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デスゲーム

「……別にいんじゃね?」

 俺は全裸のまま言った。

 実のところ、全裸の俺もこのゲームには、も~飽きあきだったのだ! 


「「「うぃーっす」」」


 けだるげに言って、彼女たちはバーチャルコンソールを目の前に展開、そしてログアウトのボタンを押した。

 ……のだが。


「あれ、ログアウトできないですよ?」


「あ? 適当ぶっこくな殺すぞ?」


「いやですよ、魔王様。本当のことですよ」


 クロナが俺の右頬をビンタしながらそう言った。

 いや、今何で俺ぶたれたの……?


 ま、それを追求するよりもまずはログアウトのことを確認しなければ。


「おい、アカリとハナも――」


「すでにやってるぞ」


「しかし、ログアウトはできませんね」

 

 二人とも、クロナと同じように、困ったような表情を浮かべていた。


「はー、これだから普段の行いがうんこなお前たちはあかんねん。ワイがお手本みせたるさかい、よう見とき」


 俺の言葉に、三人は無言でこちらを睨んできた。

 おー、こっわー(笑) 

 それらを無視して、俺はバーチャルコンソールを展開し、ログアウトボタンを押す。

 

 ――だが、何も起こらない。


「む、おかしいな……」


 もう一度おす。今度も、やはり同じだ。


「ほら、魔王様! やっぱり私の言ったとおり! 謝って! 私を疑ったこと、謝ってください!」


「確かに、今回は全面的に俺が悪いな。無用に疑ってかかり、済まなかった。……めんごめんご~」


 俺は謝罪の舞として有名な、【めんごめんご~】をした。 


「きゅん! 許しますう、魔王様!!!」


 めんどくさいくろながなんかキュンとしたようだったが、どこにその様子があるのかは不明だった。

 としあえず、話を進める。


「それにしても 一体これはどういう事だろう?」


 俺は|クロナとアカリとハナ(3人のクソども)にそう問いかけた


「このゲームを勧めてきたユーシャたちの罠と考えるのが、妥当でしょう」


 クロナが据わった目で言う。


「私たちにこのゲームをプレイさせている隙に、現実世界の私たちの体を……好き放題にしている、というわけですか」

 

 ハナは心底不愉快そうにそう言った。


「全く、普通にやっても私たちに勝てないからって、こんな卑怯な手でくるなんて、情けない奴らだぞ」


 アカリがため息をついて、そう言った。


「余らが強すぎるのだ、正攻法は無理なのだろう」


 おそらく、彼女らの言う通り、このゲーム自体が雑魚勇者たちの罠なのだろう。ふん、まんまとはめられてしまった。

 戦いでは俺たちの足元にも及ばないが、恐るべき知略謀略である。


 と、ここまで考えて違和感を抱く。

 ……本当に罠なのだろうか? 俺は、どこか心の隅で引っ掛かりを感じたのだ。

 もしも罠であったのならば俺たちはすでに死んでいておかしくない。

 死んでいるのなら、こうしてゲームの中で思考することもできないのでは?

 

 と、言うことは、俺たちは現実世界でまだ生きているということになるのではなかろうか。

 そして、生きているのであれば、殺害以外の何の目的があって、こんな真似をしたのかという謎が発生する。


「……一体、何が目的なんだ?」


 俺の呟きに呼応するように……唐突に空が割れた。

 そして――周囲に警告音が鳴り響いた!


「なんでしょうか!?」

「なんだぞ!?」


 ハナとアカリが、驚いたように声を出す。


「周囲の警戒を怠るな」


「はっ、我が主人マイ・マスター


 俺の言葉にクロナがたまに出る中二病モードで返事をする。

 しばらくの間身構えていると、アラームが止んだ。

 そして、機械的な音声が周囲に鳴り響いた。


「ようこそ魔王御一行様。そろそろお気づきでしょうか? これがただのゲームではないということに」


 ユーシャ一行のだれのものでもない、機械的な無機質な音声。

 俺は、問いかける。 


「ああ、十分気づかされたさ。それで、お前は……何者だ」


「私はこのゲームの案内を務める、ただのシステムです」


「そのシステムがいったい今から何を案内してくれるんだ?」


 俺が問いかけると、自称ただのシステムは続ける。


「このゲームのクリア条件です」


 その声に熱は宿っていない。

 そうわかっている。

 だが、どこか挑戦的にも聞こえる、その声音。


「つまりそれは……」


「ご想像の通り。ログアウトの条件ということです」


 なるほどな、と俺は得心する。

 

「どういうことだぞ?」

 

 アカリが、不思議そうに言う。


「お気づきの通りこの【せいやっ! あらよっと! オンライン】では、ゲームクリアをするまで、ログアウトができない仕様となっております。ログアウトをするためにはゲームをクリアしなければいけません」


「一つ教えてほしいのだが」


「はい、どうぞ」


「もしもこのゲームでゲームオーバーになった場合、俺たちはどうなるんだ?」


 そう、これが問題だ。

 ゲームクリアすれば、ログアウトできる。

 ならばゲームクリアできない場合一体どうなるというのだろうか。


「良い質問ですね。もちろん、答えさせていただきます。簡単なことです。もしこのゲームをクリアできずに、ゲームオーバーとなった場合。現実世界にいるあなた達は……死にます」


 冷たい機会音声が、この時一層冷たく聞こえた。


「そうかよ……まあそんなとこだろうと思ったが」


「おや? 意外と冷静ですね」


「まあそうだな」


 こんな設定の小説は生前色々読んだからな。そんなにもう驚くことはない。


「その方がこちらこちらとしても、面白くなりそうです」


 機械音声がどこかおかしそうに言う。


「これは、デスゲーム。死にたくなければ、死にものぐるいでゲームを攻略することです」


「一体、どうすれば攻略したことになるんだ?」


「このゲームにはこの世界を支配する伝説の魔王がいます」


「俺じゃなくて?」


 魔王といえば俺! 俺といえば魔王!

 というわけで、そう問いかけたのさ、あはぁん!


「あなたじゃなく」


「あ、そう……」


 俺は魔王の中でもナイーブな方だから、ちょっと傷ついた。


「その伝説の魔王を倒せば、ゲームクリアです」


「けっこう長い旅になりそうだな……」


「開発期間の関係で、そんなことにはならないです。2時間もプレイすれば、魔王にたどり着けるはずです」


 システム音声がちょっと照れくさそうにそう言った。


「あ、そう……」


「というわけで、皆さん魔王の討伐頑張ってください。死んでも自己責任でお願いしますね」


「「「「あ、はい」」」」


「それじゃあ私はここでさよなら-」


「「「「あ、はい。さようなら」」」」


 なんか軽い感じでサヨナラーする、システムボイスさんだった。


 

「面倒なことになってしまいましたね」


 クロナが物憂げな表情で言った。


「ゲームオーバーになって、本当に死ぬかどうかはわからない。ただの脅しかもしれない」


「それでも実際に死ぬ可能性があるのなら……ここは正攻法で行くしかない」

 

 ハナが言う。

 俺は彼女の言葉に、返答した。


「腹は決まったな。それじゃ、 このふざけた世界の魔王を、ぶっ飛ばしに行くぞ!」


「「「おー!」」」


 俺たちは、こうして、およそ2時間程度の長い魔王討伐の旅に出たのだった。



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読者の主人公と作者のヒロインがひたすらイチャイチャするお話です!
【連載版】クソレビュアーの俺が美少女作家を叩いた結果→告られました
好評の声が多かったため、連載したよん♡ぜひ読んでください(*'ω'*)
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