第19話 私の配下は凶暴です
「ちょっとお。なに二人でコソコソ話してんのよ。私をパイロットにするんじゃなかったの? なら早くタイヘーンに乗せなさいよ」
両手を腰に当てて急かすエリザベス。ハカセは一旦、ヤスオと口裏を合わせてやり過ごすことにした。
「まあ待ちなさい。逸る気持ちも分かるが、誰かれ構わずパイロットに任命できるほどスーパーロボットの操縦は甘くない。そこでひとつテストをさせてもらう。なに、そう構えなくていい。ここにいる正パイロット、破天荒死郎と勝負をして、見事勝つことができれば君のパイロット適性を認めよう」
「おい、聞いてねえぞ。だいたいここってそういう訓練施設的なもんってあったっけ? 一体なんの勝負をさせるつもりなんだよ」
「へえ、面白そうじゃないの。確かに、お情けでパイロットにしてもらったって私のプライドが許さないからね。その勝負、受けて立つわ」
疑問を向けるヤスオと乗り気のエリザベスにハカセが人差し指を向けて言い放つ。
「テストはパイロットの度胸と冷静さが勝負を決める、牛乳含んでアップップ対決!」
「なにそれ? なんか名前からしてマヌケな響きなんだけど」
「説明しよう! 牛乳含んでアップップ対決とは! 両者が口の中に牛乳を含んだ状態でにらめっこをし、先に吹き出した方が負けという、情け無用の漢の勝負なのだ!」
「おい爺い、お前脳ミソ沸いてんのか。なんで俺がエリザベスとパイロットの座をかけてそんな深夜バラエティ感丸出しのアホ対決なんかしなけりゃなんねえんだよ」
「いいから! ちょっとこっちへ来い!」
文句たれるヤスオを再びハカセが引っ張り、エリザベスから距離を取る。
「お前はバカか。せっかくハカセが機転を利かせて勝負に持ち込んでやったのに、肝心のお前がそんな調子でどうする!」
「どこが機転だ。そんな勝負やることになんの意味があるんだ。正直にタイヘーンはありませんって言えば済むだろうが」
「よく考えてみろ。そんなこと言ったところであしらってると思われてますます食いついてくるのは目に見えている。この勝負の要諦はあの鼻持ちならない高飛車女を顔面牛乳まみれにして現実ってやつを教え込むところにある。勝負開始と同時にお前があの女の顔面に牛乳をぶっかける。そんでもってあの女は牛乳まみれになって挙句にタイヘーンはないとか言われたらキレてさっさと帰るって寸法だ」
「でもそれじゃ勝負は俺の負けになっちまうじゃねえかよ。そこら辺のケアはどうしてくれるんだ」
「……まあそのあたりの調整はハカセに一任しておけ。お前はあの女に絶妙な感じで牛乳ぶっかけるイメージトレーニングに専念するんだ」
二人の相談がいちおうの落着点に至り、エリザベスの元に戻る。
「ま、いいわよ。どうせなんの勝負したって私が勝つに決まってるんだから。無意味なテストさせたことを後悔させてあげるわ」
レクチャーを受けたエリザベスとヤスオが口に牛乳を含んで仕切る。ハカセがジャッジを務め勝負のカウントを取る。
「♪に〜らめっこし〜ましょ、笑〜っちゃダメよ、笑〜うと負けっけよ、牛乳ふっくんっで、アップーーー」
ブバッ!!
勝負が始まる前にエリザベスが豪快に牛乳を吹き出し、ヤスオの顔面は牛乳まみれにされてしまった。




