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1 イエイツ司祭は、ヴァンナ族の宣教におもむく

 川岸にそびえる密林の角を曲がったところで、土手の草を切りひらいただけの狭い船着き場が、遠く視野にはいってきた。貨物運搬船の舳先に立ったランドは、その奥に広がる深い森に目をはせる。


 ランドは19歳で、もと森林監視員の冒険者だ。


 目指すヴァンナ族の部落は、あの森を抜けた先だという。立ちならんだ樹木のふちから放射状に陽ざしがのびている。そろそろ正午の頃合いだ。対岸がうかがえないほど幅の広い川をさかのぼって3日、今日じゅうには目的地に着けるだろう。


「ずいぶん奥地まで来たもんですなあ」


 ランドの隣にイエイツ司祭が立った。


 イエイツ司祭は50年配の、薄い白髪をていねいになでつけ、目じりの下がった、鼻の長い男性だ。たけが足首まである黒いローブに、白いケープをまとっている。


「さぞや未開の部族なんでしょうな」とイエイツが続ける。「布教のしがいがあるというものです。アトレイ教を知り、彼らは真の文明人になれるのです」


「ヴァンナ族にも、あがめる神がいるはずです。ハイランド王国の国教をむやみに押しつけるのは、どうかと思いますよ」


 ランドは、狩猟の女神ラムダを信仰している。かつて森林監視人をなりわいにしていたランドは、森での安全と、狩りの成果を願い、狩猟神を選んでいた。宗教は本人の自由であるべきだと考えている。


「土着の信仰でしょう」イエイツの顔に軽蔑の色がうかぶ。「そんな野蛮な神ではなく、より崇高なアトレイ神をおすすめするのです。これは強制ではありません」


「ヴァンナ族があがめている部族神はウォーケンというそうですね」


「ウォーケンがいかなる神だろうとそれはいいんですよ。問題なのは、その力をやどしたとうそぶく宿神(しゅくしん)の存在です。その者は迷信的な恐怖によって部族をおさめているのでしょう。その迷信から解放するためにも、アトレイ教が必要なんです」


 イエイツ司祭が使命感に体をふるわせる。


 ヴァンナ族の宗教に関しては、あるていどわかっているらしい。ハイランドの調査団がすでに現地の下調べを終えていると聞いた。


 そんな未開の地での宣教にのぞむイエイツ司祭の護衛が、今回のランドの使命だ。1日あたり100ゴールドの報酬には満足している。ランドが気になっているのは、船に同乗している依頼主についてだ。


 貨物船が、茶色い地肌のむきだした低い岸辺に着いた。4人の漕ぎ手が長い櫓を置いて、船を係留しはじめる。そのうち3人はマントの下に長剣をはいている。依頼人の警護もかねているのだろう。

 

 残りの1人は、浅黒い肌に大きな目が際立つ、やせて小柄な、30代の現地の案内人だ。名前をハッサンといった。


 後部甲板の倉庫の扉が開き、30半ばの男性が、かがめた腰をのばして出てきた。彼は、華やかな金糸の刺繍の膝たけのコートをまとい、ベルトに細身の剣をはく。半ズボンに長靴下、先のとがった革靴で舳先に近づいてくる。


「ようやく到着しましたね。こんな狭く薄暗い小屋での船旅はもうごめんです」


「長旅、ご苦労さまです。マーシャル・フォン・マキシム公爵」


 イエイツ司祭が依頼人にこうべを下げる。ランドも形だけの辞儀をした。


「かしこまらなくてもいいですよ」と片手を振ったマーシャルの中指と薬指に、青と赤の宝石のリングが陽光にきらめく。


「これもアトレイ教をあまねく世界に伝えるためですからね」とマーシャルが続ける。「無知蒙昧な蛮族を教化できるかどうかは、イエイツ司祭、あなたの信仰心にかかっているんですよ」


