表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/28

数字のマジック

「ぃよっし、それでは奴隷の競り市に赴くとしよう」


「はっ。我はどこまでもご主人様についてゆきます」


「うむ、ついてくるが良い、ハナよ」


「……ッハイ!」


 ハナと呼ばれたことが嬉しかったのだろう。

 可愛らしくはにかんだハナクソ。

 ふん、可憐な少女には、笑顔が良く似合うというものだ。

 

 そのあと俺はジャンプをした。

 編集点を作るのだ。

 そうすることで……この通り。

 着地をした瞬間には目的地である奴隷市へとついているのだ。

 なんと便利なことだろうか。


「ふぅ、龍の姿だとあっという間でも、人の姿だと中々時間がかかりますね。……ところでなぜジャンプをしたのですか、ご主人様?」


 コクリ、と首を可愛らしく傾けながら問いかけるハナ。


「あ、うん。別に」


 ふう、やれやれ全く。空気が読めないやつだ。

 俺は気まずい表情でそう言ったのだった。


「さぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい! 今日は活きの良い奴隷がいるよー!」


 奴隷市で一際大声で客寄せしている、メンズブラのみ身に付けたち○こブラブラのおじさんに、俺は「あらよっと!」声を掛けた。


「ご主人、魔人の奴隷はいるか?」


「お、旦那。魔人がご入用ですかい? どうぞ、こいつらです」


 おひょい、という掛け声を発した奴隷商。

 魔人の奴隷が10数人程現れた。

 皆子供であり、ウヒョウ! 子供である。

……現代日本人の感覚が強く残っている俺は、子供が奴隷として売りに出されている現状に、強い忌避感を抱いた。


 この忌避感は、中々抱き心地が良い。俺は寝るときはいつもこいつ抱きしめている。

 ……恥ずかしい話、こいつが無いと俺はなかなか寝付けないのだ。


「一人なんぼなん?」


 俺は商人の町大阪で育った経験を活かし、関西弁を使って聞いてみた。

 しかし、残念ながら俺が大阪で育ったのは嘘なのだ。

 だからただの似非関西弁を話す奴なのだ、俺は。


 ……果たして。

 この選択が吉と出るか、凶と出るか。

 

「奴ら、生命力は強いが、やはり中々イメージが悪くて、中々引き取り手がいなくて困ってたところです。旦那がまとめて買ってくれるというのなら……安くしときますぜ」


「ほう。……他の奴隷を見たところ、相場は2,000ウホ、といったところか」


 因みに「ウホ」というのはこの国の貨幣の単位であり、大体「1ウホ」=「1ドル」だった。

 こういう時は日本円に合わせるのがお約束のはずだが、妙なところでオリジナリティを出そうとする異世界だった。

 ……ほとほと呆れるのである。


 更にちなみに。


 ハナのクエストを正規に達成していた場合は100,000,000ウホの報酬がもらえていたらしい。

 ……ギルドのおっさん、がめつすぎだろ。


「それは人の奴隷の場合の相場ですね。魔人は1,500ウホ程が平均相場ですが……在庫すべてである17人を購入して頂けるのであれば、一人当たり1割値引かせていただいて、端数を切り落として……30,000ウホでどうでしょう?」


 俺は「えーと」と呟きながら指を折って数を数える。……振りをする。

 おそらく、俺を見た商人はこの俺の行動を見ることで、「金勘定もできないカモ」と思っていることだろう。

 現に、やや戸惑った表情を浮かべているではないか。


「高い」


「ふぅ、まったくやれやれ。旦那、こっちはこれ以上まかりませんぜ?」


「ならばこれはどうだ?」


 俺はマントを翻し、ご立派なちん○んを奴隷商にご覧あそばせる。


「……っ! 良いモノ見せてもらいましたぜ、旦那。2,600,000ウホだ、これ以上はまかりません」


「ふむ。買った」


 俺はにやり、と笑う。

 ふん、所詮は程度の低い異世界人。

 金勘定もままならない、か。


「お言葉ですが、ご主人様」


「む、何だハナ?」


「1,500ウホの17人だと、25,500ウホになります。そこから1割値引くと22,950ウホです」


 俺は今度は時間をかけて、下手なミスをしないようにちゃんと計算をしてみた。

 ……やべ、恥ずかしいミスをしてたぞ、俺。


「……は? し、知ってたし。俺はお前が間違いに気付くか試しただけだし? ……よくぞ気が付いたな、ハナよ。大儀であった」


「あ、はぁ」


 俺のことを心底馬鹿にしたような目で見下すハナだった。


「……あ、ほんとだ。っべー、適当ブッコくもんじゃねぇな……」


 奴隷商が白目を剥きながらそう言った。

 何故白目を剥いているか、それが問題だ。

 いや、問題ではない。白目を剥いているのはおそらく気持ちいいからだ。

 そうに違いない。魔王の目の前で一人勝手に気持ち良くなりおって……不敬である!


 俺はもープンスカプンプン! 怒ったぞー!


「【余の命に従え】! ここの奴隷、僕にチョーダイィッ!」


「はーい!」


 右手で挙手し、左手で脇を隠すファイティング挙手スタイルが完璧な奴隷商だ。

 思わずその左手に隠された脇を舐めたくなるはずがないのだ。


「さて、ハナよ。これが基本的な交渉術だ。相手に侮らせ、油断を誘う事で最終的な利をわがものとする。……お主も我が魔王軍の兵であるのならば、覚えておいて損はあるまい」


「あー、はいはい」


 と、俺の言葉を鼻で笑うハナクソだった。


 クソが、うぜー。

 俺はハナに向かって唾を吐き捨てるが、ハナはそれを避けた挙句俺に対して情け容赦のない右ストレートをお見舞いしてきた。

 割と痛くて、俺は蹲ってゴホゴホ言っていたら、そのまま胸ぐらを掴まれて無理やり立たせられた。


「あんまいきんなや」


「サーセン……」


 ハナが俺に唾を吐きかけてきた。

 俺はそれを甘んじて受け、そのあとマントの裾で拭った。


「さて、茶番はここまで……ここから先が、ある意味本題だ」


 俺は気を取り直して言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

読者の主人公と作者のヒロインがひたすらイチャイチャするお話です!
【連載版】クソレビュアーの俺が美少女作家を叩いた結果→告られました
好評の声が多かったため、連載したよん♡ぜひ読んでください(*'ω'*)
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「それは人の奴隷の場合の相場ですね。魔人は1,500ウホ程が平均相場ですが……在庫すべてである17人を購入して頂けるのであれば、一人当たり1割値引かせていただいて、端数を切り落として……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