第三話 木刀は嫌
「ふあ~」
今日も欠伸をかいて起きる。青い空が広がり、遠くに山が連なっているのが見えた。
(こっちは田舎だよねー)
さて起きて朝食の時間だ。
この世界のご飯というものはそんなに豪華ではない。実際貴族だと思う家の朝食が白パンに赤いジャムを塗ったものと鶏肉っぽい肉と野菜のスープだぜよ。あとサラダ。
中世ヨーロッパ風だな。飲み物は流石に水だったが。
別に文句を言いたい訳じゃないけどさ、朝はもっとパアッ-と行きたいところじゃないか!
そんなことを思いつつアモスより早く食べきることを意識してご飯口に運ぶ。
なぜかって?アモスの剣術が素晴らしいからだ。
それに何が関係してるかって?
ふふふそれはね
痛いからだ
実際昨日の俺は木刀に打たれて打たれて、最後は神経がなくなったのか知らないけど痛みも消えたしな。
もちろん腕から脚まで見るに堪えなかったしな。治癒のポーションが無かったら真面目に死んでた......
脛に当たってみろ、骨が曲がって凸凹だ。
あの時は全身が響き渡るように痛かった。
腕に当たってみろ、筋肉と骨が離れるぞ。
一瞬にして肉離れが起こって無理矢理引きちぎられるかと感じた。
鼻に当たってみろ、今すぐ大量のコラーゲンがほしくなるぞ。
まあ軟骨の主成分は水だけどね。
すべてトリスの実体験だ。(最後以外)
とまあ木刀とは思えない。
あの中に金属でも入ってるんじゃね?
......流石に違うか。
とまあこんな感じでとにかく痛いのだ。
人は痛みを避ける動物だ。つまり逃げればいいのだ。
3日かかって導きだした答えである。
(うむ自画自賛したい。最高の考えだ)
というわけで逃げます。
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「はあはあ、ここまでくればヤツも追ってこないだろう」
ほぼテンプレ化している言葉を吐きながら町の方まで逃げてきた。
そもそも追って来てないんだけどね。
まあ雰囲気は大事でしょ。
周りを見ると人が結構いることに少し驚いた。
こっち側はやっぱり田舎ではないのか。
驚くだけでそれ以上の感情はない。
あるのは異世界の町だ。
とりあえず休憩して。それから何しよ?
もしかしたらまた逃げてここに来るかもだし探索でもしようかな。
なぜかそんな考えになった俺は歩きだした。
「ここには武器屋が多くてあっちの通りは食品類かな」
ぶつぶつ喋りながら比較的大きめの通りを歩いていると
珍しい外見の人物がすれ違った。
その人物はまるで胸が響きわたり砕けそうになる。
衝撃だ。
黒髪のボブに近く、顔のパーツの配置や大きさが完璧な妙齢な女性だ。
カッターシャツに少し似た質素な服装がさらに彼女を引き立てている。
ほんの一瞬だろう。振り返り立ち止まっていただけだ。顔が見えたのはきっと一瞬だ。
それなのに海馬が完全に記憶に移行させた。
ずっと立ち止まるわけにはいかない。
俺はすぐに歩き出した。
もちろん彼女が向かう方にだ。
あの時も付いていけば......いや今を気にしよう。
(うむまるで人形だな。綺麗だ)
口から漏れ出しそうな言葉を飲んでついていくと学校に向かっていると見えた。
学校はあんまりいい思い出がないんだよな。
だが学校に目が行くのは一瞬だ。
ズボンで見えないがスラッとした脚がそこにはあることはわかる。
少し大きなお尻も見えた。
(後ろ姿も完璧だ)
そう評価するしかない。
そんな時だろう。彼女がこちらを向いたのは。
しかし戯言を話す目ではない。
ムムムこれでは顔が勿体無い。
「ついて、来て、もらうのは私、あまり、好きではないんです」
まずい怒らせちまった。やっぱそうなるよな。
普通に考えて不審者だよな。
そう思い、理解したがまた顔を見た。
不可抗力だ。
あれ?
今度はいつもはこの時間に散歩なのに行かないの?と困った顔をしている犬みたいだ。
それもお手本のような。
「あなた、トリスタンですか?」
うん?変だな。この人と会ったことあったか?
いや後目が笑ってないしロボットみたいだし。何か怖。
考えている途中に彼女はしゃべった。
「アモラールスの息子さんですね」
誰だそいつは?
ん?謎が二つに増えたぞ。ミドルネーム的なか?
いやいやまず初対面なのに俺の名前と親の名前と言い張るものを知っている時点でおかしいのでは?
「来月楽しみにしていますよ」
何が??
冷静になれていないらしく思考回路が全て粉砕された。どういうことだ?視界がポップコーンで埋まる。
俺の頭はきっとショート寸前なんだろう。いわゆるパニックだ。
理解ができないが故に本能で守ってくれる大人に頼ろうとした。
脚が家の方を向き飛ぶようにして走った。
体感にして約300mだ。あれ300も全力で走れたかな?あれれ?
いや違う重点を置くのは走る速さだ。
そう感じたのはヒゥィーン
突風が吹いてきたときだ。
さらに景色も俺の動体視力が追いついていなかった。
木が、家が、道が、人すら見えない。
すべて置き去りだ。
あれこんなに早いのか?あれれ?
また疑問符が浮かぶ。
心臓の鼓動はゆっくりだった。
落ち着きは取り戻せていたらしく疑問符止まりだ。
さっきのべっぴんさんの事など頭に残っておらず足が速いということに脳内のプロセスは割いていた。
あえー?どういうことだってばよ??
特殊能力的な?いやまさか......
そんなことを思っているうちにうちに着いた言い回しのセンス良すぎ。
そしてアモスがいた。
まるで白髪の少女が枕を投げて何かを言っていそうなポーズで何かをしていた。
でもなこう滲み出てくる異質さがあるんだよな。
(もしかして変な宗教か?この世界でもあるのな)
いやいやその前に自分が走りに走ったのに全く疲れていないことに気を配ったほうがいいか。
疲れていない、汗も出ていない、視界も良好、つまり冷静というわけだ。
??
でもだでも疑問符が浮かぶ。それでも考える。目の前にいる変なポーズをしている父を気にせずにね。
あーうん?
思い返すとアモスが何かを言っていたような気がする。なんだっけこのーあのー操るみたいな。
あっそうだ。傀儡だ。
傀儡を使えば身体能力が上がるとか言っていなかったかな?
ちょっと待てそういえばアモラールスって誰?俺が息子なんだろ?
また新たな点が加わる。
アモスだ。アモスがこちらをじっと見ていた。不思議がるような、
そしてやっと口を開いた。
「もう使えるのか。傀儡」
やっぱ傀儡か。
「......これがそうなの?」
アモスは返事を無理するように黙った。
沈黙が流れる。いや10秒くらいだろう。多分
「ああ、きっとな」
ピリついた空気が入ってきた。
えっ何?禁忌なのか?
アモスの顔はポーカーフェイスだった。
信じれるか信じられないかの境目くらいの。
そして不思議で怪しいような。
昔から人の気持ちはよく分かるんだよな。
思い出したくもないあれがあったからな。
次にアモスは目線を逸らした。
何かを重ねようと言わんばかりの目がそこに残った。
「きっとな......」




