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震えよ、山賊達! 最強部隊、コラール隊!

「ぐ……あぁ」

「おい、しっかりしろ! ……クソ、あの化け物どもめ」


 暗い森の中を山賊達が歩く。

 拳士達に酷い目に合わされ、命からがら逃げ出してアジトに帰ってみれば、そこも熱線眼により壊滅させられていた。

 絶望の中、何とか瓦礫の中から生き残った仲間達を連れ出すと、彼らはしばらく滞在する為の拠点にしようと、ある村を襲撃する事にした。


「おい、本当にこっちの村でいいのか? もっと近くに襲いやすい小さい村があっただろ?」

「馬鹿野郎。まずは出来るだけあの化け物どもから離れるのが先決だ。襲うのは、あの化け物どもがいた村から一番遠い村だ」


 エリゼ達の襲撃予想は外れていた。

 山賊達は襲いやすさよりまず何よりも、拳士達の危険性を重要視していたのだ。


「…………おい」

「あん?」


 すると、山賊達の前に二人の人影が。


「うわ、本当にこっちに来たよ」


 一人は、薄い水色髪のサイドテールの少女。

 少しキツそうな目元が、驚きによって大きく開いている。

 大きく開いているのは目元だけでは無く胸元もで、その大きな胸の谷間に、山賊達の目線がつい引き寄せられてしまう。


「ねー、絶対あっちの村だと思ったのに。今日は驚いてばっかりだよー」


 もう一人は、肩までの長さの白髪ショートヘアーの少女。

 年相応に子供っぽい顔立ちと口調で、緊張感も悩みも何も無い、のほほんと毎日気楽に生きてそうな表情をしている。


「こ、こいつら……」

「嘘だろ……」


 そんな少女達の姿を見て、山賊達の顔色が真っ青になる。


「コラール……隊だと?」


 まさかと思い後ろを振り向いて、一人の山賊が悲鳴を上げた。


「ひぃぃいい!」


 気配は全く無かった。

 物音一つしなかった。

 なのに、後ろは既に血の海だった。


「赤鬼!」


 血の海の中に立つのは、赤黒い醜悪なデザインの鎧を着た、一人の戦士

 左手で相手の顔を後ろからわし掴み、声を出せない様に口を塞ぐと、右手に持った剣で腹を背から貫く。

 そうやって後ろから順に一人づつ殺していっていたのだ。

 山賊達の疲労と動揺のせいもあったのだろうが、何より赤鬼の手際が良すぎて、誰も気付く事が出来なかった。


「な、何でお前達がここに!?」

「何で、ですって?」


 水色髪の少女、オリアが凶悪な笑みを浮かべて、笑う。


「プッ、アハハ! 何言ってんの? あんた達がいる所、私達はどこにだってすぐ現れるわよ」


 背負った巨大なリュックから、拳士に一度向けた事のある細い剣を引き抜くと、何の前ふりも無く突然、一番近くにいた山賊に襲いかかる。


「ぐぁぁああ!?」


 剣を相手の体に一切の躊躇も無く突き刺すと、柄に付いているレバーをカシャカシャと数度引く。

 すると刺さった刃が相手の体内でグルグルと回転し、肉を切り裂く。

 ズタズタに切り裂いた体内からズルリと剣を引き抜くと、山賊はうめき声も無くその場に倒れ込んだ。


「て、てめぇ何しやがる!」

「クソ、やりやがった!」


 動揺する山賊達を無視して、オリアがつまらなそうな顔で言う。


「んー、イマイチねこれ」


 剣を振って血を払うと、リュックの横に沢山ぶら下がっている袋を一枚取り、その中に剣を入れてリュックの中に仕舞う。


「次はこれかしら」


 新たに抜いたのは、少し歪んだように刃が柄から斜めに伸びた剣。


「角度を付ける事によって普通の剣より斬れやすくなってるとか言ってたけど……」

「死ね!」


 オリアがモタモタしている隙にと襲い掛かってきた山賊を、その剣で、斬る。


「が……ぁ」

「……何よこれ。やっぱりただ扱い辛いだけじゃない」


 今自分が斬り殺した山賊には目もくれず、オリアが不満そうな顔で愚痴る。


「千剣の……切り裂き姫」


 泣きそうな顔をして、山賊が呟く。

 それは、オリアに付けられている異名だった。

 武器マニアで、いつも沢山武器の入った大きなリュックを背負い、次から次にと怪しい武器を取り出しては、相手を実験台に切り刻む。

 その姿から、付けられたのが千剣の切り裂き姫。


「く、くそがぁぁああ!」


 一方、別な山賊が赤鬼に襲い掛かる。


「ぎゃぁぁああ!」


 だが、赤鬼は相手の振り下ろした斧を易々と避けると、お返しだとばかりに左手で裏拳を食らわせる。

 すると、鎧に付いている大小様々な突起が山賊の顔に突き刺さる。

