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せいやっ! あらよっと! オンライン

「ようこそ、【せいやっ! あらよっと! オンライン】の世界へ!」


 チュートリアル画面っぽいところだ。

 可愛らしいスケが俺に向かって言った。


「まずは、自らが操作するキャラクタークリエイトをしてください」


 ステータスには関係ないのだろうが、性別、職業、様々な衣装、肌の色や髪型、CVに初期装備が選択できるようだった。


 折角のゲームなのだから、普段は絶対に出来ない格好をしよう。

 そう思って、服装を選択。


「とりあえず全裸で」


「その場合職業は【変態】しか選べませんが、よろしいでしょうか」


「背に腹は代えられん」


「かしこまりました」


 俺は全裸の変態になった。


 初期設定では、股間にぎりぎりじゃないモザイクがかかっていた。

 このモザイクも微調整が効いた。

 俺は喜んでギリギリのモザイク、略してギリギリモにした。


 そして、性別と肌の色、髪型は実際のものに近くした。

 初期装備はこん棒。しかも、二刀流だ。

 折角のゲームなのだ、やはり操作するキャラクターの武器は、棍棒に限る。


 そうしていると、


「……む? なんだ、この感覚は……。うむ、そうか」


 俺は一人で意味深につぶやく。

 実のところこの行動に意味はない。

 ただ、キャラクターメイキングにめっちゃ飽きただけなのだ。

 さっさとゲームを始めよう。そう思えてくる。不思議なものだ。

 あれは、俺がまだ魔王と呼ばれる前のことだった――。


 ――そう、俺は無職童貞のヒキニートうんこくずだった。

 聡明な俺は回想することなど何もないな、と思い出したので回想をやめることにしたのである。


「それでは、【せいやっ! あらよっと! オンライン】の世界を楽しんでください!」


 チュートリアルはいつの間にか終わっており、【せいやっ! あらよっと! オンライン】の世界へと没入することになるのだった。


※※※※※


「ほう、これが……【せいやっ! あらよっと! オンライン】の世界か」


 ゲームだと言われなければ分からないような、現実と全く変わらないグラフィック。


 中性ファンタジー風の町並み。

 異世界転生後の世界とよく似た世界だが、驚いたことにスーツを着たサラリーマンも道を行き交うタクシーも、スマホもない。


「オリジナルの世界観を構築したかったのだろうか……?」


 俺は一人呟くと、


「魔王様、おはやいですね」


 と、後ろから声をかけられる。

 振り向くとそこには、いつもとほとんど変わらないクロナがいた。


 違うのは、背中に悪魔っぽい羽が生えていないことと、鎧っぽいものを着ているため露出度が下がっていることだろうか。


 初期職業は冒険者、と言ったところか。


「うむ、オーソドックスなかっこうだな」


「お褒めにあずかり光栄です、魔王様」


 全裸の俺を見ながら、クロナは笑顔を浮かべていった。


「二人ともはやいぞ~」


 可愛らしい声、おそらくアカリだろう。

 その声に振り向くと、パンチパーマにサングラスの髭もじゃおっさんのやくざがそこにいた。


「アカリか。初期職業は……やくざか?」


「ガンナーだぞ!」


 人相の悪い顔で愛嬌たっぷりの笑顔を浮かべるアカリ。軽くホラーだった。


「鉄砲玉だから、ガンナーなのか……?」


 俺は考察する。多分、このゲームの開発者の奴らは馬鹿なのだろう。


「そういう魔王様の職業はわかりやすいぞ!」


「ふふ、そうね」


 アカリがびしっと指を指しながら言う。クロナも笑っている。


「ほう、ならば当ててみるがよい」


「「変態」」


 二人は声をそろえていった。


「ほう、なかなかの洞察力だな、褒めて使わす」


 俺は二人の頭をご褒美代わりになでてやる。


 クロナはぴしゃりと俺の手を払う。

 まるで気安く触るなやキモ童貞が、とでも言いたげな表情で「気安く触るなやキモ童貞が」はい。


 クロナは放っておいて、やくざのアカリは俺の頭ナデナデテクにメロメロ、気持ちよさそうに目を細めている。

 

