1:種は蒔かれた
またなんか思いついたので触りだけ
※ほぼ決定稿で書き換え済み
時は世紀末、この世界は広がった───。
この言葉は、そのままの意味の通りでもあり、また別の意味でもある。
これは地球外への進出という意味ではなく、異世界と行き来が可能になったのだ。
この事件を発端に、日本に自らを『使者』と名乗る人物が現れ、神や異世界のあれこれと、転移・転生者、そして多種多様な人種の存在が明かされることとなり、異文化交流ならぬ異世界交流が始まることとなった。
だがもちろん当初は人々の反発は多かったし、そもそも存在が異質すぎる。いくらファンタジーが現実になったとしても、突然すぎて受け入れられる人は当然少なかったのだ。今でこそ、それこそ多種多様な人種が混在して生活しているが、当時はやはりいろいろな事件が発生したようである。
代表的なところでいえば、街一つの住民全員が突如昏睡状態に陥ることになった【悪夢の残滓】、各試合で一番活躍できなかった選手が必ず流血者となる【熱血高校野球】など───そんな不可解な事件の数々。
このような事件を二度と起こさないために、国は未然に解決するべく人材を育成することとした。
そもそもの発端となった、世界が繋がることにより特殊能力を発現した者たちや、元異世界出身者などが、教育施設として設立された【天草学院】に集められたのだ。
全国に5校展開している学院で、ここは大なり小なり力の差はあれど能力のあるものは須らく受け入れられる。そして力を正しく行使するために教育を受け、力を使うことに責任を負える大人になるとともに、特殊事件を解決する人材を育てることをモットーとされている。
と、そんな天草学院の2年生でもある雨宮 恭介は、学期末テストの最後の教科となる試験問題の後半に差し掛かり、ふと違和感を覚えるが・・・とりあえず今は解くことを優先した。
特殊な学校とは言いつつもほとんど普通の高校生活と何ら変わりはない。
そして高校生の夏休みの運命を決めるこの期末テストも、最終的には赤点さえ取らなければいいんだ。しかもこの学校、天草学院の赤点基準はクラス平均の半分という方式。おまけに試験も問題もこれが最終問題だだとわかっている。時間も充分だしゆっくり解けばいいと考えた。
まるで形だけのようにみえるけど、いくら育成機関だといっても学生は学生、勉学が本分だとでも言わんばかりに普通の・・・いや、学校の生徒は全員が特異能力持ちのおかげか少しばかり偏った授業内容を受けている。
その学校の中でも特に扱いの困る問題児たちを集めたクラスがあるのだが、問題児とは言っても素行に問題があるのではなく、能力に問題がある生徒を集めたクラスが存在する。そこに振り分けられる生徒は異世界出身の種族が多い傾向があるらしく、9割が現世人ではなくドワーフやエルフ、または獣人、はたまた魔族やら天使族、しまいには魔物種まで幅広い種族で構成されていいるという、特に混沌としたクラスでもある。
その問題児クラスというのが・・・このクラスだ。そして俺もその一人なんだが、少しばかり思うところがある。その理由は簡単、自身の能力は平凡だからだ。見方によっては少々特化しているかもしれないが、このクラスの連中に比べるとまさに平凡の一言に尽きる。そして、クラスのチートみたいな特異能力を持った連中と比べられることが多いので、他のクラスの生徒からはダメな奴扱いされることが不満といえば不満だ。まぁその分、先にも言った赤点ラインの低さもこのクラス特有なので、プラマイゼロってところで納得はしている。
と、少し話は逸れたが、そんな感じのやつらが集まる特殊クラスというのもあり、テストなんてほぼ形式的なものでしかない、ってことだ。
そうして問題を解いていくうちに残り5問というところで・・・気付く。いや、気付いてしまった。
───解答欄が合わない・・・ッ!
い、いや落ち着け、とりあえず残りは捨てろ・・・ッ!
あとは可能な限りリカバリーだ・・・ッ!
くそっ、さっきの違和感はこれだったのか・・・!
焦り始める頭でぐるんぐるんしながらも、チラリと時計を見ると残り5分。
だが俺にはまだ───、と最終手段を使おうとして、致命的な事実を思い出した。
特異能力が使えない!!
その事実を思い出してしまい手汗が滲み、消しゴムがうまく掴めない。
消しては埋め、消しては埋めを繰り返すうちに、とうとう床に落としてしまう。
・・・諦めるな───ッ!
足掻け、足掻け、足掻け・・・!
認められるか知らないが二重線で消し解答をずらしていく。
そして抗い続けるも、無情にもチャイムは鳴り響き、終了の号令がされる。
教師の一声で後ろから回収されていく答案用紙を眺めながら俺は、人生で初めて・・・神に祈っていた。
ゲームはキャラクリで数日、名前だけで1日とかかかっちゃうタイプです。