第12話 タイヘーンバージョンアップ計画その2
『私は以前からずっと不思議に思っていました。果たしてスーパーロボットに手は必要なのだろうか? と。リアルロボットなら銃を撃ったりサーベル振り回すので五本の指があるのも頷けます。しかし、スーパーロボットは格闘戦がメインなのです』
「そんなことねえだろ。武器振り回すスーパーロボットは結構いるぞ。いや、それをここで列挙するのは憚られるんだが」
ウェドのトークは続く。
『ヘリウッド映画、パンパシフィック・カムではロケットパンチという素晴らしいアイデアが盛り込まれていました。これは肘からジェットを噴射し、パンチの破壊力を増すという画期的発明です。これによってリアルロボットでスーパー系の必殺技であるロケットパンチを実現したのです。が、やはりこの設定にも無理があると言わざるを得ません。そんな機構をわざわざ腕に組み込むくらいなら腕自体を武器化すればよいのです。映画的演出に口を挟んでも仕方ありませんけどね』
カメラ目線で小首を傾げるウェド。またも巨大円盤カッターを引っ張り出す。
『そこで私はヒラメキました。格闘戦に特化した武器といえばやはりドリル! こいつを置いて他にありません! このロボットの手を切り落とし、見た目にも迫力あるドリルに換装します。少々高くつきますが、これで価値は格段に跳ね上がるはずなので、やる意義は大いにあります』
ギュイーン!!
再び巨大カッターが火を吹く。数刻後、タイヘーンの右手が切り落とされ、どこからか引っ張り出してきた巨大ドリルの配線を適当に繋ぐウェド。
『プロの業者に頼めば10万円はかかる作業ですが、自分でやるのでもちろんタダです。自宅でやる場合はドリルが奥さんに見つからないよう注意して下さい』
「自宅で巨大ロボの、しかもドリルの換装なんてやる奴いねえよ。大体プロの業者って、なんの業者なんだ」
『……さて、これで換装は完了です。意外と簡単でした。では、きちんと作動するかチェックしましょう』
ミュインミュインミュイン。
少しぎこちない、どことなく卑猥な動きでドリルが回転。
『無事、動きました。これで殺傷能力も大幅にアップしたはずです。では、反対の手はワニラー、早い話がペンチ状に換装しようと思います。これで見た目もぐっと上がることでしょう』
「なんだかやればやるほどタイヘーンがますますパチもん臭くなっていってるような気がするのは俺だけであろうか?」
『デッデッデーン、デレレレーン』