「はい」と司祭がおそれいり、さらに腰を低くする。


 マーシャル公は、額のまんなかで分けた金髪をカールさせ、そのていねいな口調とは反対に、目じりと口角の上がった挑戦的な顔つきをしている。


 ランドは1度、ヒルキャニオン村の目抜き通りを行進するマーシャル公を見かけていた。マーシャルは白馬に騎乗し、ハイランドの魔法学校に入学するアリスの馬車を先導していた。


 アリスは魔法種族〈マナン〉の血をひく、当時8歳の少女だ。彼女が13歳になったとき、復活した妖魔王ベルマルクを倒すと予言されていた。妖魔王との対決にそなえ、アリスはいまハイランドで魔法の勉強をしている。


 ランドの気がかりは、依頼人のマーシャルが仕えるハイランド王国にあった。2番目の冒険のさなか、ハイランドに不審をいだく出来事に出くわしていたのだ。


 漕ぎ手の1人が、上陸の準備がととのったと知らせてきた。


 この宣教の旅に、ふつうの川船ではなく貨物船が用意されたのは、3人の護衛をともなったハイランドの側近が乗船しているからではない。その理由は――。


「うへーえ。やっと陸地に上がれるんだなあ」


 身のたけ150センチの岩のかたまりが、倉庫から這いだしてきた。立ちあがった足もとが、どこかおぼつかない。半月型の愛嬌のある目、平べったい獅子鼻、大きな口をしている。ゴーレムのゴーラだ。


 歩きだそうとしたゴーラがよろめき、係留した貨物船が大きくゆれた。


「危ないわねえ」ゴーラの頭から、身長20センチの女性が飛びたった。妖精のチビットだ。倉庫の屋根にとまったチビットが文句をたれる。


「この貨物船も沈没させる気じゃないでしょうね」


 最初は平底の川船が手配された。ランド、イエイツ、マーシャル、それに4人の漕ぎ手が乗船し、ゴーラが乗りこんだところで、岩の重みで船が浸水しはじめた。そこで、より頑丈な貨物船が急ぎ調達されたのだ。


「そんなつもりはないんだなあ。船酔いなんだなあ。頭がくらくらするんだなあ」


 ゴーラは水が苦手だ。〈時の洞窟〉で大地母神にうみおとされたゴーラは、不安定な水の上では居心地が悪いのだろう。船旅のあいだ倉庫に閉じこもり、「気持ち悪いんだな。吐き気がするんだな」とぼやいていた。


 ランドは貨物船から天然の船着き場におりたった。短くても強力な複合弓(コンポジットボウ)を肩にかけ、ベルトに矢筒と短剣を装備する。


 ランドに続いて上陸したゴーラが大きくのびをした。ゴーラは肩に戦槌をかついでいる。〈時空の巨大樹〉からさずかったこの武器には、岩石をこなごなにする〈爆砕〉(クラック)の魔法がかけられている。その力を発動させるには魔力(マナ)をチャージする必要がある。冒険に先だち、ハイランドの魔術師に魔力(マナ)を充填してもらっていた。


 案内のハッサンの先導で、そびえる樹木のあいだの、踏みかためただけの道を宣教団は進む。案内人のあとに、マーシャル公爵と3人の警備兵が続き、ランド、イエイツ司祭、チビットを頭にのせたゴーラの順番だ。


 ランドは足を速めてマーシャルと並んだ。


「ハイランドの魔法学校でのアリスさんの勉強ははかどっていますか」


「アリス?」マーシャルが細い眉のあいだにしわを寄せる。


魔法種族(マナン)の魔力をふくんだ血を受けつぐ少女です」


「ああ、妖魔王を滅ぼすという予言の彼女ですね。もちろんです。来たるべき魔王軍との戦いにむけ、ハイランド王国の軍備を増強しているところです」


「そのハイランド軍なんですが、〈命の球〉(ライフボール)をその体内にうめこんだ、倒されてもよみがえるゾンビのような軍団ではないでしょうね」


 マーシャルの眉がぴくりと動いた。「なんの話でしょうか」


 ランドはおととしの秋の冒険で、ヒルチャーチの墓場に出没するゾンビの退治を依頼された。その墓場の寺院では、科学者のサンロランが、死者をよみがえらせる〈命の球〉(ライフボール)の開発をしていたのだ。


