メイドで御座いっ!!
始めて短編らしい短編小説を出します。
私はその日、ひどく疲れていたため、帰宅してすぐに布団を敷いて横になった。
次に目を覚ました時には、外はもう夜になっていたわけであるが、その時、私の意思は別のことに向いていた。
・・・
取り敢えず、私は、今私の腹の上で器用にも片膝を立ててゆったりとこちらを見下ろす御仁に尋ねたい。
「君は誰ですか。」
「メイドに…………御座い。」
いよぉぉぉぉぉぉおおおおお、PON!
メイドときましたか。
「今、君がした奇妙なポーズは一体何ですか。」
「見得で…………御座い。」
「メイドの挨拶は。」
「普通に45°ほど頭を下げる敬礼、座礼にては「行」の礼で御座い。」
「では、先ほど君がしたのは。」
「行の礼で御座い。」
・・・あれ?
「……なるほど、この話はこれで終わりにしましょう。」
まだまだ尋ねたいことはある。
「君のその手にある物は。」
「一流の煙管で御座い。」
一流の、と頭につけてくるところが図々しい。
「メイドとは、室内で喫煙するものなのでしょうか。」
「入った家では常に大きく構える。これがあっしのような者の嗜みで御座い。」
・・・そうなのか?
「なるほど、わかりました。その話はおいておきましょうか。」
まだ聞くべきことはある。
「君はここで働くメイド、そうですね。」
「左様で御座い。」
「両親には挨拶しましたか。」
「ええ。」
「どの様に?」
「本日よりこの家で家政婦を担当します、秋水喜多代と申します。」
アキス、キタヨ?
アキス(に)キタヨ?
ふざけているのか?
「因みに特技は。」
「目星をつける。忍び寄る。掠め取る。姿をくらます。」
「もう一度。」
「調理、洗濯、掃除、お子さんの送迎、勉強の手伝い、何でも御座い。」
……んー。おかしな答えが帰ってきた気が……。
取り合えず、他にも聞いてみよう。
「君の顔の、その、目尻あたりにある模様、何です?
歌舞伎役者、もしくは神社の稲荷の顔に見られるそれににていますが。」
「風流に御座い。」
堂々とした態度で彼女は答える。
「メイドにそのような風習があるのですか。」
「メイドにはメイドの、大工には大工の、俳人には俳人の風流が御座い。」
聞き方を誤ったようだ。
「質問を変えます。メイドのメイクといえば。」
「抑え目のナチュラルメイクに御座い。」
「では、君の顔のそれは。」
「あっしのナチュラルメイクに御座い。」
・・・え?
「もう一度、尋ねますが、それは。」
「あっしのナチュラルメイクに御座い。」
今度は確かに聞こえた。あくまでも『自分において』ナチュラルな状態だと言い張るようだ。
「……分かちました。この話はこれでいいとしましょう。」
「失礼。あっしも忙しい故に職務に戻らせてもらいやす。」
そう言って御仁は私の腹の上から礼に則ったゆったりとした所作で立ち上がろうとする。痛い、痛い。
「その前に一つ聞きたい。
傍にある唐草模様の包み、君のものですね。これは一体……。」
「あっしの私物で御座い。」
では聞こう。
「そこから生えているものは、私の祖父の書斎にあった五万幾らの万年筆に見えますが。」
これにはどう答える?
「ああ、それは借りたので御座い。後で返すことになっておりやす。」
「では、私が返しておきましょう。」
「…………。」
「失くしたら、責任が発生します。その方が良いでしょう。」
「…………。」
「…………。」
「…………承知しやした。」
そう言うと、私の手に万年筆を置いた。
「他にはありませんか。」
「もう御座んまい。」
「私は、君の荷物に興味が湧いた。是非よければ見せて頂きたい。」
「婦人の荷物を覗くのがそんなにいい趣味とお考えでは御座んまい。御止めなせえ。」
確かに一理ある。では最後に聞こうか。
「尊敬する人物は。」
「白波五人衆、次いで石川五右衛門で御座い。」
・・・ん?
「あの、もう一度尋ねますが、尊敬できる人物は?」
「ヘレンケラーの家庭教師としても働いていたサリバン先生で御座い。」
・・・
結局、彼女とは夜遅くまで問答が続いた。翌日、茶の間にて、本当に『家政婦』をしていたことを意外に思った。
「気を付けて、お行きなせえ、主君殿ぉ。」
「普通、メイドの挨拶って。」
「いってらっしゃいませ。」
「君が今言ったのは。」
「あっしが『普段から使っている』言葉遣いで御座い。」
・・・あそ。
感想、あれば喜びます。




