第1話 俺が、主人公だ
ガキーン! ゴキーン!
二体の巨大ロボが市街地で金属音を轟かせ、格闘戦を繰り広げる。一機は人類を滅ぼさんとする高次元意識思念体、ベリエザス操るリアル系ロボット、クイーンミダラ。
いま一機は人類最終絶対防衛兵器、スーパーロボットタイヘーンスリー。この二機のぶつかり合いにより、周囲はさながら空爆でも受けた市街地のようであった。
「今週こそ勝ってやるわよ! どっせぇーい! バレンティアグロリアスデスティニーロスインゴベルナブレスデハポンブレェーッッッド!!」
仰々しいネーミングだが、ただの水平チョップである。クイーンミダラのパイロット、女王ベリエザスが操縦桿を乱暴に動かすと機体もそれに呼応し手刀を横薙ぎにするついでに周囲のビルディングもまとめて薙ぎ払う。
「大技来るよ! 早乙女クン、回避行動!」
2号機のパイロット、節喜国ありすが指示を飛ばすと下半身担当の早乙女早苗が応答する。スーパーロボットタイヘーンスリーは3機のメカが合体し、3人で操る巨大ロボットなのである。
「了解! スーパースクワットフェイント! マッスル! マッスル!」
3号機パイロットの早乙女が回避行動に入る。タイヘーンスリーはその場でしゃがみ込んで間一髪、クイーンミダラの大振りを躱す。ちなみに早乙女がこんな物言いをしているのはいちいち説明するのもメンドいのでここでは割愛する。
大振りをスカったクイーンミダラの懐はがら空き。タイヘーンスリーはその胴体に攻撃を打ち込むべく、メインパイロット破天荒死郎が必殺のコマンドを入力。コマンドというのはタイヘーンスリーの操縦システムがゲームのコントローラー状だからである。
「これで決めるぜ! くらえ! ヤスオスーパージェットストリームコークスクリュートルネードサイクロンハリケーンタイフーンモンスーンエルニーニョパァーンチ!!」
必殺技の咆哮と共にタイヘーンスリーの右腕が激しく回転してクイーンミダラの胴体を貫く。ちなみに技名の頭にヤスオと付いているのは破天荒死郎の本名が今北ヤスオだからであり、あとはもうその場の勢いでの適当な命名である。
必殺のスクリューパンチをガゼルパンチ気味に食らったクイーンミダラの巨体は質量の法則を無視気味に上空高く打ち上げられる。
「クイーンミダラに……栄光あれーっ!!」
コクピット内でベリエザスが絶叫すると同時に吹き飛ばされたクイーンミダラが上空で星になる。
チュドーン!!
上空で爆散するクイーンミダラを背にタイヘーンスリーが勝利のポーズをキメる。
「これで9勝0敗1分け。もうまったく負ける気がしねえな」
勝ち誇るヤスオ。ちなみに1分けはクイーンミダラが自爆した初対決である。つまり、これでもう10回、タイヘーンスリーはクイーンミダラを退けているわけなのだが、相手は高次元意識思念体なので翌週には元気に復活して攻撃してくるのだった。