 それが刺さった状態で赤鬼が腕を引くと、山賊の顔がズタズタに引き裂かれ、悲鳴を上げて怯んだ隙に右手の剣を腹に突き刺して止めをさす。


「あ、赤鬼……鮮血の……赤鬼」


 震えながらそう呟いた山賊の元に赤鬼が近づくと、怯える相手に一切の慈悲も無く、首をはねる。

 斬られた首から噴き出す鎧と同じ色の液体。

 鮮血の赤鬼。

 その鎧の赤は、相手を殺した返り血で赤いのだと言われている。


「ヒギャッ!」

「ゲヒッ!」


 また別な山賊達は、宙を舞う無数の斧や剣に襲われて、次々と倒れていく。

 それらは全て元々、山賊達自身が持っていた物だ。


「クソォ!」

「あー、逃げない逃げない。逃げちゃだめだよ」


 逃げ出そうとした山賊の後ろから一陣の風が吹いたかと思うと。


「あ……れ?」


 瞬時にその体がバラバラになって、空へと高く舞いあがっていった。


「性悪銀ネズミ!」

「クソ、性悪銀ネズミめ!」

「あれ!? 私の呼び名だけただの悪口じゃない!?」


 性悪銀ネズミ。

 それがエリゼの異名だ。

 銀髪の、小柄だが最強の魔法使い。

 様々な魔法を使いこなし、戦い方にこれと言った特徴性が無い為、外見の特徴のみからそんな呼ばれ方になったらしい。


「ふざけんな! 何でコラール隊がこんな所にいるんだよ!?」

「畜生、運が悪いなんてもんじゃねぇ!」


 そんな山賊達の疑問に答える声。




『教えて欲しいか?』




「!?」

「そ、そんな……まさか」


 呼び起される悪夢。

 震える山賊達の目の前で、巨大な影がズズズズ、とゆっくり天へ伸びていく。

 森の中にひっそりとしゃがみ込み、隠れていた巨大なその姿。




『俺が連れてきたんだよ、三人をな!』




『ギャァァァアアア!』


 山賊達の悲鳴。

 星明りに照らされて、大剣神がその巨体を現した。

 拳士とサヤは、エリゼ達の予想とは別に大剣神のセンサーで山賊達の動向を調べ、エリゼ達に山賊達の向かっている方向を伝えると、大剣神で先回りしたのだった。

 コックピット内でサヤが拳士に言う。


『派手に登場したはいいけど、私達の出番無さそうだね』

「あぁ、だな。……まぁいいさ。エネルギーの節約になるだろ」

『うん、そうだね。……にしてもあの三人、あんなに強かったんだね』


 二人の見ているモニターの向こうで、次々と山賊達を屠っていくコラール隊の三人。

 露出の多い恰好と、様々な武器を用いた派手な戦いで山賊達の注意を引きつけるオリア。

 そちらに注意が向いている間に、淡々と山賊達を片付けていく赤鬼。

 そして、逃げようとしたり、遠距離武器を使用する為距離をとる者を魔法で次々始末していくエリゼ。

 チームワークも中々だった。


「……赤鬼。やっぱりあいつが、三人の中でも飛び抜けて強いな」

『え? そうなの? 隊長さんだし、魔法使えるエリゼの方が強いでしょ?』

「いや、そうでもない。あの魔法ってのは便利だが、見てると使う前に必ずワンテンポ隙がある。その隙を狙われたら一瞬だ」

『あー、妙なエネルギーを体内から引き出して、実際に使う魔法に変換してる時だね。……けど、そんなの本当に一瞬の間だよ。そんなのを隙扱いするのは、拳士だけだから』


 そんな話を中でしている間に、生き残っていた山賊達が次々と倒れていき、オリアが巨大なハサミを取り出した所で、赤鬼が最後の一人を両手に持った剣で頭の先から股下まで真っ二つに両断した。


「終わったか?」

『うん。サーチかけたけど逃げたのもいないし、一人も生き残ってないね』

「じゃあ、これで?」

『うん! 山賊は完全に全滅!』


 軽い声で簡単に言ったサヤだが、これはかなりの快挙だった。

 長い長い年月、小さな村々を恐怖に陥れていた山賊達。

 いくら対策を練ってもことごとく破られ、どんな手も通用せず、誰もが匙を投げていた。

 そんな山賊達を、たった一日で軽々と全滅させてしまったのだ。


『この後どうする?』

「三人連れて、またさっきの村に戻ろうぜ。料理もまだ残ってたしな。宴会の続きだ!」

『はぁ……ケンシはお祭りごと本当好きだよね。私もう疲れたよ。お腹ももういっぱいだし、そろそろ眠たくなってきた』

「そうなのか? ならサヤは寝てても良いんだぜ?」

『そういう訳にもいかないよ。ケンシ一人だけじゃ心配だし。……この話は後でいいや。とりあえず、一旦村に戻ろう。三人を呼ぶね』

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