが帰って来てくれたんだ」
ギィ…ゴトン…ギィ…ゴトン…
2体の赤い人形がニタァと微笑みながら俺に近づいてくる。目も鼻も口も無いはずなのに俺にははそう見えた。まるでオマエハワタシトノヤクソクヲマモラナカッタ。ソノバツトシテオマエハワタシノナカマニナルノダヨ。と言ってるようだった。
こよみ「時雨が私の物にならないならいいよ。壊すから」
こよみはそう言って俺の胸に包丁を振り落ろした。
肉を切り裂き深々と刺さる。気が遠くなるような痛みが襲う。でも俺はまだ生きている。
こよみ「大丈夫だよ時雨、私が一生愛してあげる」
そう言ってこよみは俺に口づけをする。こよみは人形になった俺をずっと愛し続けるだろう。そしてもう一回俺の胸に包丁が打ち込まれた……。最期に彼女の言葉が聞こえた。
こよみ「これからはずっと一緒だよ…時雨…。」