第31話 タンバリンの男
「それにしてもハカセさん、アナタ達こそ、なぜこんな危険なところへ?」
今度はナイクがハカセに疑問を向けた。
「ああ、実は恥ずかしながら私も同じ目的なのですよ。私もあのロボットがいくらで売れるのか楽しみにして見てたのですが、ラストはナイクさんが殺されてテロ組織に奪われるというなんとも消化不良な結末ではありませんか。いや、それよりナイクさんが殺されて番組が終了してしまうと思うと怒りを抑えきれず、これは元オーナーの私があのロボットを取り戻すしかないと義憤に駆られ、こうして親友の破天荒死郎とはるばるやってきたのです。いやー、しかしナイクが生きててよかった。こんなに嬉しいことはない!」
「オーウ! アナタこそ私の真の友人! やはり持つべきものは信頼できる商談相手です!」
いきなりハカセにハグするナイク。ハカセがヤスオに目配せする。これでこの二人の信用は得た。あとは首尾よくタイヘーンを取り戻し、適当なところで見捨てて逃げるだけだ、と。
「ま、お互いの目的が一致してめでてえのは結構だが、タイヘーンの奪還は一筋縄じゃいかねえぞ。ちょっとは敵組織の情報でも欲しいとこだが」
「それについては僕から説明しよう」
ヤスオの問にウェドがタブレット型端末を出して答える。
「ウェブで調べたんだけど、僕達のスーパーロボットを奪った組織、アレカユイナはかなり危険な組織として世界中からマークされてる。記憶に新しいところでは某国大統領が会見中、いきなり顔面にパイをぶつけられた事件、これも奴らが犯行声明を出している。直近ではやはり某国の首相が空港でいきなり男数名に囲まれキスされた事件。これも奴らの関与が疑われている。そして最も有名なのがケンメリ合衆国同時多発テロ。生放送中のニュース番組にいきなり全裸のオッサン集団が乱入して局部を全メリに放送して複数のニュース番組をジャックするという前代未聞のテロに合衆国が本気で怒って中東と戦争おっぱじめたのは今さら説明するまでもないだろう。実はこのテロの首謀者もこの組織の指導者と言われてる。つまり、それだけ危険な組織ってことだね」
「危険な組織っつーか、愉快犯の集まりの間違いじゃねえの? まあ危ない集団である事実は疑いようもねえけど。しかしその指導者ってのは一体何者なんだろうな」
「そいつならもう面は割れてる。こいつだ」
ウェドが端末に表示された男の画像を見せる。その人物こそタイヘーンを買いに来たターバン男であった。
「こいつが組織の指導者と言われているタン・バリン師。けどこれは本名じゃない。通り名みたいなものと思ってくれて構わない。この男が世界でテロ活動を行い、先進国が懸賞金付きで追っているテロリストだ」
「ふーん。タン・バリン師ねえ……そういや、番組でも意味深にタンバリンを叩いてやがったよな。なんか意味でもあんのかな?」
「噂によるとこのタン・バリン師は人の心を操る術が使えるらしくて、奴が叩くタンバリンの音色には人間を意のままに操る効果があるらしい。この男がタンバリンを叩くと子供が何人もついて行ったとかコブラが壷から出てくるとかいろいろ言われてるらしい」
「ほとんど都市伝説じゃねえか。アヤしい宗教かなんかか? もしそれがホントならこのオッサンからタンバリン奪っちまえばただの役立たずだな」
第31話あとがき
どうも〜。作者です。なんだかストーリーに無理というか、リアリティに欠ける描写が出てきたのでちょいと訂正しておきます。
26話あたりに補足のストーリーを入れときますんで、読者様が脳内で適当に補完して下さい。もちろん、これ読まなくても大筋に影響ありませぬ。
