第40話 第二次潜入作戦 替え玉でゴー! その7
「あ、あれを……なっしか? いやいや、あれ気合でどうこうできるもんでもないでしょ! ……なっし……」
だがヘベレケに酔った兵士たちは聞く耳持たない。
「やーれ! やーれ! やーれ! やーれ! やーれ! やーれ!」
ハカセムナッシーを取り巻いた兵士たちが腕を繋ぎ、足踏みしてシュプレヒコール。ただでさえ疑われているような状況で断ろうものなら何をされるか分かったものではない。
「と、とりあえずやってみるなっしけど、今は疲れてるからあまり期待はしないでほしいなっし……」
ダメ元でトラックに体を預けるものの、やはりびくともしそうにない。兵士たちはハカセムナッシーがトラックをひっくり返すのを信じて疑わない。
その様子は離れて観察していたヤスオたちにも見て取れた。
「一体何やってんだあのオッサン。トラックなんぞを目一杯押してやがるぞ。パニクって頭にきたのか?」
「あれは多分ムナッシーの得意パフォーマンス、軽トラひっくり返しだろう。そういう動画を見たことがある。しかしあんな大きなトラックじゃなかったような気がするけど」
「酔っ払いどもにプレッシャーかけられて無理やりやらされてるってとこか。完全に老人虐待だな。期待を裏切れないオッサンの健気さには目頭が熱くなるぜ」
などと言いながらほくそ笑むヤスオ。
一方、ハカセムナッシーはトラック相手に奮戦中。
「ヌオー! フンヌオーッ!」
火事場の馬鹿力とは大したものでトラックの片輪がわずかに浮き始めた。エールを送る兵士たちのテンションも俄然アガる。テロ組織に正体が割れれば何をされるか分からない。しかもそんなことになればヤスオがいつ、ウェドから起爆装置を奪って起爆させるか知れたものではないという恐怖がハカセの肉体に超人的な力を宿らせていた。
「おーい、ムナッシー。ひっくり返したあとは可愛いポーズも忘れんなよー」
酔っぱらいが気楽な注文を付ける。ハカセムナッシーはそれどころではない。
「ゼエゼエ、勝手なこと言うななっし。こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なっし……」
文句を言いながらもトラックを斜め45度の角度まで持ち上げた。
「ぬおおおおりゃああああ!!」
……ズシーン!!
雄叫びと共にハカセムナッシーが見事、トラックを横転させた。申し訳程度の可愛いポーズを決め、兵士たちが歓声を上げる。




