第7話 なにも喋らない
二人が改めて画面に注視。CMも終わり番組が再開。ハンガーに納められたタイヘーンスリーが映し出される。
『これは素晴らしい! 子供の頃にアニメで見たロボットそのものです。状態もいいですねえ。ハカセさん、整備はマメに?』
『ええ。なにしろスーパーロボットですからね。整備に手抜きは許されません』
モザイク越しにハカセが気さくに答える。
『なるほど、事故歴は?』
『あるわけありません』
『それは素晴らしい。内装を見ても?』
『ええ。どうぞ』
ナイクに促され気前よくコクピットを開帳するハカセ。
「お前はバカか! なんで一般人に、しかも部外者のメディアにコクピットまで見せびらかしてんだ! お人好しにもほどがあるだろ」
ヤスオのツッコミにハカセもさすがに申し訳無さそうに答える。
「いや、だって相手は世界のアドベンチャーチャンネルだぞ? ここで渋ったら日本人のイメージガタ落ちになるだろ。ハカセは涙を呑んで国のイメージアップに貢献したのが分からんのか」
番組はなおも進む。
『う〜ん、操縦席はお世辞にも快適そうとは言えません。でも、このレザーシートはなかなかいいですねえ。座っても?』
『ええ、いいですよ』
ハカセの許可を得てメタボ気味の体をコクピットに押し込むナイク。
「ああそうか。コイツはこんな調子でタイヘーンを強奪しやがったんだな?」
ヤスオの読みにハカセは煮え切らない生返事だけを返す。
『うん。座り心地はなかなか悪くありません。でも、このオモチャっぽいコントローラーはいただけません。これは大きなマイナスポイントです。コクピットも狭い。これでは快適なロボットライフはとても期待できないでしょう』
ひとしきりマイナスポイントを指摘してコクピットから出るナイク。
『なかなか状態はよさそうです。しかし、実際に乗って動かしてみないとなんとも言えません。試乗しても?』
『ええ。もちろん』
『持ち主の許可が出ました。では、早速試乗してみましょう!』
『デッデッデーン、デレレレーン』
番組は再びCMに移行。もうヤスオは何も言わない。
「おい……何か言ってくれ。そう急に黙られるとかえって怖いだろ」