第35話 第一次潜入作戦 メイド・イン・ジャパン!! 後編
「なんだかんだで結局俺がやるのかよ。くじ引きしてもしなくても全く同じだったな」
ナイクにかつらを被せられ、ウェドに化粧を施される間も文句を言い続けるヤスオ。
「馬子にも衣装とは言うが、なかなかサマになってるぞ、荒死郎。……ぷぷっ! こ、これならきっと、うまくいくだろう」
明らかに笑いを堪えているハカセ。
「さあ、できました! この完成度なら成功間違いなし! 荒死郎さん、あとはあなたの演技力次第です!」
そこには家政婦のミタゾノばりにごつい風貌のメイド服ヤスオがいた。
「見てろよ。もし俺が奴らにカマ掘られたら寝返ってお前ら全員殺してやる」
一方、入り口を固める兵士たちは……
「おい、見ろ。怪しい奴が近づいてくるぞ」
一人の兵士が見咎め、全員殺気立つ。銃口の先にはシャナリシャナリ歩く女装したヤスオ。
「動くなー!! このめちゃくちゃ怪しい女め! 貴様一体何者だ!」
一斉に銃口を突き付けられさすがにビビるものの決死の演技を続けるヤスオ。
「うっふ〜ん。アタシ、ニッポンから出張接待に来たメイドのヤスコ。オカエリナサイマセ〜、ゴシュジンサマ〜」
なおも妙な動きで距離を詰めるヤスオ。兵士たちに警戒を解く気配はない。
「でまかせ言うな! ニッポンっつったら買春の国だろうが! それ以上近付くな! マジで蜂の巣にすっぞ! このズベ公!」
全員が射撃態勢に入ってさすがにヤスオも身の危険を感じる。
「わーっ! 待て! これにはいろいろ深い事情がある! 落ち着いて話を聞いてくれ!」
ヤスオがホールドアップしたので尋問タイムに移行。
「なるほど。では貴様はわざわざ不況のニッポンに見切りをつけてここまで商売に来たってわけか」
「そうよ〜 どうせアンタらタダ働き同然で危ない橋渡らされてたぎってるんでしょ〜? 今ならサービスしちゃうわよ〜」
セクシーポーズで兵士の悩殺を試みるヤスオ。だらしなく鼻の下を伸ばした所で銃を奪って全員射殺し切り抜けるというのがヤスオが急遽立てた作戦なのである。が、隙を見せる兵士など一人としていない。
「いや、ここまで来てくれて申し訳ないけど、帰って下さい。だって僕達、女の子なんて必要ないモン」
「……そうっすか……」
かくして、第一次女装潜入作戦は失敗に終わった。




