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16.提案




ーーあれから彼は教室に戻って来なかった。

6時間目が終わっても空席のまま。

もしかしたら吸血が原因で貧血がひどくなったのかな。


人間の血は想像以上に美味しかった。

一度吸血したら、もっともっと欲しくなった。

これがヴァンパイアの気質(きしつ)なのかな。

でも、吸血の度に失神されても気が重いし、何かお互いがメリットになる手段はないかな。


美那は川の上にかかった小さな橋を渡りながら貧血についてスマホで検索していると……。




「貧血には鉄分摂取するといい? ふむふむ……。つまり必要なのは栄養。それなら栄養をたっぷり与えてから吸血すれば問題ないかな」




こんなにあっさりと名案に辿り着くなんて……。

これなら吸血しても倒れずに済むかもしれない。


鉄分たっぷりの食材について検索しながら歩いていると、前方に滝原くんが一人で歩いてるところを発見して駆け寄った。




「滝原くん!」


「あっ、佐川さん……」夏都は気付いて振り返る。



「さっき教室に戻ってこなかったからどうしたのかなと思って……」


「あっ、うん。実は佐川さんが教室に戻ってから急にめまいがしたからそのまま保健室に世話になってて」




ガーン……。

やっぱり吸血の負担が大きかったのね。

なら、一か八かに賭けるしかない。




「私、滝原くんの貧血を一緒に解決してあげるよ」


「どうやって?」



「一人暮らしと言ってたけど、普段はどんな食事をしてるの?」


「んーー……、コンビニ弁当とか。面倒くさい時は食べない」



「そんなのダメダメ! ちゃんと自炊して栄養摂らないと……(吸血できないよ)」


「簡単に言うけど、料理をしたのは小学六年生時の家庭科の授業が最後で、ほとんど教えてもらってないから、一からやるのは……」

「私が滝原くんのお弁当を毎日作ってあげる!」




人間界の食材をこの手で触った事がないけど、自分が生き抜くにはこれしかないと思った。

すると、彼はギョッとした目を向けた。




「えっ! そこまでしてもらうなんて悪いよ」


「今日までの恩返しだと思って受け取って!」




表向きはカッコいい事を言ってるけど、実際は自分が生き残る為と知ったらドン引きだよね……。

でも、私も永遠に人間界(ここ)にいられる訳じゃないし、ミッションをこなして帰る準備もしなくちゃいけない。


それに、彼が貧血を克服(こくふく)する事を心から願ってる。


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