4
宴会が終わった次の日、談話室の椅子に座り足をぶらぶらさせる。ひまだーひまだよー今日は何して過ごそうかなー。……そうだ! 魔法を教えてもらおう! 楽しみだなーどんな魔法があるのかな。
「ねーねー、魔法を教えてほしいなー。ダメ?」
隣に座っているメイドさんのメーリスさんに聞いてみる。
「うーん、私は魔法は得意ではありませんからねえ。どうしましょう?」
メーリスさん。私付きのメイドさんで、私が食べる料理を作ってくれる。料理がとっても美味しくて、いっぱい食べちゃうんだよね。苦手な野菜が入っていても、次からは絶対に出てこないんだよね。不思議。メーリスさんはとても落ち着いていてのんびり屋さんだね。そしてお胸が大きい。本当に大きい。羨ましい。いつも私の事を気にかけてくれる大好きなメイドさん。
「私もね、メーリスと似たような感じだからね。ごめんねーツムギ。力になれなくて」
「全然気にしなくていいよ! クレアさん。うーん、じゃあ何しようかなあ?」
クレアさん。私付きのメイドさんで、お菓子とデザートを作ってくれる。高級デザートやお菓子屋さんも顔負けな味で舌が幸せになるくらい美味しい。前世では高級なお菓子とかは食べたことないけどね。色んなお菓子を作ってくれる。中でも特に美味しかったお菓子はなぜか後日作ってくれる。クレアさんは、明るくて元気な大人。悪い事もたまに注意してくれるとっても優しいメイドさん。お胸も大きいけど、メーリスさんよりは大きくない。私もお胸が大きくなりたい。なるかなあ……?
「シャルロットならあ、教えれると思いますよ?」
「あ、確かに! シャル強いし怖いもんね」
え? シャルさんかー。何でも完璧にできるメイドさんだからね。というより、シャルさんが何も喋っていないのが気になる。もしかして魔法が得意なことを隠してるのかな?
「私も魔法はそれなりに使える程度ですよ。クレア? 私のどこが怖いんですか? もぎ取りますよ? 全く羨ましい。」
もぎ取る!? シンプルな表現ながら怖すぎる!
「シャルさん怖ーい! シャルさんも胸大きいよ! でも何で私のメイドさんは胸が大きいのかな。嬉しいんだけどね」
「私は分かりますよお。クリス様のご趣味ですよね。なのでツムギ様のお世話係の私達も胸が大きいだと思いますよ。」
クー兄様の趣味かあ。なら納得だよ。……え? 私も同じだと思われてるの!? 確かにおっぱいは少し好きだけど揉みたいほど好きじゃないよ!
「何で私も同じだと思われてるの!? でも大きい胸は自然と見ちゃうんだよね。もしかして私もクー兄様と同じなのかなあ……」
うーん、少し納得がいかないよ。誤解は少しずつ解いていけばいいよね!
「クー兄様と同じ趣味と思われたくないけど、皆の事は大好きだよ! メイドさんになってくれてありがとう!」
「私も好きだよー ツムギ!」
うんうん。良い話だったよ! ……あれ? 何か忘れているような。……あ! 魔法の事を聞いていたんだ!
「……そうだよ! 魔法だよ! シャルさん。魔法ってどうやって使うの? 教えて?」
「畏まりました。──と言いたいところですが、魔法は姫様が10歳になられましたら教えるという決まりです。そして、私達が魔法を教えても問題ないのか分からないのです。申し訳ございません。姫様」
申し訳なさそうな顔をしながらお辞儀をするシャルさん。お辞儀する姿も綺麗だね。凄いなあ。
そっかー、魔法も10歳からなんだね。町に行くのも10歳かー。うーん、でも皆に迷惑はかけたくないからね。仕方ない。
「危なくない魔法もありますよお。なので、我が儘を言ってはいかがでしょうか? ですが、言う相手は選んだ方が良いと思いますよお」
「うんうん。ツムギに甘い人って誰だろうねー。私はもう誰に言えばいいかは決めてるよ」
我が儘かー。良いのかな? 言っちゃって。まあ、言うだけならタダだもんね! 皆が言う通り相手は選んだほうがいいね。一発でダメって言われそうだよね。
「うーん。誰がいいのかな。でも私は誰でもいいような気がするよ。皆優しいし」
「ええ、私もメーリスに賛成です。……姫様。エドウィン様にお願いしてみてはいかがでしょうか?」
なるほど!! 父様か! 皆よく考えてるね。誰でもいいと思ってたよ。うんうん。後でお願いしに行こう! せっかく大好きなメイドさんと一緒に居られる時間だもんね。楽しまなきゃね!
