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41.本音




ーー翌朝、母親は時間になってもなかなか起きて来ない美那を起こす為に、部屋に入って布団の上から美那の身体をゆすった。




「美那、寝坊してるわよ。滝原くんにお弁当作るんじゃないの?」


「……今日は作らない」



「どうして?」


「どうしてもっ!」




美那は不機嫌な声でそう言って布団を頭まで被る。

母親は一筋縄ではいかない娘にやれやれと諦めモードで腕を組む。




「もしかして、滝原くんとケンカでもしたの?」


「……」



「言いたくないのね。なら仕方ない……。登校時間に間に合うようにちゃんと起きて来てね」




母は無反応な娘にふぅとため息をついて部屋を出て行った。



ーーそれから約1時間後。

美那は学校に到着すると、夏都は下駄箱で待っていた。

夏都は真横について「昨日はどうしたの?」と声をかけるが、美那は無言のまま靴を履き替えてそそくさと教室へ向かう。

普段ならお弁当を渡した後に会話をしながら教室に向かうが、今日はそこまで辿り着けない。


夏都はその後も隙をついて声をかけるが、美那は接触を避ける。

次第にもしかしたらという思いが生まれた。



ーー放課後。

美那は澪に「バイバイ」と伝えた後、夏都を避けるように教室から出ていく。

すると、夏都は後を追った。




「美那、昨日から様子がおかしいよ。美那……、美那……」




夏都はしきりに声をかけ続けて校門を出た先の一本道で手首を掴み上げると、美那は今にも泣きそうな目を向けた。




「私にかまわないで」


「どうして?」



「どうしても」


「……じゃあ、怒ってる理由だけ教えて」




美那はまばたきさえ忘れてしまうほど真っ直ぐに見つめてくる目線と逃げきれない状況に観念して口を開いた。




「実は昨日……、マンション前で怜くんと話してる所を聞いちゃったの。そしたら、滝原くんが私に近付いた理由を言ってて……」


「……」



「怜くんと仲が悪いのはわかってるけど、そこに自分が利用されてるなんて思いもしなかった。きっと、怜くんの件がなかったら私なんて見向きもしなかったんだよね。


私は滝原くんの事を本気で友達だと思ってたし、体調が心配だったし、辛い過去を背負ってるなら一緒に分かち合おうって思ってた。でも、それって全部独りよがりだったのかな……。そう思ったら、全部が虚しく思えて……」




胸いっぱいに埋め尽くされてた気持ちを吐き出したら同時に涙がこぼれた。

自分でもびっくりするくらいに……。




「それが本音?」




夏都が聞くと、美那は無言でコクンとうなずく。




「ごめん……。昨日は確かにそう言った」




そう言われた瞬間、美那は心臓に針が刺さったかのようにチクリと胸が痛くなって再び感情を爆発させた。




「だったら、もう私にかまわ……」

「逃げないでちゃんと聞いて! ……じゃないと、誤解したまま嫌な気持ちだけが残るから」



「滝原くん……」


「怜の件で近付いたのは、最初の1週間だけだという所も聞いてた?」



「それは……」


「確かに最初はそういう目的で近付いた。これは紛れもない事実で弁解の余地もない。ごめん……」



「…………」


「でも、美那を傍で見ているうちに考えが変わった。食事や身体の心配をしてくれたり、心を支え続けてくれたり。美那が俺の事を考えて気持ちを先回りしてくれた分、感謝していた。……だからあいつに言ったんだ。今は一番の友達だってね」



「滝原くん……」


「昨日はあいつが負けん気で突っかかってきたから売り言葉に買い言葉で答えただけ。……ってかさ、お前も悪い所だけを切り取って不機嫌になるなよ」



「うっ……(確かに)」


「……ってか俺、今すげぇ恥ずかしい事を言ってない?」




夏都はかあぁと顔を真っ赤にしながら右手で額を押さえていると、美那は涙の隙間から笑顔が生まれた。




「ううん、そんな事ない。それより、私が大切な友達って本当?」


「うん」



「……ありがとう。嬉しい」




美那は誤解が解けてホッとしたが、夏都が友達だと証明してくれた一方で胸がズキっと傷んだ。

なぜなら、自分は自己都合の吸血目的で近付いているのだから。


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