第10話 よろしくメカニック
タイヘーンスリーでそのまま帰国し、いつものガレージ前でクラクションを鳴らすと中からもう一人の番組の顔、ウェド・チョイナが登場。あらゆる車のメンテに精通し、高いレストア技術を持つ天才メカニックである。
『やあ。ただいま、ウェド。どうだい? さすがにびっくりしただろ?』
タイへンースリーから降りたナイクを出迎えつつウェドが感嘆のポーズを取る。
『こいつは凄い。スーパーロボットじゃないか。どこのアニメから抜け出てきたんだい?』
『冗談はよしてくれ。わざわざクァン国まで行って買ってきたんだ』
「クァン国じゃねーよ! 日本だよ! コイツら、アジア圏の国の区別もついてねえだろ。まあ確かにタイヘーンスリーってどことなくパチモン臭いデザインだからあんまり強くは言えねえけど」
『でもちょっと待ってくれよ。僕は車のメカマンなんだよ? スーパーロボットのレストアなんて自信がないよ。悪いことは言わない。大損する前に元の持ち主に返してくるんだ』
『なんだって? 気は確かか? 僕は地球の裏側まで行って買ってきたってのに、その努力をフイにしろって? スーパーロボットをいじれるなんて二度とないぞ。なあに、車もスーパーロボットも同じ乗り物だ。大差はない。キミならできると僕は信じてるよ。君だってホントはいじりたくてウズウズしてるんじゃないのかい?』
『まあね。それじゃ、とりあえずガレージに入れてから考えよう』
「なんなんだよ、この意味があるのかないのかよく分かんない寸劇は。結局コイツらタイヘーンをいじり倒すんじゃねえか」
画面はガレージ内に移り、ウェドがメインを担当。
『ついにこのガレージにスーパーロボットがやって来ました。しかし車のガレージなのでもう満杯です。これまでにない困難なレストアになることは間違いありません。ナイクはこのいまひとつ華のないロボットをハンサムに改造して儲けを出したいようですが、事はそう単純ではありません。なにしろ私はスーパーロボットの整備なんてしたことがありませんからね。まずはどういう構造なのか理解する必要があります』
言い終えておもむろに巨大な円盤状カッターを引っ張り出すウェド。
『とりあえずこれで腕を切断して関節の構造がどうなってるのか確認してみましょう』
『ギュイーン!』
巨大カッターが唸りを上げ、タイヘーンスリーの腕関節に食い込むと同時に大量の火花が散る。
『んんっ! さすがに……スーパーロボットのボディは頑強です。でも、なんとか切断できました』
無残に切り離されるタイヘーンの腕。
『うーん、やっぱり見てもよく分かりませんねえ。腕はひとまず後回しにして、次は足を切ってみましょう』
「思いっきりノープランだな。コイツ、車の整備は天才だけどロボットに関しちゃズブの素人じゃねえか。まあ当たり前っちゃあ当たり前なんだが」
「この場にありす君がいなくてよかった。もしこの映像見たら、いやああ! ボクのタイへーンがあ! とか言って卒倒するとこだ」
「売り飛ばしたオッサンに言えた義理じゃねえけどな。だから俺一人にしか打ち明けられなかったんだろうがよ」
二人がそんなことを言ってる間にタイヘーンの両足も切断される。
「関係者にしてみると見るに耐えねえ映像だ。ロボコップ2のトラウマシーンを思い出しちまったぞ」
「ハカセもなんだか気分が悪くなってきた。こんな連中に大事なタイヘーンをいじられてると思うと背筋が寒くなる」
ウェドが切断面を見て再び頭を抱える。
『ああ、まいったな。やっぱりよく分かりません。仕方がないので切った箇所はスポット溶接でなかったことにしときましょう。
適当に手足を接いでごまかすウェド。




