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『まつろわぬ民』の嫁探し奮戦記  作者: 焚火カレー
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 「さて、これからどうしようかな。まずはトモコの痩せこけた体を何とかしないとね。」


 「でも、お腹空いてないの。。。」


 弱弱しく堪えるトモコだが、恐らく長い間僅かな食事で体を動かさなかったことで空腹に体が慣れてしまったんだろう。


 いきなり脂の乗った肉なんかを食べさせても胃が受け付けないはずだから、最初は果物や蜂蜜なんかが良いだろうか・・・


 幸い在庫がかなりあるので、お茶に少し蜂蜜を垂らしてあげた。


 「甘い・・・・美味しい・・・・」


 胃に負担にならないようにかなり薄い甘みにしたはずだけど、ふうふう冷ましながら涙を目に一杯溜めて一生懸命飲んでるその姿は、とてもじゃないけどこっちも涙なしでは見られない。


 実際の年齢が何歳なのか分からないけど、子供にしか見えない分余計悲しくなる。


 柔らかめで甘い果物を選んで小さく切って食べさせてあげたり、少しだけ外を散歩させたりしたが、直ぐに疲れてしまうので、無理せず眠ってもらうことにした。


 あのゴツゴツとした岩剥き出しの床で何年も寝てきたトモコからすれば、ふかふかとした干し草を敷き詰めた寝床は相当に良かったのか、横になって直ぐに寝息を立て始めた。


 俺は王都への旅と牢屋に入れられていた一月ちょっと(正確には覚えてない)位の間留守にしていた家の点検をしたり、トモコが起きたときに食べられるように食べ物を磨り潰して煮込んだりしながら今後のことを考えた。


 「じいちゃん、ばあちゃん、俺はどうしたらいいのかな?外の世界は最初物珍しかったし楽しかったけど、変な感じになっちゃったし。。。トモコは直ぐには動けるようにはならないだろうけど、こんな危ないところでは生きていくことはできないだろうし。。。家訓をいきなり破っちゃったしなぁ、はあ・・・」


 我が家にはじいちゃんばあちゃんが決めた家訓が実は結構沢山ある。


 今回俺が破ってしまった家訓は『完全個室マイスペースは存在そのものを隠すこと。見つかったら面倒は避けられないのだから。』というものだ。


 トモコさっさと逃がしてやりたいとは早くから思っていたけど、この家訓があったので中々踏ん切りがつかなかった。


 だけど今でも後悔はしていない。


 もし仮に面倒なことになったとしても、その時はその時だ。


 その日から俺とトモコの2人だけの生活が始まった。


 まずは何よりもトモコの体力を回復させるために食事と多少の運動を日々こなしていく。


 最初は大した量も食べられなかったが、徐々に肉なんかも食べられるようになったり、食べられる量も増えてきたりと、元々病ではなかったのでトモコの体は徐々にその力を取り戻していった。


 痩せこけた体に肉がつき、筋肉も戻ってきて活動出来るようになり、時折温泉にも連れて行ってと、まるでばあちゃんが死ぬ前に世話をしていた時のようだった。


 あの時と違うのは、ばあちゃんは弱る一方だったけどトモコは徐々に強くなっていくのが嬉しかった。


 食べる量が増えるとともに、歩ける距離も長くなり、連れていく温泉では明らかに骨と皮しかなかったのが嘘のように肉付きが良くなってきた。


 ただ、最初は一緒に入っていたんだけど、途中から別々じゃないと嫌だと言い出したので、肉付きについては途中までしか分からない。


 この森に逃げて来てから月の満ち欠けが丁度一回りした頃、トモコはすっかり元気になっていた。

アッテ家家訓

『完全個室マイスペースは存在そのものを隠すこと。見つかったら面倒は避けられないのだから。』

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