表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/50

第18話『おうおうお嬢ちゃん達! ここはお嬢ちゃん達みたいな子供が来る場所じゃないんだぜ!』

 騎士様に案内していただき、エルフリアさん達の所へ戻ってきた私であったが、皆さんの目線はどこか厳しい物だった。


「アリーナちゃん。ここに座りなさい」

「え」

「良いから。お母さんは怒ってますよ」

「誰が母親だ。誰が」

「茶化さないの!」

「これは俺様が悪いのか?」


 私はクロエさんの言葉に従って、その場に座ろうとした。

 しかし、クロエさんがパッと私の手を引っ張って、シートがある場所まで案内してくれる。


「えと」

「良いですか? アリーナさん。よく聞いてください」

「は、はい」

「まず、アリーナさんはまだまだ子供なのですから、一人で行動しようとしない」

「私、もう大人なのですが」

「11歳を世間では大人と言いません!」

「え? でも、そのくらいの年齢で既に働いている子は居ますよ?」

「よそはよそ! ウチはウチ!」


 クロエさんはムッと眉間にしわを寄せたまま、私を見て、怒る。

 声は荒げていないけれど、怒っているという感情は強く伝わってきた。

 心を読まなくても分かる。


「はい、申し訳ございません」

「それともう一つ! 知らない人に付いて行ってはいけませんよ!」

「知らない人……?」

「さっき、知らない男と話をしていたでしょう! 知らない人に付いていくのは非常に、ひじょーーに! 危ないので、注意する様に! 良いですね!?」

「えと、はい」

「よろしい。ではお説教は終わりです」


 クロエさんはコホンと咳ばらいをして、引き締めていた顔をやや緩めた。

 そしてそのまま私に倒れ込んでくる。


「あぁーん。アリーナたんに嫌われちゃったぁー! でもでもでも! 心配だったから、嫌われても、言いたかったのぉー! 嫌いにならないで! アリーナたん!」

「あ、あの、私は、大丈夫ですよ。嫌いになんてならないです」

「ホント!? ホントに!? あぁーん。やっぱりアリーナたんは天使なんだぁ!」


「何とも情けない姿だな」

「シャーーラップ! 私がどんな想いで、アリーナたんにお説教していたか、知りもしないで!」

「別に言いたくなければ言わなければいいだろう」

「それじゃもしもの時に危ないでしょう!?」

「ならばそう教えれば良いのだ。説教など効率的ではない」

「外野からワーワーうるさいわね!」


 また再び争いを始めてしまったクロエさんとジークさんを見ながら、私は争いを止めなくてはと両手をパタパタさせていたのだが、まぁ意味はなかった。

 しかも、音も立てずこっそりと近づいてきていたエルフリアさんが私を引きずって、二人から離れた場所に連れて行ってしまったため、余計に争いを止める手段は減ってしまうのだった。


「ありーなー。アリーナー」

「エルフリアさん……」


 エルフリアさんはご機嫌な様子で私に抱き着いて、頬をスリスリとしている。

 そんな楽しそうなエルフリアさんを見て、少しこのままでも良いかと私は大きく息を吐くのだった。


 そして、時間は流れ。

 日がちょうど頭の上に来る頃に、エルフリアさんも少し落ち着き、ジークさんとクロエさんの争いも終息した。

 永遠に続く争いはなく、争いはいつか終わる時を迎える。

 良い事だ。


「ごめんなさいねぇ。アリーナちゃん。エルフリアちゃん。また喧嘩しちゃって」

「いえ。ちょうど私も色々と考え事をしていたので、大丈夫です」

「考え事?」

「はい。私、気づいたんです! 世界を巡るなら冒険者になるのが一番だって! 困りごとは冒険者組合に集まると聞きますから!」

「「「冒険者?」」」


 私の宣言にエルフリアさん、クロエさん、ジークさんの三人が仲良く声を揃えて大きな声を上げる。

 仲が良いというのは何よりも良い事だ。


「それって何? オモチャ?」

「いえ。冒険者というのはお仕事の事ですよ」

「おしごと? って、食べ物?」

「いえ。多くの人が喜ぶことです」

「へー。じゃあ私も嬉しいの?」

「えぇ」

「じゃあ、私も一緒にやるー!」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「えへへー。まぁ私はアリーナの凄いお友達だからね。当然だよ!」


