お前がくれる痛みなら
「ぐっ……!ぅあっ……!」
喉の奥から啜り出るかの様な、嬌声には程遠く最早呻き声に近いその声に、ジプソは思わず己を進めていた腰を止めた。
「ボス……もう止めにしましょう」
白いシーツの上で男にしては余りにも華奢な躰が自身の体積に押しつぶされ沈み込んでいる様は、自虐心を煽られると言った言葉では到底納められない程にいたいけで残酷にも目に映る。
「っつ……ええ、言うてるやろ、さっさと一思いに突っ込めや」
ぐう、と時折また呻き声を上げながらも、下に敷かれている男は仰向けのカエルの様に投げ出されていた脚をジプソの臀に向け蹴り落とした。
潤滑油をたっぷりと塗り込んでいた甲斐もあり、その勢いを借りて、つぷりと先端が熱く狭い中へと入り込む。
が、その瞬間に、ミチリと肉が裂けるかのような感覚がして、余りの痛さに男はギリギリと奥歯を噛み締めた。
「ボス、口を切ってしまいます」
その様子に気付いたジプソは艶に濡れた男の薄い唇へと指を伸ばす。
噛むなら自分の指を、と差し出せば存外、男はそれを素直にパクリと口に咥えた。
「これで、ええんやろ?」
まるで此方に見せつけるかのように、チロと赤い舌を出し指の根元から先端へと這わせて男は好戦的に光る金の眼差しを向ける。
ああ、もうダメだ。
鍛錬に鍛錬を積んで得た鋼の意志も、その妖艶さを前にしてボロボロと崩れ落ちてしまうかのようだ。
鋼鉄の鋼が唯一、毒による腐食に溶かされてしまうかのように……
ああ、この人は毒だ。
「あ゛!つっ!!!!」
ジプソが堪らず腰を一気に最奥まで落とすと男は苦痛に声を上げ白い肌を弓なりに仰け反らせた。
狭い狭いその中は、ぎゅうぎゅうと捩じ切らんばかりにジプソの根元を締め付け上げ、しかし最奥は肉と肉とがまるで包み込みかのように蠢いている。
「カラスバ様、お許しを」
荒々しく息を吐き出した男の耳元に一言を告げ、ジプソは激しく抽挿を始めた。
傷つけぬようにと今の際まで最新の注意を払っていたが、それももう限界だ。
ぐちゅり、ぐちゅり、と粘膜を擦りあげる度に聞こえる水音は女の様な体液ではなく潤滑油によるものだ。
通常であれば排便をする為の器官が、果たして本当に快楽を生むのかジプソは知る由もない。
今までに抱いたことがあるのは女ばかりで、男を抱きたいと思ったのはこのカラスバという名の男が初めての事だった。
「カラスバ……様、つっ、痛くは……ないですか?」
痛いと答えられた所で最早止められそうには無いが、ジプソは下に組み敷かれた男を見遣り問いかける。
先程から顔を腕で隠してしまっている為、その表情は窺い知る事が出来ない。
「つっ……痛いに……っつ!決まてるやろ……けどなあ……っつ……」
漸くと目が合った。
鋭い金の眼光が今はどろりと蕩けている。
「お前から……つ、与えられるんなら……つっ、痛みも、悪うない……思てる」
荒々しく薄い唇から吐息を漏らして、白く細い体をほんのりと赤く染まらせ、苦痛に歪んだその表情で告られた言葉は、好きだ、とか、愛しているといった言葉よりも強く重い言葉にジプソには聞こえた。
「つっ!カラスバ様っつ!」
愛おしさのあまり強く強く抱きしめる。
その身体は自身の身体の内にすっぽりと包み込まれてしまう程に細く、そして小さい。
部下達に恫喝を浴びせている姿からは想像もつかないだろう、その額に優しく口付けを落とせば、下に敷かれていた男は目をまん丸に見開いた。
「カラスバ……様?」
「なんや、おぼこいことすんなや、照れてまうやろ」
散々やる事をやって置いて。
ジプソは顔をじんわりと染めさせた男に思わず笑みを零しながらも、再び抽挿を始めた。




