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『まつろわぬ民』の嫁探し奮戦記  作者: 焚火カレー
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 「ひぃやぁぁぁぁ!」


 「よっと。」


 俺が悲鳴を上げるトモコを抱きかかえて着地をすると、トモコが俺の胸をポコポコと叩いてきた。


 「怖い!怖すぎるじゃない!なんで普通に歩いて行かないのよ!?」


 「え~だってトモコ森歩きに慣れてないし、集団で獣に襲われたら危ないじゃん。」


 そう、最初はトモコの訓練も兼ねて森を歩いて行こうと思ったのだが、体の小さいトモコは当然歩みも遅く、耐えかねた俺が抱えて走り、途中からは木の枝を飛ぶようにして進み、最後に大ジャンプで森の外に着地をしたところだ。


 あのまま進んだら何日も森の中で野営をする必要があっただろうし、そうなると益々危険が増すのは困るので正しい判断だったはずなのに、何故か責められている。


 これも女心という奴だろうか・・・・本当に良く分からない。


 「いい!乙女をエスコートするのは男の役目で、エスコートというのはもっとこう・・・・優雅にやるものなのよ!」


 「エスコートってのが何かは分からないけど、この森は素人には危ないから一刻も早く抜けていた方が良いんだって・・・」


 「う~まあそうかも知れないけど、もう嫌だからね。そんなことより、ちょっと着替え出しなさいよ。」


 「ん?だってまだ1日も経ってないぞ?ああ、そう言えば抱きかかえているときに何か湿って・・・。くんくん・・・・あ!」


 ばっちーん!


 「ばか!ばか!ばかばかばかばかばか!!!!それ以上言わないでさっさと取って来て!」


 トモコが完全に涙目ながらも凄まじい形相で怒気をぶつけてくる。


 明らかに戦闘力なんて殆どないはずのか弱い少女が発する気に俺は完全にビビッてしまった。


 ああ、そういえば凄く強い武闘家だったじいちゃんもばあちゃんが怒ると小さくなっていたな。


 もっとも、トモコと違ってそれはばあちゃんも凄い魔術師だったからかと思っていたけど、もしかしたら単にばあちゃんが女だったからなのかも知れない。


 そんなことを思いながら、これ以上余計なことを言わない内に着替えを取りに行った。


 もちろん、荷物は水筒や携行食とナイフ以外はマイスペースに入れてある。


 水も食糧も予備に作っておいたトモコの着替えもだ。


 大急ぎで着替えを取って来てトモコに渡した。


 「向こう向いてて!こっち見たら絶対に殺すからね!」


 戦ったら絶対俺の方が強いはずなのに、本当に殺されそうな気がしたので大人しく従った。


 「終わったわよ。」


 そう声を掛けられて振り向いたら、顔を赤くして俯いているトモコがいた。


 「脱いだ服はしまっておいて、川があったら洗濯しような。そんなに恥ずかしがるなって。こっちに来た当初は一緒にお風呂だって入っていたじゃないか。」


 「それはまだ私がボロボロだった時でしょ!ばか!大っ嫌い!この服は私が持って行くから!」


 また何か変なツボをついてしまったのか激しく怒られた俺は困ってしまう。


 でも、不思議とそこまで嫌な気持ちはせずに、苦笑しながらトモコの少し後をついて歩き始めた。

アッテ家家訓

『完全個室マイスペースは存在そのものを隠すこと。見つかったら面倒は避けられないのだから。』

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