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不幸だった女子高生は異世界で溺愛されます  作者: マスカットマウス
5歳以上編
7/12

6

「えいっ! えいっ! 魔法出ないよぉ! うー、何でえ!」


 右手を上下に振り回しながら叫ぶ。光の玉ってなに!? どんなイメージをすればいいのか全然分からないよ。何でクー兄様の光の玉は浮いているんだろう?空中で止まっていたし動かすことができていた。光の玉って何なの!? 前世にはそんなものは存在してなかったよ。強いて言うなら──人魂!? ええ!? 怖すぎるよ! 安全な魔法と言ってたけど危険だよ! 危険すぎるよ! っは、落ち着こう……。そんな怖い魔法だったら皆が止めているに決まっている。うーん……。でも結局光の玉が何なのか全然イメージできないよお!


「姫様……可愛らしすぎます……。今から私の部屋に遊びに来ていただけませんか? 手取り足取り魔法に使い方を教えますよ?」


 ひい!? シャルさんどうしたの? 魔法を教えてもらえるのは嬉しいけど誘い方が怖いよ!


「シャルさん。誘ってくれるのはありがたいけど怖いよ!? 一体何をされちゃうの……行かないけどね!」


 シャルさんが、少し残念そうな顔をしている。ううう……私を落ち着かせるために言ったのかな? でも残念そうにしているからもしかして……。考えないようにしよう。


「お顔が赤くなって大変可愛らしいですね。ツムギ様? そんなに焦って魔法を発動させようとしてもイメージができませんよ?」


「あはは、そんなに焦らなくてもいいのに、魔法は適当にイメージしてみれば案外使えるようになるよ。ふとしたきっかけで使えるようになるからね。まだ5歳だから焦らなくていいと思うよ」


「何で意見が真逆なの!? どうすればいいか分からないよ! うーん。私は考えてから使うタイプだと思うよ。魔法を感覚で使うことはできないと思うんだ。」


 うーん……魔法には色々な使い方があるんだね。これも一つ勉強になったね! ……そういえば皆は何がきっかけで魔法が使えるようになったんだろう?


「色んな魔法の使い方があるんだね。皆ってどうやって魔法が使えるようになったの?」


「私はですねえ。料理が趣味なのでよく火を扱いますので、小さな火傷もしていました。その熱さをイメージして魔法を使ってみようとしたらできていましたね。」


「うーん。私はね、身の回りの物を参考にしたよ。街灯を眺めていたり、皆と焚火をして一緒にご飯とか食べていたからね。私の周りの人も魔法を使っていたからそれを観察したりして、自分の適当にイメージして魔法を使ってみたらできたよ!」


「私は冒険者でしたので少々手荒な方法で魔法を覚えましたね。姫様のご参考にはならないと思います。実際に魔法を受けたりして、熱さや痛みを経験してからイメージをしましたね。」


 ほへー……。色んなきっかけがあるんだね。 メーリスさんは趣味がきっかけで使えるようになったと、火傷してるのは嫌だな。クレアさんは周りの物を参考にしてできるようになった。……シャルさんのは手荒すぎない!? しかも実際に魔法を受けてたって……。傷跡とか残っていないのかな? 服の下には傷跡があるとかだったら絶対に嫌!


「メーリスさんは、火傷の痕は残ってないよね? シャルさんも怪我の痕とか残ってないよね? 大丈夫だよね?」


「塗り薬で火傷は完治していますよ。火傷の痕もありません。安心してくださいツムギ様」


「私は少しだけ痕が残っていますね。痛みはありませんし、動きも支障はありません。姫様がお気に病むことはありませんよ。」


 メーリスさんは治っているんだね……よかった。でも火傷って本当に痛そう。……シャルさんは部屋にきてもらおう! 女神様から貰った癒しの力で治そう!


「メーリスさん治って良かった……。シャルさんは今日の夜、私の部屋に来てね! 絶対だよ! ……魔法で怪我を治せないの? 魔法って何でもできそうな気がするけど……。」


「畏まりました。お優しい姫様。本日の夜、お部屋に伺いますね。魔法では怪我を治すことはできませんね。薬を使って治しますよ。腕の欠損などは治すことはできませんが、傷跡はきれいに治せます。ですが、稀に能力として癒しの力を持っている人もいますね。そういう方は国に抱えられていて、滅多に会うことはできません……私も実は能力を持っているんですよ」


 そ……そうなんだ。魔法でもできない事があるんだね。何でだろうね? 怪我をどうやって治すのかをイメージできないからなのかな? 薬ってそんなに万能なんだ。シャルさんに能力!? わー! 知りたいな!


