修行開始?
主人公の名前変えました。
あれから、5年が経った。
この5年間で無事言語を理解した。そして、わかった重要事項が四つある。
まず、一つ、ここ異世界だ。あり得ないと思ったが、転生してる時点で今更かと納得もしていた。
切っ掛けは四歳のとき。食卓に竜の首が出てきたのだ。滅茶苦茶ビックリして、口を鯉のように開け唖然としてしまった。だってよ竜だよ竜、ファンタジーの定番にして最強の生物だよ。それが調理されて食卓にあがるんだよ。驚かないほうが無理ってもんだ。
二つ目、この周辺には俺と爺ちゃん以外の人が一人もいない。というより完全な未開地だ。周りは山と森に囲まれている。一人で出歩くのは危険そうだ。遭難したらアウトだ。
三つ目、魔物がいる。いや、まあ、竜がいる時点で想像は出来ていたけど。爺ちゃんにおんぶされて外に出てきたときに遭遇した。めっちゃ強そうで怖かった。
最後、この爺さん半端なく強い。いや、竜の首を食卓にあげている時点で想像してしかるべきだった。俺をおんぶしながら、襲い掛かって来る魔物を素手で仕留め、食料にしやがった。爺さんの「もっと出て来んかの〜。」という言葉が耳に残っている。
そんなこんなで色々度胆を抜かれることばかりであったが、流石に慣れ、爺ちゃんがとってきた魔物の解体を手伝ったりしている。
そして、とうとう五才になった俺ことクロウ(爺ちゃんが付けてくれた)は魔物などの身の危険から守るために爺ちゃんから修行を付けてくれることになったのだ。
「修行を始める前にまず『魔力』について教えようかの。」
「魔力ですか?」
「そうじゃ、魔力は一人一人必ず持って生まれてくる。個人差はあるがの。」
「へぇ、誰にでもあるんだ。」
「それどころか魔物や植物まで待っておる。まあ、それは今はいいじゃろ。魔力はな色んな力を持っておる。例えば、体を強化したり、炎を生み出したりな。・・・ほれ。」
そう言って、爺ちゃんは指先に魔法陣のようなものを浮かべ小さな蝋燭ぐらいの火をだした。
「これは魔術といっての魔力と術式を使って発動させる技術じゃ。儂には魔術の適正がなくて生活魔術しか使えないがの。」
「え?じゃあ何を教えるの?」
「それはの、『魔力強化』じゃ。」
「魔力強化?」
「そう、魔力強化じゃ。よいかクロウ、魔力強化は奥が深いぞ。極めればとても凄いのじゃ。しかし、近頃の若造は魔術にばかり傾倒して全然わかろうとせん。『魔術のほうが遙かに優れてる。』などと言って全く取り合わん。だいたい・・。」
「あ〜、爺ちゃん、魔力強化を使うにはどうしたらいいの?」
ほっといたら愚痴で話が長くなりそうだったので、途中で中断させた。
「お!そうだったなの。まず最初は己の魔力を感じることからじゃ。これができないと何も始まらん。姿勢は何でもよい、自然体になって、己の中に意識を集中させろ。」
自然体と言われて真っ先に思い浮かべたのが座禅の姿勢だったので、その場に座り座禅を組む。己の中と言われてもよくわからないので、自分を海に見立て、潜るイメージで奥に進んでいく。すると、何か体の中心、腹の中に温かい塊があるのがわかった。
「む!感じ取れたか、ずいぶん早いの(一週間は最低かかると思っておったのじゃが、まあ、よいか。)。」
「うん、なんか温かくて不思議な感じがする。」
「そうか、そうか、では次の段階に進むとしようかの。」
「はい。」
「よいか、クロウ、魔力を使うにはの、まず魔力の硬直を解いて緩めなければならん。」
「魔力の硬直ですか。」
「そうじゃ、クロウも感じたと思うがのクロウの魔力は氷のように固まっておっての全く動かせん。だから溶かして水のように流れるようにしなければならんのじゃ。」
「うん、どうやって溶かすの?」
「なに、かんたんじゃ。」
爺ちゃんはそう言って俺の腹、丁度魔力を感じた辺りに手のひらをあてた。
「痛いけど、我慢するんじゃぞ。」
「へ?」
ズドン!!
そんな音が丁度当てはまるような衝撃がきた。その衝撃は腹のあたりに感じられる魔力の塊に響き揺らす。そして魔力の塊が溶けていくのを感じた。かなりの衝撃で腹をハンマーで殴られたかのような痛みが走る。
しかし、それだけでは収まらなかった。魔力の塊が溶けたのと同時に、まるで決壊したダムのように体中に魔力の濁流が押し寄せる。
「アアアアアア!!、イテエエエエエエエ!!」
まるで引きちぎられそうな痛みが全身に走る。そしてあまりの痛さに俺は気を失った。
◇◆◇◆
「な!なんじゃ、この膨大な量の魔力は、しかもこの魔力、まるで四つの別々な魔力が合わさったような・・・・ハ!クロウ!!」
あまりのことに茫然としていたものの、急いで気絶したクロウに駆け寄った。
今回ベルスがやったことは、魔力の塊に魔力による衝撃を与えて表面だけを溶かすという手法。痛みを伴うが害は無くすぐに収まる。
しかし、クロウは膨大な魔力を持っていた。そのため、魔力が器から漏れ出し、体内を縦横無尽に駆け巡ったのだ。
ベルスはクロウの体に手を当て、異常がないか確かめていく。魔力強化というより体内魔力操作を極めると人の魔力の性質や流れに敏感になるため、ある程度のことはわかるのだ。
(ふむ、『魔力経路』が出来ておるな。まあ無理もない、あの量の魔力が一気に流れてきたのじゃからな。・・それにしても表面の魔力だけであの量と質、全部塊を溶かし切ったら一体どれ程になることか・・)
「しかし、この魔力、人族のではないな。獣人か?いや、他にも感じるの。・・これは!!」
魔力には個人の違いとは別に種族によっても特徴がある。例えば獣人であれば、身体強化に適した魔力を持つし、エルフであれば精霊に好かれる魔力を持っている。ついでにいえば人族の魔力は特徴がないことが特徴である。
「いやはや、これはとんでもない拾い者じゃったわい。儂一人では手に負えぬな。あやつらを呼ぶか。適任だろうしの。」