これからの世界
「……イカレてるっ!」
クロナが乗ってくれたので、俺は嬉しかった。
そして、全員がデッキからカードをドロー。
初手が揃う。
「先行は頂きま……」
「このゲームにはなぁ……必勝法がある」
クロナの言葉を遮り、俺はつぶやく。
「「「「あきや魔王さん!?」」」」
ノリノリの三姫臣とハナ。
「そう、それは【スマンソ神】を初手でそろえることだ。そうすることで、ゲームは始まらずに終了となる」
「しかし、それはイカサマをして初めて成り立つ必勝法」
「デッキシャッフルは互いに入念に行ったはず……」
「すっげーだぞ!」
ハナとアオイとアカリが続けざまに言う。
「それはどうかな?」
俺は楽しくなって、笑いをこらえることができずにいた。
動揺する三姫臣とハナに7枚の初手を――開示する!
「これが、答えだ!」
開示した俺の手札には、【スマンソ神のミギチクビ】【スマンソ神のヒダリチクビ】【スマンソ神のちん○】【スマンソ神のチクビとちん○以外】の四枚のカード!
「【スマンソ神】が手札に揃った時、ターンプレイヤーは決闘に勝利する!」
俺は高らかに宣言。
すると、小汚いおっさんである【スマンソ神】が、その姿を現した!
「そ、そんな……」
「どうして、こんなことが……」
「ありえない、さすがは、魔王様ね……」
「すっげーだぞ!」
クロナとハナ、アオイにアカリが絶望の声を漏らした。
「この余に逆らった仕置きだ。神の怒りの裁きをその身に食らうが良い。……【スマンソ・スンマセン・ヒップフレイム】!!!」
小汚いおっさんの尻に、黄ばんだオーラが集中。
かつてないエネルギーを感じる……!
そしてっ!!!
ぷすぅ~~~
という、気の抜ける屁の音が聞こえた。
三姫臣とハナがそのおならを食らい、しかめっつらをした。
俺は決闘に勝利した。
「「「「ぐ、っご、がぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっぁあああああああああ!!!!」」」」
その後、なんか三姫臣とハナが大げさに吹っ飛んだ。
……ここでネタバラし。
俺は【創造】のスキルを用いて、【スマンソ神】を手札に揃えただけだったのだ。
楽勝☆楽勝!
「……私の出番は?」
勇子が寂しそうにつぶやいたので、
「……ふぅ、ぎりぎりの戦いだった。ありがとう、勇子。お前がいたおかげで、なんとか勝つこと、がっ……」
そう言って、満身創痍を装って、勇子に向かって体を倒した。
俺の体を抱きとめた勇子は。
「……ッ! 私は、あんたと共には、戦えないのかもしれない。でも、こうして。戦いに傷ついたあんたを、支えることくらいはできるから。だから、今は休んで良いんだよ?」
まんざらでもない感じでそんなことを言う勇子。
フォローはオッケーだ。
これも楽勝☆楽勝!
