表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/53

仮面の夫

 一触即発。

 そう思われた時。

 それもまた、あっけなく打ち消したのはリーゼだった。

「その際はさっさと出て行ってください。こちらは抵抗しません。何か見知らぬ術でも使われたと魔王様には報告しましょう。これにいるは我が娘も同じ。無駄な争いは御免こうむりたい」

「なるほど。ま、それはそうだな」

「では、確認をしましょう。お部屋にお戻りを」

 そうするよ。

 アンリエッタは猫から蒼き狼へと戻っていた。

 牙を出す猫に、抱えられたまま牙をむく狼。

 これはこれでまた、面白い光景だとイブリースは歩き出す。

 数歩行ったところで、彼はふと振り返り、女王リーゼを見て行った。

「なあ、女王リーゼ。さっき名前のでた聖教会と第八位の魔王だが‥‥‥似ているぞ?」

「それはまた‥‥‥復活でもあり得る、と?」

「かもな?」

 リーゼはむうっ、と唸ってしまう。

 それが事実ならば、まだまだあの魔王は消滅していないことになる。

 それでは、と彼女も面白い一言をイブリースに伝えた。

「バートン大公殿。では、こちらも一つ」

「‥‥‥? 何かな?」

「リオナール公子イブリース様は、すでに風の精霊王の加護を失った様子」

「ああ、それなら知っているよ。妻が。前妻が神託で教えてくれた」

「なっ‥‥‥!」

 最高機密に属することをこうも軽々と知っていると言われたら立つ瀬がない。

 おまけに彼の鼓動も脈も物言いも嘘をついているようには思えなかった。

 神託。神の命をうけている人間を無下にはできない。

 リーゼは不本意ながら故郷の魔王リクト向けに、通信回線を開いたのだった。


 一方、戻った個室でアンリエッタはたいそう不機嫌だった。

 無理もない、自分の部下だと公然に言い放っておきながら、ぬけぬけと妻だなんて鞍替えの発言をする。

 もう、イブリースの本心が何かが理解出来なかった。

「俺の本心?」

「ええ、そうよ。納得いかないわ」

「そんなの、決まっているだろう。いまの俺はなんと、大公様に返り咲いたんだ!」

「‥‥‥だから何?」

「大公と言えば王位継承権を持たない王族だ。意味わかるか」

「ええ、そうね。だからどうなのよ、名ばかりの大公様?」

「犯罪歴も消えた。故国にも戻れる。領地もある」

「なら、捨てて行くんだ? 嘘つき」

「違うぞ、アンリエッタ! これで生まれてくる子供が男子でも、女子でも。その子は特権階級だ」

「意味分からないわ」

 つまりだ。

 と、イブリースは世界地図を光球の中に浮かび上がらせる。

「東の大陸の北部にある魔界。そこに行くためにはまあ、多くの国を横断する必要がある。このままグレム魔公国の援助が受けられれば、エルムド帝国は東の雄だ。大陸の大半は通過できる。その向こうにあるルゲル枢軸連邦は俺の故郷だ。爵位の恩恵がそのまま受けられる。ま、グリムガル王国からは狙われるだろうが‥‥‥」

「ふーん。そこまで考えてなら、いいわ。おじい様には何か手紙を送るわよ。アンリエッタは神の役目を仰せつかっております。不名誉はいずれこの牙にて清算を。イブリースは生かしておいてね、おじい様? そんなところかしら」

「お前‥‥‥恐ろしい女だな。まだ復讐を忘れていないのか?」

「ええ、そうよ。狼は執念深いの。ま、いいわ」

「何が良いんだよ?」

「別に」

 そう言うと、少女は優しくイブリースの頬にキスをしたのだった。

 これから子供が生まれるまで宜しくね?

 仮面の夫様。そう言い、微笑んで二人の新しい冒険はここから始まるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