お隣さんと秘密のゲームセンター
百合ちゃんの事務所を訪れたその日のお昼どき、またまた、ハンバーガー屋さんにやってきていた。私は前回と同じ、チーズバーガーを頼み、白雪さんは期間限定のバーガーを頼んでいた。
お互いに椅子に座り、今日のことを話し合う。
「いやー、今日はよかったね。紅葉ちゃん。」
「それは良かったけど。紅葉ちゃんってどうしたの?」
「え、だって、紅葉ちゃんが言ってたんじゃん。私たちはお友達だって。」
「それは言ったけどぉ。それって言葉の綾みたいなものじゃない?」
「でも、言質はとったよ。」
言質を取られていたらしい。さすがに、いきなり紅葉ちゃんは恥ずかしい。照れ隠しとばかりにチーズバーガーを食べる。
「だから、紅葉ちゃんも千幸って呼んで。」
「え~、千幸ちゃん?」
「ち、ゆ、き。」
「ちゃんじゃダメなの?」
「ち、ゆ、き。」
「う、千幸。」
「はーい。じゃあ、これからもよろしくね。紅葉。」
「うん、よろしくね、千幸。」
お互いに頼んだハンバーガーを食べきり、最後に飲み物を飲み切って、ハンバーガー屋さんを後にする。
「ねぇ、このあと時間ある?」
「あるけど、どうしたの?」
「遊びに行こ。どっかに行こう。」
「じゃあ、ゲームセンターでもいい?」
そう言って、ゲームセンターに向けて歩を進める。
すると、十数分してゲームセンターゲームに到着する。ゲームセンターに入ると、筐体ゲームの音がウィンウィン鳴り響いている。まずは、どこに行こうかという話になり、メダルゲームのコーナーに向かう。互いに千円を機械に入れ、専用のカップにメダルを入れて、ゲームの準備をする。
「じゃあ、一時間後にどれだけ稼げているか、勝負よ。」
「わかったじゃあね。」
千幸に別れを告げて、私は小型機械のゲーム機に向かう。細かく、地道に稼いでいく。
それから、一時間が経ち、最初に集まった場所に再度集合する。
千幸の手元を見ると、メダルがすっからかんになっていた。私の手元のメダルは目いっぱい山盛りになっていた。
「うう、どうしてよ。なんでそんなに稼げるのよ。」
「千幸は大型ゲームで稼ごうとしていたでしょ。あれって一発あたるとたくさん稼げるように見えるけど、全体で見ればあんまり稼げないんだよ。だから、私は小型機械で、コツコツ稼いだんだよ。」
「そんなぁー。」
千幸は泣いているようにも見える。
「ねぇ、この余ったメダルで一緒に遊ばない?」
「いいのぉ?」
「うん、一緒に遊びましょう。」
それから、もう三十分ほど一緒に遊び、メダルをすっからかんにした。
そのあとは筐体ゲームを遊び、最後に、クレーンゲームに移った。クレーンゲームでは、千幸がよくわからない猫のぬいぐるみに魅了されていた。
「わぁ、かわいい。」
「かわ、いい、かなぁ。」
「かわいいよ。紅葉にはこの可愛さがわからないかぁ。」
千幸はこの猫が気に入ったらしい。ガラスにしがみついている。
「千幸、取ってあげようか?」
「いいの⁉ほしい!」
「まぁ、取れるかわかんないけど。」
そう言って、機械に百円を入れる。謎の音がながれ、ゲームが始まる。ボタンを押して、クレーンを動かして、ぬいぐるみの真上に移動させる。
ボタンを押して、クレーンを下すとうまいこと爪がぬいぐるみの体の隙間に刺さって、ぬいぐるみが上にあがる。そのまま、穴の上まで連れてこられ、穴に落ちる。
なんと一発で取れてしまった。それを私は取り出し口から出して、千幸に渡す。
「ありがとう。ゲームセンターって楽しいね。今度配信でやってみようかな。」
「いいね。けど、それなら貸切にした方がいいよ。」
「それもそうだね。」
よかった、これでお仕事も一つ完了した。よかったよかった。