第5話 タイヘーン奪われる
某所に存在するロボットテーマパーク、ロボキッズ王国。年中閑古鳥が鳴いているが実はこの施設こそエデンの本拠地なのである。地下数十メートルにエデン本部が存在し、司令部およびタイヘーンスリーが隠されているのである。
ヤスオはそのロボキッズ王国の一角にある関係者以外立ち入り禁止のドアをくぐる。元々客もいないし予算の関係とかで警備員もいないのでセキュリティはガバガバ。ヤスオは地下へと続く通路を急ぐ。
だが、ヤスオは妙なことに気付いた。スクランブル要請があったはずなのにありすと早乙女の姿が見えない。それだけではない。エデンの地下基地内クルーが一人としていない。怪訝に思いつつ、いつもの司令室に入るとハカセが一人いるきりだった。
「おいオッサン、こりゃ一体どういうことなんだよ。俺はスクランブルで呼び出されたはずだぞ。それなのに、他のメンバーがいねえじゃねえかよ。それに地上でベリエザスが暴れまわってるなんてニュースも聞かなかったぞ」
ハカセが狼狽した様子でヤスオの問に答える。
「うむ。お前の疑問はもっともだ。だが、今回の事態はそんな生易しいもんじゃない。心を落ち着けて聞いてくれ。実はだな、これは超極秘事項なのだが、タイヘーンスリーが奪われてしまったのだ」
「……いや、ごめん。ちょっといま何言ったのかいまいち理解が追いつかねんだけど。ちなみに今日ってエイプリルフールとかじゃねえよな?」
「ウソやドッキリでこんなことが言えるか。俄に信じられん気持ちは分かるが、もうこの基地にタイヘーンスリーは存在しない。この事実が発覚すれば大変な事態に陥ってしまう。ありす君や早乙女君はもちろんのこと、特に鴨葱議員にだけは知られるわけにはいかない。1号機のパイロットであるお前にだけこの事実を打ち明けるのだ」
「失態を隠したいだけじゃねえのか。で? 一体なんでそんなことになったんだ? やっぱり敵組織か美少年特殊部隊かなんかの強奪作戦か」
「いや、説明すると長くなるのでまずはこの映像を見てくれ。これを見れば概要が分かるはずだ」
ハカセがリモコンでモニターの電源を入れる。画面にはゴールデンで流れる海外の人気番組のオープニングが仰々しいBGMとともに映しだされた。
「なんだよこれ。世界のアドベンチャーチャンネルじゃねえか。これがタイヘーンの強奪とどう関係あんだよ」
「まあしばらく黙って見てろ」
番組はエゲレス帝国の番組、スクラップカーブローカーズであった。中古車を買い取ってレストアし、儲けを出す人気番組である。早速画面に番組の司会進行、MCのナイクが現れ挨拶をする。
『ハーイ、皆さん。スクラップカーブローカーズにようこそ。私が中古車を買い付け、相棒のウェドが直す。うまく儲けを出せれば御の字です。今回は私の子供の頃からの夢、なんとスーパーロボットを買い付けます! 番組史上初の挑戦ですが、必ず成功させて利益をあげて見せますよ!』
嫌な予感しかしないヤスオ。
「……これ確か車の番組だよな? こいつは何をトチ狂ってロボットなんかで商売しようと思ったんだ? もう世界中の市場を荒らしまくってネタが尽きたんじゃねえのか?」
ヤスオの心配をよそに番組は進行。
『確かにスーパーロボットの利益率は未知数です。しかしロボットにはロマンがあります! ロマンにはお金で計れない価値があるのです! そこで私はネットで検索し、ある組織にたどり着きました。残念ながら売り物ではなさそうですが、ここは強気で電話してみましょう。ハーイ、エデンさんですか? ワタクシ、スクラップカーブローカーズのナイクと申します。そちらで所有しているスーパーロボットが目に入りましてねえ。ええ、ええ、ホントですか? サンキュー!』
電話を切るナイク。
『ワオ! やりました! 先方の所有者がこちらの商談に応じてくれるそうです!』
「おい……この電話の相手って、まさかとは思うんだが……」
疑念を向けるヤスオを制するハカセ。
「しっ! 黙って見てろ。ここからが重要な場面だ」