 ニコニコと笑うエルフリアさんにキュッと抱き着いて、感謝を告げながら、私たちをジッと見ているクロエさんとジークさんに視線を向ける。


「しかし、冒険者か。なってどうする」

「はい! 世界に存在する問題を解決します!」

「お前一人では出来る事もそう多くは無いだろう」

「それでも、少しはお役に立てますからね!」

「……まぁ、俺としてはそこまで強く反対する理由も無いがな。お前はどうなんだ。クロエ」

「私は……まぁ、私もそこまで反対する理由は無いわよ? 結局冒険者組合の職員が危険な依頼は止めるでしょうし。最初は誰かが見てれば良いワケだし」

「だそうだ。やりたいのなら、やってみるが良い」

「はい! では早速行きましょう! エルフリアさん! 以前行った街の入り口に転移していただいてもよろしいですか?」

「うん。良いよ」

「え!?」

「な!」

「待って! 今すぐなんて……!」


 私はエルフリアさんを抱きしめたまま、街の入り口まで転移した。

 そして、そのままの足で馬車の集合待合場所のすぐ近くにある冒険者組合へと向かう。


「たのもー!」

「たのもー!」


 扉を開けながら、メイドさんに以前聞いていた冒険者組合に入る時の挨拶をして、中に足を踏み入れた。

 周囲からは何だか視線を感じるが、気にせず受付さんの所へ進んでゆく。


「アリーナ様。本日は何かご依頼でしょうか」

「いえ」

「アリーナ様のご依頼であれば、皆、普段以上の力を……って、依頼ではない?」

「はい。今日は冒険者になる為に来ました!」

「……」

「受付さん?」

「あ! 申し訳ございません。どうも意識が遠のいていたようです。聞こえる筈のない幻聴が聞こえておりました」

「それは大変ですね……お仕事も忙しいかと思いますが、どうか休める時にはゆっくりと休んでください」

「ありがとうございます……! アリーナ様のお言葉、心にしかと刻ませていただきました。より一層努力させていただきます!」

「あ、いえ……そこまで頑張らなくても……」

「お気遣いありがとうございます!! 全力で頑張ります」

「あ……ハイ」

「では改めて。本日はどの様なご依頼で当組合へ」

「はい! 冒険者になる為に来ました!」

「……」


 受付のお姉さんは再び椅子にのけぞって、動きを止めてしまった。

 やはり何かの病気なのでは無いだろうか。

 心配だ。


 エルフリアさんにお願いして病気を治してもらうべきだろうか。

 いや、でもどんな病気か分からないし……。


「お、おいおい。お嬢ちゃん」

「はい? なんでしょうか」

「こっ、ここは……なぁ」

「ガンバレー」

「マケルナー」

「お、おう!」


 受付の前に立っていた私たちの元へ、大柄な男の人が現れ、私たちを見下ろしながら汗を流し、言葉を必死に紡いでいる。

 どうしたのだろうか。

 苦しいのだろうか。


「スゥー、ハァー。よし!!」

「……」

「おうおうお嬢ちゃん達! ここはお嬢ちゃん達みたいな子供が来る場所じゃないんだぜ!」

「そうなのですか?」

「そう! ここは冒険者組合。命知らずの荒くれだけが来る場所さ! お嬢ちゃんみたいな子供が来る場所じゃ、ねぇぜ!?」


 大きな男の人は威風堂々という言葉がよく似合う姿で、私を見下ろしながら叫んだ。

 その声はビリビリと空気を揺らし、エルフリアさんは怖がって私の後ろに隠れてしまった。

 とは言っても建物に入った時から半分くらいは隠れていたが。


「そうなのですね。教えていただきありがとうございます」

「お、おぅ!」

「では私も命を捨てる覚悟で挑んだ方が良いという事ですね。はい。頑張ります」

「ち、ちがーう!」

「え?」

「良いかぁ!? ここは! とーっても危険な仕事をする場所なんだぁ! だから! アリーナ様が何かお困りの事があれば、我々が全力以上の全力で挑みますので、どうか、ご依頼をなさってください!!」

「情けないぞー!」

「最後までやりぬけ!」

「うるせぇ!! それだけ言うのならお前らがやってみろ!! 俺はアリーナ様に嫌われる覚悟で! う、ぐっ、嫌われ……? お、俺がアリーナ様に、うぐ、ぐぐ、ぐはっ」


「だ、大丈夫ですか!?」


 大きな男の人は胸を抑えて急に床へ倒れてしまった。

 大変だ。

 何かの病気かもしれない。

 しかし、現状エルフリアさんは魔法が使える状況ではないし。私も病気を治す魔法は使えない。

 どうしたら!?


「そ、そこまでよ! アリーナちゃん! それ以上の暴走は許さないわ!」

「おぉ、アレは、クロエ! クロエじゃないか!」

「鉄壁のクロエだ」

「変態のクロエだ!」

「クロエさん。クロエさんもこちらにいらしたのですね」

「えぇ、ジークの奴の衝撃波にのってここまで……ってそんな話はどうでも良いわ! 良い!? アリーナちゃん、急にこんな事やって! みんなを困らせちゃ駄目よ!」

「え!? 私、皆さんを困らせてしまっていたのですか!?」


 私は思わず大きな声を出してしまった。

 が、気持ちは収まらず近くに居た方に話しかける。


「あの、私、ご迷惑をお掛けしていますか?」

「え!? い、いや? アリーナ様が迷惑だなんて。そんな事ありませんよ! きっとクロエの奴が勘違いしているんでしょう」

「おい! 日和るな! 俺に怖いものなんかねぇって普段から言ってただろ!」

「うるせぇぞクロエ! 確かに俺が恐れる物は何もねぇ! ……だが、それとアリーナ様に嫌われたくねぇという気持ちは同じじゃねぇんだ。へっへっへ」

「このヘタレー!!」


 それから色々な人に聞いてみたが、困っているという様な言葉を聞く事が出来ず私は困惑してしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