第59話 あの鐘を鳴らすのは
ヤスオは思わずリングに乱入し、スラッシャー村貫からマイクを奪う。
「おいスラッシャー! これから男二人が最強の座と生死をかけて戦おうってのに、よりにもよってこんばんはとはどういうつもりだ!」
ヤスオはこめかみに血管浮き上がらせ、大声でまくしたてた。別にヤスオがクレームつけるような問題では全くないのだが、何故かその場の空気を変えねばならないという使命感のようなものがヤスオを衝き動かした。が、スラッシャー村貫は小首を傾げるばかりで全く要領を得ない。
と、突如コーナーに控えてた村貫アツ子がヤスオを見咎めた。
「アナタ! タイヘーンのパイロットの破天荒死郎じゃない! こんなところで何やってるの! ここは女子供の来るところじゃありませんよ! さっさと帰宅しなさい!」
「それはこっちのセリフだわ! だいたいなんでアンタがダンナの仕事に随行してんだ! 国家公務員が副業やってていいのかよ!? てゆうか、中東くんだりまでやってきてさっさと帰宅もねえもんだ!」
パアンッ!!
いきなり村貫アツ子の平手打ちがヤスオの頬に炸裂。
「い、言いがかりはよして頂戴! 私はあくまで夫の付き添いで来ただけで、決して副業ではありませんから! 憶測で物を言わないで下さい! この、ハゲーッ!!」
ヤスオと村貫が掴み合いを始めかけたがレフェリーとタン・バリン師が二人を分ける。一方、スラッシャー村貫とアントンマンはすでにお互いの闘志を感じ取り、バッチバチの戦闘モード。
「まあまあ。どうやらこのお二方には何やら遺恨があるご様子。それもこれも全てひっくるめて今夜の試合で白黒決着つけようではありませんか。勝利者が全てを手に入れ、敗者は全てを失う。それがアレカユイナ伝統のノーDQデスマッチ無制限一本勝負!! 異論はありませんね!?」
タン・バリン師がマイクで煽ると観客席からも声援が起こる。
カァーン!!
かくして、なんだかよく分からないままスラッシャー村貫VSアントンマン、シングルマッチのゴングが鳴った。
作者は決してプロレスを馬鹿にはしてません……多分。




