7話 異世界の実感
俺がこの世界にきてから1月ほどたったある日、ソレは起こった。
いつもの様にその日の食材を村の市で買い、家に戻ろうとしていると
カーンカーンカーンカーン
と甲高い鐘の音が響き渡った。すると村の人は緊張した面持ちになり、慌てて家に戻り戸を閉めたり土嚢を積んだりしている。
俺は村人に問いかけた。
「今の鐘は何だったんです?」
「ん?タケシさんか。今の鐘は何か危険なものが村に近づいて来てるって知らせる合図だよ。だから危ないから早く帰ったほうがいいよ!」
「そうですか。ありがとうございます。急いで帰りますね。
お礼を言ってから俺は帰ることにする。本心としてはハールに色々聞いたりしたかったが、今は非難するほうが良いと判断し家に戻ることにした。
その日、ハールは帰って来なかった。
翌日、騎士達のいる小屋に行きハールに取り次いでもらった。
そこで聞いたのは昨日、騎士の一人が村の近くで魔物の集団を見つけたらしい。なので警戒鐘を鳴らして村人の安全を確保しそれから討伐する予定だったらしいが、魔物の巣を見つけたらしく今は討伐作戦を立てているそうだ。
(魔物かあ、やっぱり異世界だなあ)
とあちらとは違う世界だと実感していた。
ハールから説明を受けているとクルスとアルケイドがやってきた。
アルケイドは俺を睨みつけたあとハールと話し始めた。
「なんか俺嫌われてる?」
「仕方ないよ。あいつは隊長のことを、崇拝ってぐらいに尊敬してるからね。そこにぱっと出てきて親しくなってる奴が居るとなればイライラもするんだろうね。」
クルスに聞くとこう答えていた。まあそういう理由があるのなら仕方が無いか、と諦めることにした。
ハールとアルケイドの会話が終わった時、クルスが今思いつたようにハールに言った。
「隊長、今回の討伐作戦を立てるのをタケシにも協力してもらいましょう。彼、なかなかの知恵者なので良い案を出してくれるかもしれませんよ?」
「ふむ、それは面白いな。たしかにタケシなら面白い案を出してくれるかもしれんな。実行出来る案かどうかは別として。」
といった感じで俺も作戦会議に参加することになってしまった。
そこで魔物の特徴を暇そうなクルスに聞いておいた。
まとめると
●魔物はク・シュールと呼ばれる
●大きさは子供ぐらい
●姿は足が6本ある犬のような見た目
●特徴は、鼻が利き、猫のように素早く、胴体がちぎれても獲物に喰いつこうとする獰猛さ
●知能は低い
なんだそうだ。
小屋の中のテーブルを囲んで作戦会議が始まった。
とはいえ作戦を期待されても現代日本の学生が簡単に魔物討伐の作戦なんて思いつくはずもなく会議を聞くだけになっていた。
しかし聞いていると罠を仕掛ける作戦が出てきたので少し気になって聞いてみる。
「やはり罠を使うにしても資材が足りんな。」
「しかし罠を使えれば非常に効果的な作戦です!」
「しかし資材がなければ罠も満足に作れんぞ。」
「ならどうにかして集めればいいんです!」
「どうにかする方法が無いから困っとるんだろうが!」
何やらヒートアップしているので隣に座っていたクルスに聞いてみると教えてくれた。
水攻めのような罠を使いたいのだが大量の水を運ぶための樽が無いのだという。それを聞いて俺は疑問に感じた。
(あれ?これって魔術で解決するんじゃないのか?)
そうおもったので言ってみた。
「これって魔術で運んじゃ駄目なのか?」
言ってみると何人かは苦笑し、クルスはうつむいて必死に笑いをこらえ、アルケイドは見下したような口調でこう言った。
「あのな素人、そんなこと出来るはずが無いだろうが!」
なぜ怒鳴られたのかわかっていない俺に笑い終わったクルスが言った。
「簡単な話、そこまで水を運ぼうとすると水を魔術で操り続けなくてはならないので魔力がたりないのですよ。」
「え?魔術で直に運ばなくても方法はあるだろ?例えば魔術で氷の樽みたいなの作ってそこに水入れたりとかさ?」
と言うと部屋にいる皆が黙り込んだ。
(あれ?これってまずいこと言った?)
と考えた時
「そんな方法が・・・」「たしかにそれなら・・・」
といったつぶやきが聞こえた。
小屋の中がざわざわと騒がしくなってきたときハールが
「今は会議中だ!雑談なら表でしろ!」
と怒鳴りつけ静かになった。
結果、会議で出た水攻めを用いた作戦が実行される事になった。
当然ながら氷の魔術を使った運搬方法を取ることも決定した。
3日後、4日ぶりに家に帰ってきたハールに作戦の成功を聞き、俺が騎士団の中で知恵者として認識されてしまったことを伝えられた。
ハールにはこれからも知恵を借りることがあるかもしれんぞ、と言われた。
どうだったでしょうか?
作者の頭では上手い作戦を思いつかないのでこういった方法を取らせてもらいました。