第37話 第二次潜入作戦 替え玉でゴー! その4
「オラ。さっさと着ぐるみ着ろや」
ヤスオに銃口突きつけられたまま、観念したハカセがナイクとウェドの協力を得てムナッシーの着ぐるみをまとう。
「さあ、これでラストです」
ナイクが頭部をハカセの顔に装着。汗とヤニ臭さと暑さにめまいを覚えるものの、これで見た目は完璧にムナッシーとなったハカセ。
「うっぷ! く、臭い。暑さと臭さと息苦しさでもう死にそうだ。たのむ。出してくれ。こんな状態では5分ももたん」
「情けねえことこいてんじゃねえ。テメエにはこのまま敵のアジトに潜入して情報集めてもらう。なんならついでにタン・バリンぶっ殺してその足でタイヘーン奪い返してきてくれても一向に構わねえぞ」
「無茶なこと言わんでくれ。こんな着ぐるみ着ててタイヘーンの操縦なんかできるわけ無いだろ」
この後に及んで弱音を吐くハカセをウェドが励ます。
「大丈夫ですよ。この着ぐるみには僕が持ってきた小型爆弾を仕掛けてありますから。もし貴方の正体が発覚して捕らえられてもそいつを起爆させますから安心して下さい」
「いや! それ全然安心できないから! それハカセに寝返えらせないための措置にしか思えないんだけど。てゆうか、なに勝手にそんな物騒なもん仕掛けてくれちゃってるの!?」
「俺が指示したに決まってんだろ。テメエ一人を敵地に送り込むほど俺は甘かねえ。裏切った時の用心を怠るわけねえだろ」
徹底したヤスオが銃口を向ける傍ら、ナイクがハカセに注文をつける。
「それにしてもその口調もどうにかした方がいいですねえ。見た目は完璧でもそれだけでは敵の目は欺けません。ちょっと練習してみましょう。はい、まずは語尾になっしーを付けて〜」
「く、下らないことをやらせるな。なんでハカセがそんなことを……」
チャッ。
ハカセが口答えするとヤスオが銃口を向けた。
「……しなきゃいけないなっしー……」
「オウ。なかなかお上手ですよ。でも声がなりきれてないですねー。ムナッシーはもっと甲高い声なのです」
「な……なっしー?」
「いい調子です。でも、もうちょっと高く」
ナイクの背後でヤスオがウェドから起爆装置を受け取る。
「な、な、な……ナッシーッ!!」
「完璧です! あとは同時にジャンプすれば気取られることはないでしょう!」
ナイクが親指を立て、ゴーサインを出した。