「……参りました。我ら三姫臣とハナクソ。魔王様に反逆した罪を、この命で償うとします」
「流石は魔王様。……どうか、他の魔族の命までは……」
「すっげーだぞ。……だから、私たち以外の魔族のことは、これまで通り、お願いなんだぞ」
「ご主人様、この愚かな我らの、最後の願いを、どうか聞き届けてください」
三姫臣とハナが、いつの間にか神妙なテンションで俺に告げた。
そして、自らののど元にどこからか取り出した短刀を添えて、自決しようとするのだが……
「【余の命に従え】赦す。これまで通り、余はお主らの王である。だから……生きて余を支えるのだ」
俺の言葉に、手を止める三姫臣とハナ。
そして……
「「「「え?」」」」
揃って、呆けた声を出すのだった。
俺は勇子から離れる。
そうしてから、三姫臣とハナに近づいて、そして……まとめて、抱きしめた。
「「「「ほ、ほぇぇぇ!!!」」」」
三姫臣とハナは、これまた揃って、動揺した。
「……済まなかったな。……寂しかったのであろう? 余のいない毎日が? もう案ずるな、これからは、一緒だ」
俺の言葉を理解したのか、クロナが涙を流しつつ言う。
「寂しかったです。皆がいても、一緒にゲームをしていても。魔王様がいない毎日が、寂しかったですぅ……」
ハナとアオイとアカネも、同じようだった。
みんなして、俺に抱き着き、めそめそとしていた。
はは、こいつらも、中々可愛いところがあるではないか。
「え、ちょ……ええ!? 魔王、一体それってどういうことよ!? 私のことは……じゃなくて! 私たち人類のことは、どうするっていうの!?」
勇子が不安そうに尋ねる。
「そういえば、まだ勇子の告白に、返事をしていなかったな」
俺は、また勇子の元へと歩いた。
「へ、は、あ、え? こ、告白の返事? 今、このタイミング!? ええ??」
混乱する勇子。
しかし、俺はお構いなしだ。
ちょうどいい感じに壁ドンと股ドンと顎クイの三連コンボを決めてから、勇子の瞳をまっすぐに見つめる。
「俺も、君のことが好きだ。……俺の女になれ、勇子。ちなみに、もう拒否権はない」
そして、俺は自らの唇を近づける。
勇子は顔を真っ赤にし、そして瞳を閉じた。
とりあえず、おでこにキスをしておいた。
「……え?」
再び見つめあう俺と勇子。
しかし、今度の勇子の視線は、少々冷たかった。
「む、どうしたのだ?」
「普通、今のは……唇同士のキスの流れじゃないかしら?」
全く……と、不満を露わにする勇子の唇を。
今度は迷いなく奪った。
柔らかな勇子の唇。
甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「ふ、不意打ちとか、卑怯……」
「卑怯で結構。俺は、魔王だぞ?」
「バーカ……」
そんな風にイチャイチャいていると、だ。
「魔王様? これは一体……?」
クロナが言った。
いや、それだけじゃない。
ハナもアオイもアカリも、同じように嫉妬に燃えた目をしていた。
「……案ずるな。余は、お主らのことも……愛しておる」
そういって、代わる代わる口づけを交わした。
全員、とても幸せそうな、それでいて他の者と同じ扱いに不服を抱いているような、そんな感じだった。
すると当然、不満をぶつけてくる者もあらわれる。
「う、浮気よ! な、なによ、ドキッとするようなことして、すぐこれなんて! ひどいわ!」
勇子が泣き顔を浮かべながら言うものの……
「俺は魔王だ。……5人くらい、等しく愛せるし、等しく幸せにして見せよう」
俺が答えると……
「やっぱり、バカ。何もわかってない、私は、一番愛してほしいし、一番幸せにしてもらいたいし。……一番、あんたを幸せにしたいのに」
などと、こちらが「きゅん♡」とすることを言ってきた。
……イ、イカンイカン!
気を取り直して、勇子に向かい合おうとすると……
「待たせたな、魔王!」
「って、あれ? もう戦い終わってる?」
「うん〇!」
現れたのは、ユーシャとオンナーとう〇こ!
「む、魔王様の一大事と聞き、駆け付けたのだが……」
「オッパイロット! 登場!」
「「「「「魔王様―!」」」」」
次いで現れたのは、ウホイと田中と俺が助けた奴隷の魔族。
俺はいったんこのタイミングでマントを勢いよく翻し、おちん〇をこんにちん〇した。
「「きゃ♡」」
とりあえずクロナと勇子が黄色い悲鳴を上げた。
「魔王ちゃんなら、いつかやると思っていたわ……」
「俺のことを忘れちゃ困るぜ、うおぉー!」
冒険者ギルドのおっさんと、ジョリット・ワーキゲまで来ていた!
