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もし大学入試を終えたら、静かに死ねるのなら

(二〇二五年八月十七日/雨)

黙っていると、私はつい様々なことを考えてしまう。しかし、その思考の多くは重苦しく、両親に言わせれば「ネガティブ」なものらしい。父はよく言う。私の暮らしは恵まれすぎていて、人間というのは昔から「衣食足りて淫欲を知る」と言うではないか、と。私もその例外ではないのだろう。

ただ、父の言葉は必ずしも正しくはないと思う。人間とは一つの脳が一つの身体を操る存在だ。けれど私の手足は、壊れかけた操り人形のように、あちこち傷だらけで不格好だ。脳が主導権を握っているとしても、不完全な身体は必ず脳に影響を与える。母は私を怠け者だと責め、栄養のあるものを食べないから体が弱いのだと言う。だから私の体は「健康」でも「幸福」でもなく、その不調の信号を脳に送り続けているのだ。医者によれば、ビタミンDが不足すると、思考は沈み込み、気力を失うらしい。なるほど、これが私の病なのか。

だが、私は特に何かを変えようとは思わない。ここまで来てしまった以上、天に任せるしかないのだろう。もしかすると、万物を司るかのような大脳がふと「元気になりたい」と願う日が来るかもしれない。その時は、きっと身体も自然に明るさを取り戻すのだろう。そんな私に、ある冬の午後、また胃の痛みが訪れた。隣の座席にはファストフードの容器が置かれていた。車が急ブレーキをかけたのに、それはまったく動こうとしなかった。

「もしも、ただ思うだけ。人生がステージ制のゲームだとして……セーブポイントに到達したら、そこでゲームをやめられるとしたら。」

(今の私にとって、そのステージとは間違いなく迫りくる大学入試なのだろう。)

けれど、それはおそらく、とても苦しいことだ。なぜならこれは人生であり、私はまだ生きているのだから。

P.S. 母に読んで聞かせたら、とても楽しそうに笑った。私も笑いすぎて、喉が枯れてしまった……。

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