異変
「いやー、さっぱり晴れましたね!」
「そうねぇ。
昨日までは、あそこの木原川が溢れるんじゃないかって津田さんと話してたんだけど、この分だと心配なさそうねぇ。」
この町は、非常に平和だ。
それはもう、世界で「平和な町ランキング」をつくってもかなり上位に食い込むんじゃないかってくらいに。
お陰様で、俺の仕事である警察は、毎日非常に暇である。
そこの2つ目の角に住む三森さんと世話話をしながら、俺は雲一つない空を見上げた。
「じゃあ三森さん、これから暑くなりますからちゃんと水飲んでくださいね!失礼します!」
「はいはい晴臣ちゃん、お疲れさま。」
広田町は県の南の端にある小さな町で、俺はそこでいわゆるお巡りさんをしている。
警察官であることを証明する警察手帳には、立派に「谷 晴臣」と俺の名前があるが、こいつを有事に使ったことは1度もない。
お陰様で町の人とは随分と仲良くなり、ついに三日前、町で1番気が難しいと有名な玄太郎さんに「晴臣」と名前で呼んでもらえるようになった。
有名な観光地も、素晴らしい歴史も、ましてや大きなスーパーすらないこの町だが、俺はここが大好きだった。
きっと今日も平和に1日が終わるのだろう。
でも、その日はいつもと少し違った。
「晴臣ちゃん!晴臣ちゃん、ちょっといいかしら!」
「三森さん、お家に帰ったんじゃなかったんですか?」
先程までのんびり話していた三森さんが、見たこともないような焦った顔で交番に飛び込んできた。
「どうも、様子がおかしいのよ。」