「シャルさんはどんな能力を持ってるの? 教えて教えて!」


「はい。いいですよ。今から見せますね」


 シャルさんが手のひらを見せるとナイフがいつの間にか手の中にある。……え!? ナイフ!? どこにあったの!? 刃もあるし、よく切れそうで怖いし刃の部分で景色を反射してる……。本物なのかな?


「……それってナイフだよね? ちゃんと切れるの? どこから出したの?」


「ご明察の通りナイフです。よく切れるので本当にお気をつけください。触らないでくださいね? 切れ味を強くするほど魔力の消費量が増します。どこから出したかは……申し訳ございません。実は私も分かっていないのです。能力は生まれた時から持っている謎の力でその人だけが持っている特殊能力です。」


 魔法とか能力について分かっていることが少なすぎない? そういうものだ。と納得した方がいいのかな。父様も母様も理解できていないことを私が理解することなんてできないよね。


「魔法もそうだけど、能力についても分からない事だらけなんだね。シャルさんが冒険者の頃はそのナイフを使って戦っていたの? 強かったの?」


「ええ。能力持ちだとナイフを投げていました。百発百中で当てることができますよ。それなりに強かったですよ」


 百発百中ってかっこいいね! メイド服を着ながらナイフを投げる姿は様になるね! あ、昔は冒険者だったからメイド服は着ていないね。


「シャルさんかっこいい! 冒険者のお友達はいたの? どんな生活をしていたの?」


「っく! 姫様の好奇心が……。基本的には一人で行動していましたね。友達と呼べる人は少ないですね。たまに一緒に同じ依頼を受ける程度の仲ですよ。生活に関しては、依頼を受けながら町の宿屋に泊まっていましたね。それなりに収入があったのでお店でご飯を食べて生活をしていましたよ」


 ほうほうほう! 冒険者の生活が少しずつ分かってきたよ!! ……なるほど。シャルさんは他人を寄せ付けないような雰囲気があるよね! 一人で行動していたことも少し納得できるよ。……でもずっと一人だったのかな? それはちょっと寂しいと思うよ。


「シャルさんはずっと一人だったの? 誰かと一緒に冒険しなかったの?」


「いえ、一時期ですが弟子と一緒にいましたね。今は一緒ではないですよ。」


 弟子! 師匠とか呼ばれたりしてたのかな? ロマンを感じるよね。


「シャルさんは弟子を取れるくらい強かったんだね! 師匠と呼ばれていたの? 弟子の人の名前は何て言うの?」


「姫様の知識はいったいどこから……。師匠とは呼ばれていないですね。私の事は名前で読んでいましたよ。名前はミラと言います。まあどうでもいいです。」


 やばい! お姫様が知ってるようなことじゃなかったかも。弟子の事がどうでもいいって……でもシャルさんの事を沢山知れて楽しかったな。あまり自分のことは話さないからね。


「えっと……。本で見てね! それで気になったんだ! どうでもいいって……。大事な弟子だったんだよね?」


「なるほど。……ええ、それなりに大事でしたよ。今は一人立ちして上手くやっていると思いますよ。姫様より大事な存在はいませんので勘違いはしないでくださいね?」


 私以外の扱いが適当すぎない? 私ってそんなに可愛いのかな? 自分では分からないよ。


「なんで!? 私だけじゃなくて皆も大切にしてよね!」


「それは無理な相談ですね。メイドですので」


「どういうことなの!?」


 ……あれ? クレアさんとメーリスさんがいない。慌てて周りを見渡す。私とシャルさんしか部屋にいない。何でいなくなっちゃったんだろう? 私とシャルさんだけがお話しててつまらなかったのかな? 私だけが楽しんでただけだ。仲間外れにしちゃった。私は何で気づけないんだろう……。


「ふふふ、姫様気づきましたか。凄まじい集中力でした。冒険者のお話を聞けて大変楽しそうにして可愛らしかったですよ。まだお聞きになりま……どうされました姫様!」


 涙を流してしまった私をそっと腕の中に抱き上げてあやすように頭を撫でてくれる。……涙が止まらないよ。


「ごめんね。クレアさんメーリスさん……。自分だけがシャルさんとお話してて皆もお話したかったよね……。私だけが楽しんでいたよね。二人はつまらなかったよね。仲間外れにしちゃったよね。それを気づけなくてお話に夢中になって……。私って本当に悪い子だよ……。嫌いにならないで!」


