表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

P6

♯♯♯


 その日から僕は、何度か放課後や休日に彼女から呼び出された。高架下のトンネル、錆びた遊具がある公園、ほとんど参拝者の来ない神社、いつから放置されているのかわからない廃車同然の自動車の傍。そういった物寂しい場所で僕の写真を何枚も撮影した。


 教室ではそれぞれ属するグループが違うこともあり、話をすることはなかった。目が合うと、軽く挨拶はしていたので、友達からは「桂木さんと何があったんだ」と問い詰められた。黙秘権を行使した。クラスメイトに内緒で撮影をするのは、二人きりの秘密の関係みたいで優越感があった。


 撮影の緊張はいつの間にか、しなくなっていた。写真を取られすぎてそういった感覚が麻痺したのかもしれない。楽しそうに撮影する彼女に見とれてしまっていて、何度か怒られた。


 はじめは嫌々付き合っていた。彼女はそんな僕を連れ回し、熱心に撮影する。僕はなにかに真剣に取り組んだ覚えがなかったから、少し羨ましく思った。彼女の熱が移ったのかもしれない。僕は彼女に協力したいと思いだしていた。


 自分の写真が他人の手の中に、もしかしたら何十年と残ってゆくのだと考えると照れくさくて悶えてしまいそうだった。でも、それが桂木さんの手の中だと考えたら悪い気もしなかった。


 僕の写真の収められたファイルを眺め、楽しそうに話す桂木さんを見ていると僕も嬉しくなった。この表情はきっとクラスメイトの誰も知らない、僕だけが知っている桂木さんなんだと思うと、誇らしさすらあった。


 ――もしかしたら、僕は桂木さんが好きになったのかもしれない。桂木さんも僕をそういった目で見ているかもしれない。


 そう考えると、桂木さんとの撮影は更に楽しくなっていった。

お付き合いいただき、ありがとうございます。

次回更新は明日(10月27日)を予定しています。

よろしくおねがいします。


また、感想、アドバイス、ダメ出しはご自由にお願いします。

とても喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