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第三話

 俺の名前はロイド。


 三十六歳の童貞、つい最近無職になったただのおっさんだ。


 趣味はガールウォッチング。


 現在地、娼館『重なる運命』の入り口。


「よし、よし、今日こそ俺は童貞を卒業するんだ。なに、ただこの扉の向こうへと足を運べばいいだけだ。あとはなるようになる。そう、それだけのことなんだ。その程度のこと、元勇者の俺にかかれば造作もない。さあロイド、お前の勇気を見せてみろ。お前ならできる。頑張れ、頑張るんだ俺!」


 アレン達が宿に入っていったのを見届けた俺は娼館へと足を運んだ。

 そして娼館に着いたのは良いんだが入れずにいる。短くない時間、店の入り口付近で行ったり来たりを繰り返しだ。


「クソッ! 魔王城(娼館)に入るには俺の勇者力が足りないっていうのか……!」


 今も桃色の光を放ちながら威圧してくる魔王城に俺は立ち向かえずにいる。


 二十年も勇者をやっていた俺がたかが建物に負けるのか?

 そんな馬鹿なことがあってたまるか!

 おっさん、認めないぞ!


「ええい! 俺はお前に勝ってみせる!」


 ガッ! と勢いよく扉の取っ手を握る。

 あとはこれを引くだけだ!


『ロイド様!』


 !?


 な、なぜ今この瞬間にお前を思い出すんだ!


 脳裏に甦るは結婚を約束したお姫様の笑顔。


 今さら四十過ぎたババアが出てくるんじゃねえよ! お呼びじゃねえってんだ!


 俺は取っ手を更に強く握る。


 俺は、俺は今日こそ童貞を――!


『ロイド様……』


 脳裏に甦るは結婚を約束したお姫様の悲しげな顔。


「くっ!」


 なんで、なんでお前の顔が浮かんでくるんだよ……。

 そんな顔してんじゃねーよ。


 仕方ない。


 俺は息を吐き、ソッと取っ手から手を離す。


 いいか、これは負けじゃない。戦略的撤退だ。だからよ、次来た時は必ずやお前を攻略してみせるからな!


 俺は魔王城(娼館)に背を向け、来た道を戻り始めた。


 べ、別に度胸がないわけじゃないんだからなっ!


 まあ、その、なんだ、あいつも多分処女なわけだし俺もまだいっかなーとか思っただけだ。


『ロイド様♪』


 通りを歩く俺の脳裏には甘えてくるお姫様の顔が甦っていた。


 ふ、悪くない気分だぜ。





 △ ▽ △


 俺の名前はロイド。


 三十六歳の童貞、つい最近無職になったただのおっさんだ。


 趣味はガールウォッチング。


 現在地、宿屋『賢者の静穏』の天井裏。


 ロリータちゃんの部屋の真上。


 アレン達は個人で部屋を借りたみたいだな。

 穴から見えるのはロリータちゃんだけだ。


 今は修道服から着替えて年相応な、可愛い服になっている。

 確かロリータちゃんは十三歳だったな。俺の年代からしたら子供みたいなもんだな。


 ちなみに今はベッドに腰かけてお気に入りなのかは分からないが大きな白ウサギの人形を抱いて足をパタパタさせている。


 可愛い。


 めちゃくちゃ可愛い。


 あの状態で俺に、「お兄ちゃん」て上目遣いで呼んでほしい。


 ずっと眺めていたいが、俺は他の三人も見なくてはならない。


 ごめんな、ロリータちゃん。おっさん、また見にくるね?


 次は……イザベラか。


 特になんもなし。


 よし、次に……いや待て。ちょっとおもしろそうだ。もう少し見ていよう。


「確かロリータはこうしてるって……」


 イザベラはシャツの上から自分の胸を揉みはじめた。

 正確には揉もうとした、が正解だな。


 あんなペッタンコ、揉めるわけがないだろう。


 イザベラも俺と同じことを思ったのか、顔を真っ赤にし、ふるふると震えながらシャツを脱いだ。


 あいつ、首から上が全部赤いじゃねーか。

 そして俺は笑いを堪えるのに必死で震えてるぞ。


「お、おお、大きくなぁれ!」


 ブハッ!


 お前、俺を笑い死にさせる気だろ!

 しかも揉めてねーし!


 揉めてねーし!


 これ以上はやばい。


 おっさん、堪えきれない。


 笑い声を上げちまうかもしれないからさっさと離れよう。


 イザベラよ、お前はどんなに頑張っても一生ツルペタのまんまだと思うぞ。


 さて、ソフィアさんは寝てるだろうからアレンの部屋か。


 正直、イケメンの部屋を覗いてどうするんだと思うがイザベラのギャグのあとだからなんでもいいか。


 アレンは……どれどれ。


 体を拭いてるみたいだな。


 背を向けてるから後ろ姿しか見えないが傷一つない綺麗な体をしている。


 あいつすげーな。


 前衛なのに全く傷がないとかおかしいだろ。

 もしかしたら、純粋な剣の腕だけなら俺以上かもしれないな。


 それにしてもお前、男のくせに腰がくびれてんのな。

 俺にはそんなもんねーぞ。腹筋は割れているけどな。


 アレンは体を拭き終わったのか、立ち上がり、振り返る。服でも取りに行くのか?


 なっ!?


 おいおい、マジかよ!


 お前、アレンちゃんだったのかよ!


 驚き、固まる俺の視界ではアレンが胸にサラシを巻いている。

 ちなみにアレンに息子はいなかったから本当にアレンちゃんなんだろう。


 服を着て、部屋に備え付けの椅子に座るアレン。


 ったく、今でも全然信じらんねーよ。

 俺、お前のこと完全に男だと思ってたわ。


 うわー、マジか……。女の子だったかー。

 俺、あいつと二人きりの時に下ネタとかバンバン話したぞ。


 なんか、本当にごめんな?


 おっさん、超反省するから。


 まあいいや、とりあえず今日はもう寝よう。


 それにしてもアレンのおっぱい、イザベラよりも大きかったなぁ。


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