「あああ……どうしたら……どうか泣き止んで下さい姫様。クレアとメーリスはお菓子を用意しに行ったのですよ。寂しかった、つまらなかったとは決して思ってはいませんよ。ましては嫌う何てことは絶対にありえません。責めるのでしたら、私を責めてください。姫様とのお話が楽しくて私が夢中になっていました。姫様は何も悪くありませんよ。本当に申し訳ありません姫様。ああ……お労しい……」


 シャルさんはとっても優しいね……。私が悪いのに自分のせいにして。ううう…。シャルさんごめんね。


「まだご自分を責めていらっしゃるご様子……。どうしましょう……。お二人を呼びに行きたいけど姫様をお一人にはできませんし」

 シャルさんが慌てて撫でたりキスをしたりして必死に私を泣き止ませようとしている。


「姫ーお菓子を作ってきたよ! 皆で食べようよ! ……姫!? どうしたの!」


「ツムギ様! どうされました! どうしてお泣きになっているのですか? ……シャルロット? 今すぐ教えなさい」


 二人がお菓子が入った小さなバスケットと紅茶のポットを落とさないように走り、机の上に置いて睨むようにシャルさんを見る。


「待って! 二人ともシャルさんを睨まないで! 私が悪いの! シャルさんは何も悪くないからあ……」


 シャルさんに矛先が向かないようにする。シャルさんは私とお話していただけだからね。何も悪くない。


「……シャル? 何があったか説明してもらえる?」


「ええ、説明します。姫様が泣いている件については私を責めてくださいね。魔法のお話の時はお二人はいましたので状況は知っていますね。その後、姫様が私の冒険者時代に興味を持ったのか沢山質問をして下さいました。姫様がお話に夢中になり、お二人が部屋から出て行ったのを気づいていませんでした。一通りお話が終わった後に、二人がいない事に気づきました。その後です。姫様がお泣きになったのは。姫様が二人が出て言った理由は、私と姫様だけが会話していて二人がつまらなかったから出て行った。姫様と私だけが楽しんでて二人だけ仲間外れにしていた。そのこと気づかないでお話しに夢中になっていたのを気づいて泣いてしまわれました。ご自分を責めているのです。『嫌わないで』とも仰っていましたね。私も姫様との会話に夢中になっていました。申し訳ございません」


「……なるほど。これは私達も悪いね。一言でも姫に声をかければ泣くことはなかったね。私達が大好きな姫を嫌うことは絶対にないよ。安心してね。──シャルが意図的に姫を泣かせるわけないからね。」


「ツムギ様? ご自分を責めることはありません。ツムギ様はまだ5歳ですよ? 周りの事など考えずに楽しんで下さい。本当にお優しいですね。世界で一番可愛いのではないでしょうか? 私もツムギを嫌うことなどありえませんよ。大好きですよ。ツムギ様。……シャルロットは私たちが部屋から出たことは気づいていたのですよね?」


「はい。気づいていました。お二人の事を忘れる程会話に夢中になる姫様が大変可愛らしかったので、あえて伝えていませんでした。いかなる罰もお受けします。」


 また自分のせいにして! ……罰!? 絶対に嫌だ!


「ダメだよ! シャルさんだけが罰を受けるのはおかしいよ! 私も受けるべきだよ!」


「ツムギ様もシャルロットも誰も悪くありません。皆少しだけすれ違っただけなのです。ええ。誰も悪くなんてありません。ツムギ様こちらに来てください。クレアも一緒になってツムギ様を慰めて安心させましょう。」


 メーリスさんとクレアさんが慈しむような眼差しで私を撫でてくれる。安心するなあ。良かった……。そうだよね誰も怒ってないし小さなすれ違いでこんなことになっちゃったんだよね。あ! でもこれだけは確認しないと。


「シャルさんはいなくならないよね?」


「シャルはいなくならないよ。安心して。そんなことは絶対にないよ」


「良かった……。大好きなシャルさんがいなくなるなんて考えたくないよ。本当に…‥良かった。」


 何だか安心したら眠くなってきた……。そうだよね。今回の件は皆悪くないよ。私に罰がないのは少し納得いかないけど、皆が傷つかないならそれでいいよ。……良かったよ……。


「泣いてお疲れなのか姫様は寝られましたね。ふふふ……。愛おしいですね。はあ……未だに自分が許せませんよ。 姫様をベットにお運びしますね」


「はーい。いってらっしゃい。」


「いってらっしゃい。シャルロット。お休みになったのを確認してから一度戻ってきてくださいね」


「もちろんです。では姫様をお運びしますね。少々お待ちください」





 シャルロットがツムギを寝かせてから談話室に戻った。三人は顔を見合わせて頷き合い談話室から退室した。


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