「その研究者を見張っていたのが、ハイランド兵士のゾンビでした」


「初耳ですね。それは本当にハイランド兵だったんですか」


「その兵士のサーコートには、『獅子と盾』のハイランドの紋章がありました」


「では、かつてハイランド軍にいたんでしょうね。兵役を逃れた地でゾンビとなりはて、独断で研究者に――〈命の球〉(ライフボール)ですか――の研究をさせていたんでしょう。ハイランドは〈命の球〉(ライフボール)にはいっさいかかわっていません」


 それはさておき、とマーシャルが話題をきりかえた。


「ヒルチャーチのゾンビを根絶やしにした活躍はハイランドにも聞こえています。それがあなただったんですね。冒険者組合が今回の依頼にあたり、あなたがたを推薦した理由がわかりましたよ。実にたのもしい」


 マーシャルが気軽にランドの肩を叩き、薄い唇の口角を不敵に上げた。


 ランドは、イエイツ司祭のそばの隊列に戻った。マーシャル公に質問したところで、公爵に都合のいい答えしか返ってこないだろう。


 暗い樹々の森が開けると、低い山を切りくずした、幅20メートルほどの切りとおしに出た。ハッサンによれば、この道を抜けた草原の先の森にヴァンナ族の部落はあるそうだ。現地人のハッサンは他部族の出身だという。


 切りとおしから見上げる、緑のやぶにおおわれた崖は8メートルほどか。その高みをふちどる茂みに西日がかかっている。日没までにはヴァンナ族の村に着きたいとランドは思った。平原のどまんなかでの野宿はさけたい。


 そのとき、頭上から複数の甲高い雄たけびが響きわたった。


 崖のふちから黒い影がおどる。その人物は雑木や雑草のなかを腰ですべり、山肌から突きだした太い枝につかまると、宣教団の後方に飛びおり、牛革のサンダルで軽やかに着地した。


 背中まである漆黒の髪がひるがえり、前髪から野性的な目がのぞく。10代後半だろうか。ほりの深い浅黒い顔に、一瞬、おどろきの色がうかび、すぐに消えた。きたえぬかれた上半身は裸で、ズボンのベルトにトマホークをさしている。


「ヴァンナ族の若き酋長サンジャです」マーシャルが教えた。


 切りとおしのいたるところから、戦闘の叫び声が降りそそいできた。崖の高みかに20人以上の蛮族の顔がのぞいている。先陣をきった1人がいきおいあまって滑落し、地面に激突して動かなくなった。


 蛮族がつぎつぎに山肌をすべりおりてくる。ランドは複合弓(コンポジットボウ)をたてつづけに射て、襲撃者の3、4人を転落させた。しかし、相手の数は多く、山を切りひらいた道の前後を、それぞれ10人ほどの敵にふさがれた。


 蛮族は、浅黒い半裸の体に赤い染料で戦化粧をほどこし、長剣をたずさえている。赤くくまどった顔には狂暴な戦意がみなぎる。


 サンジャが腰からトマホークを抜いて身構えた。戦う覚悟のようだ。


 イエイツ司祭と案内人をはさんで、その前方をマーシャルと3人の護衛が、後方をランド、ゴーラ、チビットがかため戦闘態勢をととのえた。ランドの数メートル先には、トマホークをかまえるサンジャの背中があった。