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「しかしだな……今更も今更なんだが、現実的に考えて俺が中東に潜入するなんて不可能じゃねえか? 俺はビザはおろかパスポートも持ってねえぞ。他にもマラリアや性病の予防接種とか受けときたいし。あと飛行機だけはパスな。あんな火薬庫の上空、旅客機に乗って移動なんてゴメンだぜ。それら考えたら1週間でタイヘーン奪還なんてどう考えても不可能だろ。24時間ドラマでもムリだと思うぜ。あ、そうそう。俺は現地の言葉どころか英語さえ分かんねえから。それだけでもう潜入&奪還なんて1万パーセント無理だろ」
が、ヤスオの現実的な危惧をハカセは一笑に付した。
「ふふふ。お前の懸念はもっともだが、ここをどこだと思っている。人類最高峰の叡智を結集したエデン司令部だぞ。我らの『ひみつ兵器開発部門』にかかればそんな問題、障害にすらなりえん」
「ひみつ兵器開発部門だ? なんだよそのファンシーすぎるネーミングは。だいたい言語の問題を兵器で解決できるもんなのか?」
「それができるのだ! 紹介しよう! 我がエデンが誇る兵器開発の頭脳! ……どりるモン! どりるモーン!」
ハカセが大声で叫ぶとハカセの席のデスクの引き出しが開き、中からタヌキっぽい風貌した黄色いロボットが登場。なお、手と鼻はドリル状である。
「こんにちは。ボクどりるモンですぅ〜」
故、大◯の◯代似の声で自己紹介する丸っこい動物型ロボにヤスオが凍りつく。
「彼こそが究極の人工知能を備えた未来型タヌキロボにしてエデンひみつ兵器開発部門チーフ! どりるモン! 彼のひみつ兵器にかかれば言語の問題など一発解決だ!」
「……あんまり触れたくねえんだが、携帯型翻訳機買ってくるから、そのクソ型ロボットは破壊しといてくれね? 綱渡り過ぎにも程があるだろ。何が楽しくてこんな危険なもんを次から次へと繰り出してくるんだ」
ヤスオのツッコミをスルーし、ハカセがなおもどりるモンの自慢を続ける。
「このどりるモンには現代の科学でも解析不可能な兵器を次々出すことができる四次元スポット機能が搭載されており、どんな悩みも解決できる便利兵器を出してくれるのだ! 外国語が分からないなどという瑣末な問題など取るに足りん!」
「その話をどこまで信用していいのか全く見当もつかねえんだけど、コイツのどこにそんな機能が搭載されてんだ。見たとこ腹にポケットらしきもんも見当たんねえぞ」
ヤスオの疑問をよそにハカセが何故か子供っぽい仕草でどりるモンにおねだりを始める。
「ねえ〜、どりるモ〜ン。外国語が分かんないよ〜。何とかするひみつ兵器を出してよお〜」
「もお〜、しょうがないなあ〜」
相変わらず大◯の◯代っぽい口調でどりるモンは口を大きく開け、口中からお洒落なグラスに入ったタピオカ風の食べ物を出してきた。
キュピピピピーン!
「ほんやくタピオカ〜!」
♪テッテレレッテッテーッテッテーン!
妙な擬音とジングルがどりるモンに内蔵されたスピーカーから流れ、辺りがフラッシュで明滅。
「このほんやくタピオカを食べると、誰でも外国語が喋れますぅ〜」
ひみつ兵器のレクチャーをするどりるモン。ヤスオは疑念を禁じえない。
「胡散くせえな。だいたい食い物を口から出すんじゃねえ。で? まさか俺にこの得体の知れないもんを食せと? ちょっとそれはカンベンして欲しいんだが」
渋るヤスオをハカセが宥める。
「信用できんというのか? 言っておくが、どりるモンのひみつ兵器に失敗などありえん。ひとくち食べて即死エンドとか、そんな身も蓋もない強引すぎる展開ないから。安心して食べるがよい」
「その自信は一体どっからくるんだ? じゃあちょっとオッサンがひとくち食ってみろ。それでなんともなければ俺も食ってやるよ」
「……よかろう。それでお前の疑いが晴れるのなら安いものだ」
こうしてハカセとヤスオはどりるモンの出したひみつ兵器「ほんやくタピオカ」によってナイクたちと会話できるようになりました。