「すみません、ご主人様。私が最後のようですね」


 残りのメンバーは、ハナだけ。俺はやくざの頭をなでるのをやめた。


「あっ……」


 切なそうな表情のやくざのアカリの声が、聞こえた気がしたが、いったん無視である。


「ふむ、かまわぬ」


 そう言って、ハナの方を向く。

 そこにいたのは、ケロモッチャイーノフのハナだった。一目で分かった。


「ほう、ケロモッチャイーノフか。……スメンロシンスの再現度高ーな、どうなってんだこの処理、すげぇ……」


 俺は感嘆の声を漏らしていた。


「すごいですよね、このケロモッチャイーノフの装備。スメンロシンスもですが、これ。チェヤンパポンスモが、これほんとすごいです!」


 控えめに言いつつも、興奮した様子を見せるハナ。

 確かに、彼女のお尻あたりにあるチェヤンパポンスモは圧巻のクオリティ、いや、ケパンチョ風に言えばコロモンスだった。

 等身大のフィギュアになってくれたら……そう思わずにはいられない。


「……ふん、ハナのくせに生意気です!」


「すごいだぞ!」


 クロナとアカリもなんか思うところがあるのだろう、なんかね。


「よし、それでは最初に配られたウホ(ゲーム内通貨の単位。ここでも1ウホ=1ドル位の価値だと思われる)を使って、装備を調えしだいフィールドに出ようか」


 自由度の高いゲームであることはなんとなく察することが出来る。

 なればこそ、万全の用意をするのだ。


「「「はいよ!」」」


 元気よく返事をする三人。

 そして、おのおのアイテムショップや武器や、防具屋に入っていった。



 一点豪華主義の俺は、最強の攻防一体の装備を手に入れた。

 だいたい5ウホ位だった。

 残りのお金で俺は仮想通貨を買った。これで寝て起きたら俺も億万長者の仲間入りだ。



「よし、装備は万全だな!?」


 再集合した俺たち。


「「「はい!!!」」」


 元気よく返事する|クロナとアカリとハナ(三人の馬鹿)ども。

 ……はい。こいつらは馬鹿でした!


「ちょっと待て、馬鹿ども。その装備、なんだ? ……まず、クロナ!」


「え、私ですか?」


 クロナはきょとんとした表情で返答する。


「ああ」


「なんだと言われましても。……フライパン、ですが」


「なんっで、フライパン装備してんのお前、モンスターに料理されてぇのか?」


「やだ、魔王様のエッチ……」


 ぽ、と頬を赤らめて身をよじる馬鹿。その馬鹿に可愛らしいジト目を送る可愛い俺。


「いや、至って真面目ですよ。両手武器で、攻撃力も攻撃範囲も広く、また防御用の盾としても使える、攻防一体の武具じゃないですか」


「!」


 俺は驚いた!

 確かに、フライパンは攻防一体の武具だ!

 こんな簡単な事実に、今更気づかされるとは……

 やれやれ、全く。

 俺もまだまだ修行が足りぬ、ということか。


「すまぬ、クロナ。余が至らなかった。許してくれ」


「二度となめた口効くなよ」


「あ、はい……」


 クロナの件はこれにて一件落着。


 次は……。


「はいアカリちゃん。とりあえず言い訳を聞こうか」


「ゲームキュー○だぞ!」


「見りゃわかるわ、馬鹿にしてんのか!?」


 そう、ガンナーのアカリは、両手にニンテン○ーゲームキュー○を装備していた。


「ちなみにディスクはこれ! 大乱○スポーツブラジャーズ!だぞ!」


「へいそこ、変なところを伏せ字にするのはやめるのだ」


「大乱闘だぞ? 変じゃないぞ? ……あっ、魔王様、とんだスケベ野郎だぞ……」


 にしし、と気味の悪いやくざスマイルを浮かべるアカリ。


「……べ、べつにスケベじゃねーし」


「ふーん?」


 にやにやと気味の悪いやくざスマイルを浮かべるアカリ。


「だかっら、スケベじゃねぇっつってんだろ、ああ?」


「はいはい、大乱交大乱交。全く、やれやれだぞ、魔王様?」


 ニヒルな笑みを浮かべるやくざ。


「も、もーっ! 言うなよ! 変なこと言うなよ……もいーっ!!」


 俺はおこだった。


「ま、それはいい。……ていうか、それ、一体どこで買ってきたんだ? ここの開発者はやっぱり馬鹿なのか?」


「HARD○FFでジャンク品が2ウホで売ってたぞ」


「はい馬鹿ー。お前も開発者も馬鹿ー。普通の装備買ってこーい!」


 俺があっかんべーをしながらアカリに言うと、だ。

 無言でゲームキュー○で殴ってきたのだ。アカリがだ。


「いって……いや、だめだろ、暴力に訴えちゃだめだろ」


 俺がガチのトーンで言っても、だ。

 無言で殴りかかってくるのだ、アカリがだ。

 俺の視界の端に移るHPゲージがもりもり削られるのだった。


「わ、分かった。強力な武器なのは分かった。だからもう良いから、な? 殴るのはやめよう」


「……分かればええねん」


 アカリが関西弁で呟いてから、俺の顔につばを吐きかけてきた。

 もうやだ、何こいつら、魔王様のこと舐めすぎ……!?


「はい、最後ハナ。……なにそれ?」


「チェエッカポーンモです」


「いや、わかんねぇよ」


 ひどく前衛的なデザインの……なにこれ、尻? を両手に持つハナ。


「てかさっきはノッたけど、ぶっちゃけケロモッチャイーノフってのも意味分かんねぇし。……もうお前については突っ込むのも野暮だから触れんとくわ」


「……もう、ご主人様のいけずっ!」


 キャラじゃないことを言い出すハナ。なんだったらキャラが固まってないまである。


「……ま、こんな馬鹿どもだが、いないよりかは役に立つかもしれぬな。それでは、ダンジョンに潜るとするぞ!」


「「「まてまてまて~い!!!」」」


 三人がまてまてまて~い!!! と言って、俺を待て待て待て~い!!! した。


「は? 何?」


 俺は待ってあげた。

 なぜなら、女性には優しくしろって、生前俺が脛をかじり続けていた母ちゃんが言ってたから。


 少し間を開けてから、三人が意を決したように、口を開いた。


「「「飽きたしログアウトしていいですか?」」」


 馬鹿どもが口を揃えて言ったのだった――。

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読者の主人公と作者のヒロインがひたすらイチャイチャするお話です!
【連載版】クソレビュアーの俺が美少女作家を叩いた結果→告られました
好評の声が多かったため、連載したよん♡ぜひ読んでください(*'ω'*)
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