第9話 栄光なき凱旋
ヤスオのツッコミを余所に番組は進行。タイヘーンスリーが基地に帰還。ナイクをモザイクかかったハカセが出迎える。
『どうでした? 試乗した感想は』
『実に素晴らしかった。とても素敵な体験をさせてもらいましたよ。さて〜商談ですが、性能には満足ですが、気になる部分もないではありません。そこで思い切って、100万円ではどうでしょう?』
「安いなおい! コイツの思い切りは何を基準にしてんだ」
『う〜ん、その値段では売れませんねえ。せめて150万は出していただかないと』
渋るハカセ。
「なに相手のペースに乗せられてんだよ。この50万の上乗せになんの意味があるんだ。お前、番組盛り上げることしか考えてないだろ」
上乗せされて頭を抱えるナイク。
『お気持ちは分かりますが、私にとってもスーパーロボットの買い付けは大きな賭けです。利益が出せるかは甚だ未知数です。そこで間を取って、125万5千円ではどうでしょう?』
握手を求めるナイク。考え込むハカセ。
「考えるまでもねえだろ。さっさと国にゴーホームしてもらえ」
『現金一括払い?』
『もちろん!』
『後でサインもらえます?』
『喜んで!』
ナイクと握手を交わすハカセ。
『やりました! 憧れのスーパーロボットを手に入れましたよ!』
『デッデッデーン、デレレレーン』
「……呆れて物も言えねえわ。もしかすると本当に強奪されたんじゃないかとかちょっとは思ってやってたんだが、本当に予想通り売り飛ばしやがったのか。いや、巨大ロボットを売り飛ばそうとした主人公もいなかったわけじゃねえけど、本当に売り飛ばす快挙を成し遂げたのはテメエくらいのもんだぞ。しかもなんなんだよあの125万5千円って、微妙にリアルなスーパーバーゲンプライスは。どう考えても番組の演出に沿ってるとしか思えねえだろ」
「すまん。ハカセもいまはすごく後悔している。でも世界のスクラップカーブローカーズが買い付けに来たんだぞ? 断るなんて選択肢はありえないだろ。日本くんだりまでロケに来てもらって、それでお蔵入りにでもなった日にはもう二度と来日してもらえないんじゃないかとか、そういうこと考えてたらハカセの一存で断るなんてできなかったんだ。まあ、言ってみれば世界のアドベンチャーチャンネルの知名度にタイヘーンを強奪されたようなもんだな」
言い訳にもならない言い訳を並べ立てるハカセ。番組はなおも続く。