 ランドは肩ごしにマーシャルに問いかける。


「やつらはヴァンナ族じゃないんですか。これは、どういうわけなんです?」


「彼らはヘイガー族の戦士です。その最大の敵であるヴァンナ族の酋長を追いつめ、彼らは興奮しています。どうやら、部族間の争いに巻きこまれたようですね」


「イエイツさん」その頭上をチビットが旋回しながら、「司祭はアトレイ神の使いなんでしょう。ヘイガーと友好的な話しあいをもとめなさいよ」


「あい、わかった」とイエイツが、3人の護衛兵をわって前に出た。「野蛮な戦いはいますぐやめるのです」


 司祭のよく通るテノールに、ヘイガー族の足が止まった。


「わたしはアトレイ教を伝えるため、ハイランド王国からつかわされた宣教師である。部族どうしでいがみあうのは、信じる同じ神をもたないからです。アトレイ神のもとに、各部族がひとつにまとまれば、無益な争いなど起こりえません」


 ヘイガーの表情は一様に変わらず、その心にひびいた様子はなかった。


「彼らはハイランドの共通語を理解しません」とマーシャルが教えた。


「なにを、信仰に言語の差など関係ないわ。言葉が通じないならば、神をたたえる歌をうたおうぞ。歌詞の意味はわからずとも、その清らかな調べが心にしみいり、野蛮な闘争心をぬぐいさるであろう」


 聞くがいい、とイエイツのカウンターテナーがとどろきわたった。


 司祭の女声音域のファルセットが、ランドの鼓膜をつんざいた。音程のはずれた一本調子の裏声がまっすぐ脳を直撃する。頭蓋に響いて脳をかくはんする。ランドは、構えた弓をおろして思わず耳をおおいたくなった。これは平和な讃美歌ではない。もはや凶悪な暴力だ。


 イエイツの歌声に、ヘイガーの怒りの声があがった。叫び声とともにいっせいに襲いかかってくる。司祭の歌は彼らの心に通じなかった。


 驚きあわてたイエイツが悲鳴をあげ、戦闘隊形の中心に戻ってきた。


 バチバチと稲妻のはしる音がした。マーシャルの振りおろした細身の剣から、幅1・5メートルのジグザグの電撃が飛び、向かってくる4人のヘイガーを撃ちたおした。残りの6人を、マーシャルの3人の護衛兵が迎えうつ。


 狂暴な雄たけびにランドは視線を戻した。迫りくるヘイガーのドクロの描かれた心臓に、そくざに放った矢を突きたてた。さらにチビットの〈魔弾〉(マジックミサイル)が3本の光りのすじとなって、後続の3人を射抜く。


 切りとおしの前後で、それぞれ6人の蛮族を相手に混戦となった。


 3人のヘイガーが、宿敵のサンジャに襲いかかる。剣の一撃をひらりとかわしたサンジャが、その相手の額をトマホークで打ちくだいた。残りの2人が同時にふりおろした刃からしりぞき、敵と距離をとって身構える。


 ゴーラが戦槌をふりまわし、2人のヘイガーを相手にしている。安全な上空からチビットが声援をおくる。


 ランドは弓を短剣に持ちかえると、6人目のヘイガーと対峙した。相手の武器の攻撃線に入らない間合いで、攻撃のすきをうかがう。ランドは、ヘイガーが剣をむやみにふるっているのに気づいていた。


 ランドの首をねらった剣が水平にくりだされた。ランドはその刃の下をかいくぐり、敵のふところに入ると同時に、相手のわきばらに短剣を突きさした。倒れかかってきたヘイガーをはらいのけて立ちあがる。


 敵の頭をくだいたサンジャの背後に、もう1人のヘイガーが迫っていた。


「サンジャ」ランドは警告を発した。


 剣をふりかぶったヘイガーをねらい、ランドは短剣を投げた。それを顔面にうけたヘイガーの太刀すじがみだれる。身をかわしたサンジャがふりむきざま、敵の後頭部にトマホークでとどめをさした。