「ねーねー! 皆って魔法どれくらい使えるの?」
「そうですねえ。私は、生活に困らない程度には使えますよ。冒険者というわけでもありませんし」
ふむふむ。メーリスさんは生活に困らない程度か…、それってどれくらいなんだろう?
「私もメーリスと一緒だね!」
クレアさんも同じと……シャルさんはどうなんだろう? 凄く上手く魔法が使えそうだよね!
「私は強いて言うなら得意ですね。エドウィン様とセレスティア様には劣りますが」
「父様と母様は凄いんだね! 憧れちゃうよ。私も早く使ってみたーい!」
ふむふむ。父様と母様よりは使えないんだね。でも、兄様と姉様には勝ってるんだね! シャルさんすごーい!
「シャルロットは昔は冒険者だったんですよお。ツムギ様は知っていましたか?」
冒険者! わあ……魔物を倒したり、人を護衛したり、貴族と顔見知りになったり。色んなことがありそうだね! 仲間と一緒に協力しながら一緒に冒険して、同じ宿に泊まったりして……楽しそう!!
「……メーリス。姫様の好奇心に火をつけないで下さい。目をキラキラさせてとても可愛らしいので今は何もしませんが、覚えておいてくださいね?」
「シャルさん教えて教えて! 冒険者って何してるの? どうやって戦ってるの?」
ワクワクしながら尋ねる。
シャルさんが焦った表情をしながら答える。
「そうですね。主に雑務依頼と討伐依頼がありますね。雑務依頼は、飲食店のお手伝いや畑の収穫のお手伝いなどがあります。討伐依頼は、冒険者ギルドで指定された魔物を狩ることです。魔物は危険な生き物なので、最低4人で魔物と戦います。ですが、強い冒険者は一人で戦います。戦いに関しては姫様にはまだ早いです。申し訳ございません。……これくらいでよろしいでしょうか?」
「うん! ありがとう、シャルさん。冒険者のお話が知れて楽しかった! ごめんね? 言いずらい事だったよね。」
少し言いずらそうにしていたので、シャルさんには悪い事をしてしまったと反省する。言いたく無い事だったら断ればいいのにね。
「シャルさんが言いたくない事は言わなくて大丈夫だよ。嫌な事なら嫌って言ってね。カルミラに住んでいる人は、皆家族だからね!」
そう。私含め王族はカルミラに住んでいる住民を家族として扱ってるんだ。これはお爺様とお婆様がアルスラーチを建国してすぐにカルミラという小さな村を作ったんだ。それでカルミラに住んでいる魔人族は、皆家族扱いをするって決めたんだって。皆優しくて良い人だから私はとても嬉しいな。王族だからって変に気を遣われると寂しくなっちゃうからね。真面目な人もいるけど、殆どの人は王族を特別扱いしてないよ。
「姫様……ご立派になられて……ただのメイドにそこまでお心を砕いていただいて、ありがとうございます。私が言いたくない事は事前に断りますのでご安心ください」
シャルさんが椅子から立ち上がって私の目の前まで歩いてくる。感動した表情をしながらお辞儀をしている。
お辞儀は少し大げさな気がするけど、これはもう慣れだよね。家族扱いが普通と思えるように私も頑張ろう!
「えへへ……徐々に慣れていけばいいからね! じゃあ私は父様の所に行って魔法を使いたいってお願いしてくる! 教えてくれてありがとう!!」