テルドララ2
スペースシップのエンジンを恒星間ジャンプに切りかえ、質量計測スクリーンをながめながら、超光速推進に身をゆだねていた。アウトララから160光年のかなたまで旅した。いくつもの恒星系をおとずれたが、わたしの祖先が誕生したとおぼしき天体にはめぐりあえなかった。
物質を示す青い光点が、スクリーンにあらわれては消えていく。その単調な画面につい集中力をきらしてしまった。警報にハッとまぶたを上げたときには、巨大質量が目前に迫っていた。
わたしはすぐさま緊急回避を行なった。巨大隕石がシップのアウターレイヤーをこすり、推進器の一部をけずりとっていった。スクリーンに表示されている一番近い光点を確認する。その惑星に不時着を余儀なくされた。
恒星間ジャンプを行なう亜空間から、通常の宇宙空間に飛びだした。ほどなく目指す惑星の大気圏に突入した。数千度を超える大気の圧縮熱に、破損したアウターレイヤーが耐えてくれるのを願うばかりだ。
着陸にそなえてAドライブに入れる。シフトレバーが動かなかった。わたしは驚きあわてた。このままではロケットの逆噴射による減速ができず、地表に激突してしまう。レバーを両手で握り、祈るように力をこめた。手のひらに冷や汗がにじみ、腕がしびれて震える。
もはや、これまでか。アウトララの法廷では、惑星系外追放を宣告された。それはゆるやかな死刑のようのものだが、ついにその刑が執行されるときがきたようだ。わたしは覚悟を決めた。
ガクンとレバーが下がり、わたしの体を、操縦席に押しつぶそうとする力をおぼえた。逆噴射が間にあったか。つぎの瞬間、叩きつけられるような衝撃がきて、わたしは意識をうしなった。
気がついたとき、わたしはセーフティベルトにもたれていた。スペースシップはかたむいた姿勢で停止していた。減速が遅れ、半ば墜落したらしい。核融合エンジンは無事だろうか。放射能はもれていないか。
わたしは駆動装置を確認して安堵した。重大な損傷はなく、超光速推進はいきている。Aドライブはどうか。さっきとは逆に、手のなかでなんの抵抗もなくゆれうごく。完全にいかれていた。
わたしは思わず、まぶたの上から両目をおおった。
大気圏の飛行に必要なAドライブが再起不能になっていた。この原始惑星での修理は無理だ。宇宙空間をどれだけ航行できたところで、この惑星の重力圏から脱出するエンジンが使えなければなんの意味もない。わたしはこの惑星に永遠にとどまざるをえなくなった。