 ランドは、足もとに倒れふしたヘイガーから剣をうばい、さらなる攻撃にそなえる。長い剣はあつかいなれていないが、ここはしかたない。


 ぶん、とうなったゴーラの戦槌がヘイガーをなぎたおした。もう1人の剣がゴーラの岩の体で折れる。上半身をまわしたゴーラが、戦槌の反対側のかぎ爪をそのヘイガーの顔面に叩きつけた。


 ゴーラのほうは心配なさそうだ、とランドは判断した。


 切りとおし前方の戦場では、マーシャルとヘイガーが剣をまじえていた。2人の護衛がそれぞれの敵と戦っている。護衛の1人とヘイガーの2人が地面に倒れ、残った6人目のヘイガーが攻撃の機会をねらっていた。


 助太刀にはいろうとしたランドの横を、黒い影がひととびに通りすぎる。


 サンジャが、手すきのヘイガーにおそいかかり、一撃のもとに相手の体を撃ちたおした。ヴァンナ族の酋長の参戦に、生きのこった2人のヘイガーが逃げだした。


 ランドとゴーラが助けにむかうまでもなく、戦闘の決着はついた。サンジャが血のしたたるトマホークを下ろしている。追い打ちをかける気はないようだ。


 そのとき、マーシャルの細身の剣が一閃した。バチバチとほとばしった電撃が、逃走したヘイガーをつらぬき、両者の息の根を止めた。


「生かしておいても、なんの価値もない野蛮人ですからね」


 マーシャルが冷たく言いはなち、武器をさやにおさめた。マーシャルの足もとに、血を流した護衛兵の1人が倒れている。


「どれ、わしがアトレイ神の御力を願い、〈治癒〉(ヒーリング)をしてしんぜよう」


 おびえ縮こまっていたイエイツ司祭が、さっそうと護衛兵の治療に向かった。


「かまわないでください。彼はもう死んでいます。死人に〈治癒〉(ヒーリング)は無用です」


 マーシャルがそう言い、護衛兵のむくろをつま先でこづいた。


 ランドは、ヘイガーからうばった剣を調べて不審をおぼえていた。マーシャルに近づき、きらめく刃を水平にかざして見せる。


「これはハイランドの軍隊が装備していそうな近代的な武器ですね」


 マーシャルの切れながの目が、ランドのかかげる剣をいちべつする。


「ハイランドの周辺地域では、ごくありふれたものです。王国軍だけが使用しているわけではありません。もっとも、こんな辺境の地の野蛮人が、これだけの剣をきたえる技術をもっているのは意外でした」


「わたしたちは製鉄の技術をもっていません」


 ランドは、サンジャの共通語にふりかえった。


「あなたはハイランドの言葉を話せるんですね」


「わたしは、戦のないときにはハイランドとの交易にたずさわっています。その機会に習いおぼえました。わたしたちは、鉄器などの交易品を毛皮と交換しています。このトマホークも交易所で手にいれたものです」


 サンジャが、鉄製の刃をもつ武器をかかげて見せた。


「これでわかった」マーシャルが口をはさんだ。「頑丈でするどい鉄製の武器を、ヘイガー族は交易によって入手したんですよ」


 ランドはマーシャルの返答には納得できなかった。


 切りとおしの崖の下に、先走って転落したヘイガーがあおむけに横たわっている。その浅黒い上半身の下敷きになった盾に、ランドは目をとめた。ヘイガーの遺体に近づいて、うつぶせにひっくり返した。


 その瞬間、ランドはハッと目を見開いた。


「マーシャル殿、このヘイガーが背負っていた盾には、『獅子と盾』が刻まれています。それはハイランド王国の紋章ではありませんか」


 いかにも、とマーシャルが認めた。


「このたびの宣教に先だち、現地に調査団を2回おくっています。その第一陣が戻ってきませんでした。きっとヘイガー族に襲われ、そのさい護衛の武具が奪われたんでしょう。ハイランドの剣と盾をヘイガーが装備していた事実が、その調査団の運命をあらわしています」


 なんの不思議もありませんよ、とマーシャルが挑戦的に口角を上げて見せた。



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