表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

出逢い ②

 家を出ようと靴を履いていた時、丁度父が帰ってきた。久しぶりに見た父親は、いつかの記憶にいる父よりもやつれていて、今にも倒れてしまいそうだった。

「お帰り、お父さん。」

「あぁ、ただいま。瑠璃」

「お父さん、死なないでよ?...じゃ、行ってきまーす!」

 久しぶりに交わした極ありふれた会話は、其の日中私の中で木霊し続けていた。


   ◇◆◇


 教室の扉を開けると、いつもは一番最初に来ているけれど、今日は汐音がいた。別に不登校という訳ではないからこんな言い方も変だが珍しい。部活中、美術室で見ているせいであやふやになるが、彼は殆ど学校の授業に出ない。なんやかんや2カ月振りなのではないだろうか。

「おはよう、汐音。今日は随分と早いんだね」

「・・・」

 ____安定のフル無視ッッ。そうだ、忘れていた。アイt...彼は、何を隠そう完全なる陰キャだ。まあ登校が不定期過ぎて人が寄り付かないだけだが。其のお陰とでも言うべきか、彼が唯一ちゃんと顔を出す美術部は、行内でも屈指の不人気部だ。イラストを描きたいだけなら別の部活もあり、そっちの部活では主に、デジタルイラスト系を描くものになっている。以前制作されたアニメが最優秀賞を取ったとかで一気に人気が上がった。もはや映像研あたりを名乗った方がいいのではないかとも思う。だが、其処の意思は堅いらしく、未だに芸術部を名乗っている。名前からしても美術部に喧嘩売ってるようにしか思えない。

「ねぇ、汐音。昨日...さ、6時くらいに帰ったよね、何で7時に学校の下の道にいたの。」

「・・・・」また、沈黙。抑々(そもそも)彼は、私の話を聞いているのだろうか。

「・・・あっそ、だんまり、ね。」

 渋々自分の席に座り、読みかけの本を開いた。すると、

「別に法は犯してない。」

・・・・何それ、ずっと無視するかと思えば行き成り「法は犯してない」とか、当たり前じゃない。何で1時間もっ空白時間が生まれてんのかって事を聞いてるのに...これを、会話が出来ていると言っていいのか...?

「別にあんたが法を犯していようといなかろうと私は知らないわよ」

「私が言いたいのは、“何で1時間も学校にいたのか”なのよ。実専生じっせんせい(音楽科の実技専攻生徒の略称)じゃないんだから、部活以外で校内に居残り出来ないでしょ。一応、曲りなりにも部長だし、肝心の部員よりも違反を許した部長の方が起こられるんだから。」

「...そう、ごめん」

「___あぁもう何でもいいや。でも先生にはバレないでよ!?面倒くさいんだから、余計な仕事増やさないでよね」

 朝練のある部活生くらいしかいない朝の7時45分。2人だけの教室に、静かに声が響くのは、ハッキリ言って恥ずかしい。自分の声のエコーを聞いて恥ずかしくない人などいないだろう。

 席に着き、朝提出の宿題を取り出す。私は、宿題は朝早くに来て全て終わらせるタイプだ。

 8時を過ぎると、次第に人が増えてくる。窓から外を眺めていると、偶に面白い光景が目に入る。例えば、冬に、氷で転ぶ生徒たちだったり。傘を忘れて雨に降られ、ずぶ濡れな人とか。普段余り見ることの無い、一瞬の隙が、面白い人がこの学校は多いとよく思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