「旦那、俺たちをわすれてもらっちゃ困るぜ!」
元奴隷商の現メンズブラ商たちも、おしゃれなメンズブラを見せつけながら集合している。
「勇子、おめでと! やったじゃん、魔王落とすなんてさ!」
「あ、明美!? も、もうやだっ! からかわないで……」
勇子の親友の明美も登場だ!
「ふん、いずれまた決闘を申し込む。……それまで、俺以外の誰にも負けるなよ」
ボーボ・ボーイまで!?
「て、てぇへんだー!!!」
そして、いつの間にかのオジサンである。
俺は慌てふためくオジサンに、問いかける。
「して、オジサンよ。何がてぇーへんだというのだ?」
!
「どうやら、騒ぎを聞きつけた全人類が今この場にあちゅまっているようだぜ……!」
相変わらずのオジサン(かわいい)
「何!? 全人類がこの場に!? ……まぁ、ちょうど良い機会だ」
全人類といえば、何億人という数になる。
が、ちょうど良い機会だ。
俺と三姫臣とハナの戦いが終わったことを知ったのだろう、続々とこれまでに出会ってきた者どもを含めた、全人類がこの場に集まったようだ。
こいつらは既に、俺のファンとなっている。
俺は、彼らに向かってあることを宣言するために、【想像】を使って演説台を作り上げた。
傍には、三姫臣とハナ。そして、勇子を侍らせている。
多くの人々が、今俺に向かって視線を向けている。
俺は、堂々とマントを翻して、ご自慢のおちん〇を見せつけながら、告げる。
「聞くが良い、ファンの皆よ! 【余の命に従え】! これからは、平和な時代を創る! 人も魔族も関係ない! 等しく、この余のファンなのだ! ファン同士が争ったら、余は悲しい……故に! 今後は争いをやめ、仲良くすること! 以上!」
俺の言葉を聞いたファンたちは――
「ああ、いつまでも戦っている場合じゃねぇ!」
「魔王の言う通りにしよう!」
「ああ、今日はなんて言い日かな!」
全人類は、俺の言葉を支持してくれた。
なんとも奇妙な光景だ。
魔族と人類が手を取り合い、互いを尊重するのは。
もうちょっと、なんかこう……思うところとかあるんじゃね? とは思ったものの、これで良い。
――俺が勇者学園に通い、ファンを地道に増やし続けていたのは、この日のためだ!
全人類を魔王のファンにする。
そうすれば、人類と魔族との争いを、終わらせることができる。
そう思ったゆえの、行動だった。
そして、それは今、現実となった――
地上の喧騒を眺めつつ。
「このクロナ。いつまでも、魔王様に従います――」
「ご主人様。改めて、忠誠を誓います。ご主人様が下さった、この名に誓って、二度と裏切ることはありません」
「流石は魔王様ね。――まさか、人類と手を結ぶ日が来るなんて思わなかったわ」
「すっげーだぞ! 魔王様、本当に、あたしの想像を超える……あたしは、魔王様に使えることができて、嬉しいんだぞ!」
「……魔王、浮気のことはまだ、整理がつかないけどさ」
傍らにいたクロナと、ハナとアオイ、アカリが口々に俺への敬意を示し。
そして、勇子が俺へと語りかける。
「なんだ?」
応じた俺に、勇子は一言。
「……こんなに素晴らしい世界を、ありがとねっ!」
勇子は、花が咲いたと見紛うほどの可憐な笑みを浮かべて、そういったのだ。
「ああ!」
そして、俺はただ一言をもって、その言葉と笑顔に応じたのだった。
――こうして、永きに渡った人類と魔族の戦いは終焉した。
その立役者の伝説の最強魔王の――おっさんは、この世界のどこかで。
今日も愉快痛快に、エンターテイナーとして、活躍しているのだろう。
(了)
【世界一】とにかく可愛い超巨乳美少女JK郷矢愛花24歳【可愛い】です♡
最後まで読んでくれた読者のみなさん、ありがとっ!
愛花、とーっても嬉しいです(*'ω'*)




