呪いを解いてあげる
「僕が醜いなんてこと、きみに言われなくても知ってるよ。」
「同じ生き物じゃないみたい。」
きみは静かにそういった。人の顔をじっと見つめて、何を言うかと思ったら。そんなこと、君にわざわざ言われなくてもわかってた。自分が醜いことなんて。今までだってたくさん言われてきたし、自分で自分に言い聞かせもした。僕は醜いんだから、そこにいるだけで害悪なんだから、身の程をわきまえろ、ってね。
それなのに、自分が醜いことなんてわかっていたのに、どうしようもなく苦しくなった。もしかしてきみは、僕が醜いことに気付かないかも知れないと期待していたから。きみはずっと僕なんかに優しかったから。
喉がギュッと締まって、熱い眼球から涙が溢れて目の前が見えなくなる。必死に隠していたぼくの醜さが、ついに暴かれてしまった、化けの皮がはがれてしまった、仮面が割れた。
きみにだけは、知られたくなかったのに。
「どうしたの?どうして泣くの?」
「だって、きみが僕のこと、同じ生き物じゃないなんて、いうから。」
僕がそう言うと、きみは困ったように笑って、うつむく僕と目を合わせようとする。きみの綺麗な手が、醜い僕の頬に触れる、僕の涙でぬれる。うれしい、でも、放してね、きみまで汚れてしまうから。目をあけると、君はまたじっと僕を見ていた。その瞳は星が燃えるように輝いている。その中に、僕がいる。一緒に輝いている。
「そうだよ、あなたは他の人とは別の生き物みたいにみえる。」
そうして、きみはうっとりと微笑んだ。
「美しくて」
「あなたがかけられた呪いを解いてあげる。」