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サポートコンピュータの正体は幼い少女!? 人工生命体、サヤ登場!

「あ、あのぉ……」

「ん?」


 声に拳士が振り向くと、そこに村の村長がいた。


「おう、爺さん。どうした」


 ニッ、と快活な笑みで答える拳士を見た瞬間、村長がガバッと地面に張り付く。


「は?」

「この度は! この度は本当にありがとうございました!」


 更に、ボロボロと涙を流し始める。


「本当に……本当、に……うぅ」


 次第に嗚咽が酷くなり始め、喋る事もままならなくなる。


「へへ、よせやい爺さん。俺は別にあんた達の為に戦ったんじゃねぇ。たまたま俺にとってムカつく奴らがいて、そいつらをぶっ殺したら、それがたまたまあんた達の利にも繋がったってだけだ。気にすんな」

「おぉ、おぉう! ……あぅ……おぉ……!」


 それを聞いて、更に村長の嗚咽が酷くなる。

 もう何を言っているのかさっぱりわからない。


「………………」


 これは一旦放っておこうと拳士が村長から視線を逸らすと、村の奥からオドオドとこちらの様子を窺う村人達の姿が目に入った。


「あー……」


 それを見て拳士が頭をガリガリとかく。


「おい、サヤ!」

『んー?』

「皆、ビビってる。大剣神怖ぇってよ」

『えー! 嘘ー! こんなに格好いいのに!』

「ビジュアルの問題じゃねぇよ。どっかに隠しておけねーのか?」

『えー、隠せって言われてもぉ……』

「とりあえず、一旦お前も降りてこい」


 拳士がそう言ってサヤを呼ぶ。


『はーい』


 すると、先程拳士が降りてきた時に開いた場所よりも更に上の部分が開き、そこから先端に足場の付いた金属製のロープに足をかけて、一人の可愛らしい少女がゆっくりと下降してきた。

