お隣さんと秘密の契約
白雪さんの秘密を知ってから、もう週末となった。
今日は彼女の事務所にやってきている。何やら、彼女のプロデュースについての本格的な契約に関するお話だとか。
そこは都心のビルの一フロアだった。オフィスとしてはかなり簡素な作りの応接室と思しきに迎え入れられた。
出されたお茶を一口、口をつけ、事務所のお偉いさんを待つ。すると、左横の扉が開かれる。そこから、社長さんだろうか青年といっても問題ないほどの若い男性と秘書だろうか若い女性が入ってきた。
「まずは、事項紹介をさせてくれ。黒咲百合の所属する事務所夢色ハーツの運営をしている、プロダクトアーツの社長をしている大道寺司だ。よろしく。ちなみに後ろにいるのは黒咲のマネージャーだ。」
「よろしくお願いします。赤井紅葉です。」
なんというか、もの優しそうな見た目の方だ。何というか落ち着いている。それに後ろにいるのはマネージャーさんだったのか。
「黒咲のマネージャーから話は聞いている。黒咲のことを知っているらしいね。家も隣だとか。」
「はい、黒咲さんのことは私の中で推しとして位置付けています。昔から、知っていて、大好きなんです。」
私は自分の本心を一片の偽りもなくそう伝える。
「そうか、はぁ、どうしたものか。」
「と、言いますと?」
「正直、黒咲…いや白雪のことを知ってしまった以上、私の手元に置いておくのが一番安全なのだ。君のことをね。」
「なるほど、もしかして私の年齢のことですか。」
そこで、何となく聞いてみる。
「そうだ、白雪はご両親の許可を得ている。ただ君の場合は今日を取るということは結局契約する意味がなくなってしまう。」
「そうですね、私の両親が口を滑らしてしまうこともあり得ますからね。」
「話が早くて助かるよ。というわけでだ。とりあえず君とは契約はしない。君が十八歳になって個人で契約できるようになるまではボランティアのような立ち位置でやっていてほしい。どうかよろしく頼む。」
「わかりました。あと二年はお友達ってことですね。」
そもそも、私たちはまだお友達とも言えないような気がするのだけれども。
「まぁ、そんな感じになるかもしれないね。じゃあ、君の許可も取れたということでこれからは、うちのマネージャーとどういうプロデュースをするのかについて話し合ってもらおうと思っているのだが時間はあるだろうか。」
「あ、それも大丈夫です。」
私がそう言うと、社長さんはこちらに頭を下げた後、部屋を出ていく。それから、マネージャーさんが代わりに席について、話始める。
「まずは赤井さんが黒咲のことをどれくらい知っているのかをお聞きしたいのですが。」
「どれくらいと言われましても、彼女がデビューしてからずっと追いかけているのでほぼ全部知っていると思いますよ。」
ありのまま事実を伝える。
「なるほど、ではお聞きしたいのですが、白雪とはお部屋がお隣だとか?」
「はい、そうですね。」
とはいえ、今まではそれほど関わりがなかったのだが。
「では、これからお願いしたいことなのですが彼女の体調管理と配信内容の路線形成をお願いしたいのですが大丈夫ですか。」
「はい、これから頑張ります。」
そんなこんなで、私は白雪千幸、黒咲百合の健康管理と配信の路線を一緒に考えるお仕事に就くことになった。