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四人目の仲間と遺跡調査

 全裸の団長、狂信者の司祭、毒舌盗人、俺の周りにはろくな冒険者がいない。

 そんなろくでなしが突如、酒場に集められた。


「まずはクラン加入に感謝する」


 ちゃんと服を着た団長が恭しく頭を下げた。

 服着られるんだなこの人……。


「改めて我がクランの方針を伝えておく。某達ルイン・シーカーは遺跡に眠るお宝を集め、魔王に対抗する力を集めるのが目的だ」

「お宝?」


「前時代の遺物には今の時代では再現出来ない強力な武器や防具だったり、古い魔法を蘇らせる魔導書がある。ちなみにそういったお宝の解析は、セラ嬢が受け持ってくれているので、何か見つけたら店に売らず、セラ嬢に渡して欲しい」


 セラがそんなことをやっているとは知らなかった。

 そういえば、小さい頃は冒険に誘っても怖がって行かなかったのに、随分と成長したんだな、と思う。


「トワ、よろしくね」

「あぁ、良いお宝が見つかると良いな」


 セラは少し嬉しそうに頷くと、ファナディルには一目もくれず、団長に話を進めるよう言った。

 まぁ、スルー安定だよな。

 でも、本人が絡んできたら止めようが無い。


「なるほど。では、団長質問があります」

「言ってみろ。ファナディル君」


「解析した道具は皆の共有財産になるということですか?」

「その通りだ。各人の個性に合わせて、使える道具を分配する。もちろん、事前に皆に道具の使い勝手を試してもらった上でだ」


「なるほど。理解しました」


 嘘だろ? ファナディルと団長が普通に会話しているだと!?

 これがあの全裸の変態とミリアたんと呟き続ける狂信者の会話なのか!?

 この二人が分かり合えるなんて、世の中本当に分からない。


「トワ、何だその顔は?」

「ファナディル、お前、普通の会話出来たんだな……」


「君は本当に失礼だな」

「俺以上に失礼なやつがいたと思うんだけどな……」


 セラの毒舌にさらされて何ともないのに、俺の言葉に反応するのは一体なんなんだ。

 あぁ、ミリアという餌のあるなしか。

「私語はもうキリがついたか? とりあえず、これからお前達には森の中にある遺跡へと向かって貰う。石塔の森という場所だ。案内はセラ嬢頼みます」


「任された」

「噂じゃ、古代文明を一夜で滅ぼした古代龍がいるとかって話しだが、まぁ、誰もみたことがないし、大丈夫さ」


「大丈夫。逃げ足は速いから」


 セラが頷くと、オルラン団長は満足そうに酒をあおり、服を脱ぎ捨てた。


「んじゃ、後は頼むわ」


 やっぱり、こうなったか。

 はぁー、この一瞬でも団長らしく思えたのがバカらしいぜ……。


「すまない! 寝坊した!」


 慌てた声とともに扉がバンと開かれ、黒髪にお下げをぶらさげた少女が飛び込んできた。

 寝坊したということはここの関係者なのか?


「フーラン、遅い」

「ごめんセラ!」


 どうやらセラと仲が良さそうだけど。


「この子はフーラン、アストラル・コードはアークウィザード。魔力だけはある」

「よろしく頼みます。フーランです」


 おぉ、ちゃんとした挨拶が出来るなんて、初めて常識人に出会えた気がするぞ。

 あれ? おかしいな涙が出そうだ。


「あぁっ! 君がセラの未来の旦那様のトワ君だね!」


 フーランはそういってファナディルの手を取っていた。

 しまった。挨拶が遅れたせいでいらぬ誤解をさせてしまった。


「いや、僕は――」

「コラ、トワ君はセラのお婿さんになるんでしょ? ダメだよ? 他の女なんて見せびらかせちゃ」


「だから、僕はファナディルという名前が」

「トワ君……そんな嘘をつく人だったなんて……軽蔑するよ?」


 おかしいな。何故か全く関係無いところで好感度がガタガタ下がっていくぞ……。


「トワ、気付いたかしら?」

「ああ」


「フーラン、私達より二つ年上なのよ?」

「嘘だあ!? って、そっちか。てっきりまた残念な人が現れたのかと思ったよ!」


「頭さえ病んでいなければ、こんな思い込みの激しい子にはならなかったはずなのに」

「やっぱり残念な人なのね……」


 バカの予防はこの子のことだったんだろうな。

 それにしても、あのファナディルが押されるなんて、これはこれで面白いから良いか。

 話が通じない者同士、お互いに牽制しあえば、俺に被害は来ないだろう。


「そうか! 君もミリアたんの愛に目覚めた同士か!」

「ミリアちゃんかわいいよねー」


「そうだろう! あの笑顔と清らかな心に触れて、愛に目覚めないものなどいない!」

「美味しそうにお酒飲むんだよ。この前はタルを開けてた」


「そうです! ミリアたんの愛はタルなんかに収まりきりません!」


 何か間接的な被害があった。

 このかみ合わないのに仲良く談笑している感じがすげー気になる。

 なんなのこいつら同じ言語でも違う言葉を話しているの? ってくらいにかみ合っていないのに、何でこんなに楽しそうなの!? 俺がおかしいのか? って思えてくるだろ!?


「こんなんだから、フーランも誰ともパーティ組めなくて、独りぼっちだった」

「だろうなぁ……」


「私もこっちだと独りぼっちだった。ファナディルもそう」

「……そっか」


 確かにセラは人見知りで友達付き合いが得意じゃなさそうだしな。

 でも、独りぼっちが辛い事を知っているから、フーランと友達になって、ファナディルを拾ったのか。

 何だかんだ言って、セラって意外と世話焼きなんだな。

 随分毒舌になったけど、そういう所は昔のまんまで少し安心したかも。


「……初めて一緒に探索した時のトラウマは二度と忘れないと思う。それから私はフーランを保護することに決めたの。遺跡を守るために」


 ただでさえ白いセラの顔が青ざめて、ガタガタと震えだした。


「何があった!?」

「あらゆるトラップを踏み抜き、眠っていた魔物を起こしたせいで何度も死ぬ目にあい、あげくのはてには遺跡を爆砕しかけた」


「マジで何があった……」


 何その怖い前振り。

 これから遺跡調査にいくのに、そんな危険な子を連れて行って良いのか?


「ただ、使い方を覚えれば、隠し扉を見つけたり、隠したから箱を見つけたりしてくれるから、近づかなければ大丈夫」


 なんで俺の周りにはこうも残念な人が増えていくんだろう。

 その一癖二癖のおかげで強いんだろうけど、それ以上に俺の精神が削られていく気がする。

 こうして、俺はこんな変な人達とともに初めての冒険へと出かけることになった。

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