 見た目の年齢は、小学校三年生から四年生位だろうか。

 薄い黄緑色のキャミソールドレスを着て、明るいブラウンの長い髪をツーサイドアップにしている。

 くりっとした目で辺りをキョロキョロと見回すと、突然その場にしゃがみ込み地面の砂をすくい上げ、おー、とか驚いている。


「ケンシケンシ、見て見て! この砂凄……痛っ!」


 近寄ってきた拳士が突然頭をひっぱたいた。


「何するの!?」

「おい、サヤ! いつの間に髪なんて染めてやがったんだ! 髪染めるのは駄目だって言っただろうが! そういうのお前にはまだ早いんだよ! もっと大きくなってからだ!」

「別にいいじゃんこれ位! あんたは私のお母さんか! ケンシだってそんな真っ黒髪のままじゃなくて、たまにはお洒落しなよ!」


 そう、彼女こそ大剣神のサポートコンピュータを務める人工生命体、サヤだった。

 外見こそ人間と全く変わらないが、彼女は人間では無い。


「髪染めるのはお洒落とは言わん!」

「お洒落だよ! てか大きくなったらって、私いつ大きくなるのさ!」

「知らん!」

「あ、あのう……」


 突然言い争いを始めた二人に、気持ちが大分落ち着いたのかまともな言葉で村長が話しかけてくる。


「おう、そうだったそうだった。この話は後だ。おい、サヤ。大剣神どうにかなんないのか?」

「後って、もうこの話ここで終わりでいいよ。……うーん、じゃあ」


 少し考えると、サヤが大剣神の方を振り向き、指を上に向ける。

 すると、大剣神が立ち上がりその場で高くジャンプ。

 その勢いのまま、真っ直ぐ空高く飛んで行った。


「大剣神、どこに飛ばしたんだ?」

「宇宙」

「宇宙!?」

「うん。ここ少し重力強いからダイケンジンにも負担大きいし。修復の為にしばらく使うつもりもないから、だったら宇宙で待機させておこうかなって」

「あー……確かに。それがいいかもしれねぇな」

「大丈夫。もし何かあっても、すぐまた地上に降ろそうと思えば降ろせるからさ。……ただ、上がるのも降りるのもエネルギー結構使うから、極力呼びたくないんだけどね」


 何にせよ、大剣神を宇宙に上げた事で身軽にはなった。


「にしても、手慣れたもんだな」

「え、宇宙に上げた事?」

「サヤじゃねぇ。村人の事だよ」


 その言葉に村長が反応する。


「何の事でございましょう?」

「死体。片付けるの手早いなと思ってな」


 拳士の言葉にサヤが納得して周りを見る。

 男達が、殺された村人の死体と山賊の死体を分けて回収し、村人の死体は埋葬用に個別に確保、山賊の死体は台車へと無造作にどんどん積んでいく。

 村から離れた場所に深い穴を掘って、山賊の死体はそこにまとめて埋めるらしい。


「死体は放っておくと衛生的にもよくないしね。臭いも出るし、早めに片付けるのは当然だよ」


 拳士の世界でだって、死体なんて物があればすぐに回収されていた。

 それはわかっている。

 だが、今さっきまで襲われ、怯え、泣き叫んでいた人々が、すぐさま気持ちを切り替えて死体を回収している様に、妙な違和感みたいな物を感じてしまったのだ。


「多分これが、現代人と昔の時代の人との感性の違い、ってやつなんだろうな」

「そうだね。人の数も多くて、システムが完全に確立された現代人の私達から見ると、ちょっと意外に思える光景かもね」


 例え現代でも、先進国以外の場所ではこういう光景も当たり前なのかもしれない。

 いや、日本でだって拳士が気付かなかっただけで、サイボーグ軍団に街が襲われた後は、この様な光景が当たり前だったのだろう。

 命がけの戦いを繰り広げ、一般人よりも厳しい世界を生きてきたつもりの拳士だったが、それでも自分はまだまだ世間知らずだったんだなと改めて思うのだった。


「おーい!」


 そこへ、一人の村人が手を振りながら、こちらへと駆けてきた。


「どうした? 何かあったか?」


 村長がその村人に声をかけると、後ろからガシャン、と金属音がした。


「ケ、ケンシ!」

「ほぅ……」


 村人の後ろから現れたのは、赤黒い醜悪な色の鎧で全身を包んだ、一人の戦士。

 頭部には、湾曲した三本の長く鋭い角。

 体や腕からは大小様々な長さ太さの棘が生えており、下手に触るとそれだけで皮膚が傷つけられてしまいそうだ。

 腰には鎧とは真逆の、真っ白で高貴な雰囲気が漂う、美しい剣を下げている。


「こいつ、つえぇな。気配でわかる。今までの雑魚とは桁が違う。こいつがさっきの奴らのボスってとこか?」


 拳士が嬉しそうに構えをとる。


「お、お待ち下さい!」


 すると、村長が慌てて拳士の前に両手を広げて立ちふさがる。


「あん?」

「違うのです! この方は、先程の山賊達とは一切関係御座いません!」


 村長がそう言うと同時、鎧の戦士の後ろから、拳士と同年齢位の少女が驚いた顔をしながら現れた。


「ちょ、ちょっと、これどういう事!? 山賊達が皆やられちゃってるじゃない!」


 髪はなんと、薄い水色。

 セミロングの長さの髪を片側のみ縛って、サイドテールにしている。

 少女を見てサヤが言う。


「美少女だー」

「あぁ、美少女だな」


 拳士が頷く。


「は? あんた達誰よ。何者?」


 少女が拳士とサヤの二人を警戒する。


「しかもデカおっぱいだー」

「あぁ。デカおっぱいだな」

「な!? 何なのよあんた達本当に!」


 顔を真っ赤にして少女が胸元を両腕で隠す。

 だが、サヤの言う事も最もだ。

 少女は確かに胸が大きい。

 そして、皮で出来た軽鎧を着ているのだがその鎧、胸元が大きく開いているせいで胸の谷間がとても目立つのだ。

 感想として思わず口に出してしまったサヤの気持ちも、わからないではない。


「敵ね! これは敵だわ確実に!」


 少女が左腕で胸元を隠しながら、右手で武器を構える。

 一見、五十センチ程度の短めの細い普通の剣なのだが、よく見ると途中にいくつもの返しが付いており、その返し一つ一つが鋭く研がれている。

 突き刺した時に抜けにくくする為というより、捻って傷口を荒くする為なのだろう。

 だが、返しのせいで相手から剣を引き抜くときに手こずりそうだ。

 使い捨てにするにしても、長さが中途半端に長い。

 扱い辛い、完全に趣味の世界の武器。

 もしかすると拷問用なのかもしれない。


「オリア様、お待ちください! この方達は敵では御座いません! この方達なのです、山賊共を懲らしめてくれたのは!」


 村長が水色髪の少女の前に立ちふさがる。


「は? コイツ等が?」


 水色髪のオリアと呼ばれた少女が、胡散臭そうな目で剣士たちを睨む。

 そこへ、更に別な声が。


「コ、コラー!」


 声に皆が視線を向けると、真っ白な髪を肩位まで伸ばした中学生位の少女が、大きなリュックを背負い足をプルプルと震わせながら顔を真っ赤にしている。


「あ、焦ってたのはわかるけど……に、荷物を、ちゃんと……!」


 そこまで言うと、少女がべしゃっ、と前のめりに倒れ込み、リュックの中身がザーッと流れ出す。

 入っていたのは様々な種類の武器だった。


「た、隊長!」


 慌てて赤い鎧の戦士と水色髪の少女が駆け寄る。


「……あぁ。確かにこれは、敵じゃねぇな」

「うん……敵じゃないね、これは」


 拳士とサヤが、うんうん頷く。

 それを聞いて村長が、ホッとした表情になった。

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