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異邦人と田舎騎士  作者: 苫屋たぬきち
3/15

2話 キイス家


「ハールって貴族か何かなの?」

ハールの家を見た俺の第一声がそれだった。


「いやそんな事ないぞ。どうしてだ?」

「俺の世界でこんな大きな家に住んでる奴なんて周りに居なかったからな。」

「ふむ。そういう事か。だがこの国の騎士やってる奴なら最低でもこのぐらいの家には住んでるぞ?」

しれっとハールはそんなことを言う。


「この国の騎士って特権階級なのか?」


ハールの答えを聞いて疑問に思ったので訪ねてみた。


「特権階級ではないぞ。ただ上の方針であんまり騎士にみすぼらしい家に住まれては騎士の威厳が無くなると考えてるらしくてな、だから場所にもよるがこのぐらいの田舎だと最低でもこのぐらいの家に住めと言われるんだ。」

「なるほどな。しかし立派な家だなあ。」

「まあ外観を眺めるのは後にして、とりあえず中に入ってお前の今後について話し合うぞ。」


と言ってハールが中に入って行くのでついて行く。




ハールの家の中はいたってシンプルだった。華美な装飾など無く、不要な家財道具なども無かった。

(質実剛健ってこういう事を言うんだろうな)

と思ってしまうぐらい必要な物以外無かったのだ。


居間らしき部屋には一畳ぐらいの大きさのテーブルがあり、椅子が3つ置いてあった。

その内の1つにハールが座り1つを進めてきたのでそれに座った。

するとハールが


「では改めて自己紹介だ。俺の名前はハール・キイス、クディール王国第22隊隊長だ。まあ隊長と言っても形だけみたいなもんだ。なんせ隊員が7名しか居ない田舎騎士隊だからな。ああ、そうだ!忘れるところだった。この家に一人暮らしなので部屋を持て余していたんだ。だからこの家に住んでくれるとありがたい。」

「本当か!それは俺にとってもありがたいんだが、ただ世話になるのもなあ・・・」

「ふむ、ならこの家の管理をしてくれないか?男が一人で住んでても掃除が行き届かんのだ。」

「ああ、そのぐらいならお安い御用だ。」

「ふむ、ならそれで決まりだな。自己紹介の続きだ。魔術の得意系統は水と地だ。とはいえ基礎魔力量があまり多くはないのでめったに使わんがな。俺の自己紹介はこんなもんだ、何か質問あるか?」


とハールが聞いてくるので魔術について聞いてみる。


「この世界って誰でも魔術って使えるのか?俺の世界には魔術なんてお伽話の中にしかなかったから気になるんだ。」

「ふむ、そういったところも違うのか。しかし魔術なしなんて不便そうだな。まあこの世界は誰でも魔術は使えるぞ。ただし個人差で使える魔力量に差はあるし、得意系統なんかもあるからどんな魔術でも・・・というわけにはいかんがな。」

「なるほどな。あと基礎魔力量って何なんだ?なんとなく予想はつくが。」

「うむ、基礎魔力量ってのは個人が1日で回復できる魔力量のことだ。」

「ああ、そういう事か。俺は個人の最大魔力量の事だと思ってたよ。」

「ふむ?魔力量に最大値は無いぞ?」

「え!?どういう事だ?」


慌てて俺は聞き返す。当然だ。よく慣れ親しんだファンタジーの設定でも魔力量に限界が無いなんてチートぐらいでしかありえなかったからだ。

ハールはそんな雰囲気を察して説明してくれた。


ハールいわく、魔力量に限界は無いが、貯めれば貯めるほどに効率が悪くなってくるらしい。

さらに日常生活で「民生魔術」と呼ばれる魔術(ライターぐらいの火をおこしたり、水を洗剤みたいにする魔術)を使用するので一般人が魔力を貯めこむ事はないそうだ。

ただし本職の魔術師たちは普段から生活時の魔力を極力使わないようにしてるそうだ。


俺が説明に納得したと判断したハールは俺に自己紹介を促してきた。


「ふむ、納得いったなら今度はお前の自己紹介だな。」


「わかった。俺の名前は東野武志、家名が東野で名が武志だ。まだ学生で学校からの帰り道でめまいがしたと思ったらこの世界にいたんだ。趣味は料理と読書だ。」


質問は?と促してみる。


「ふむ、その歳で学生か・・・頭良いんだな。」


と勘違いしてるようなので訂正しておく。


「いやいや、頭は良くないぞ。ただ俺の国では学校が4段階にわかれていて・・・」


と日本の学校制度について説明をしたところ


「ふむ、しかし裕福な国だったんだな。」

「まあな、でも最近は不景気で4つめの学校まで出ないと仕事がほとんど無いんだ。」

「ふむ、なるほどな。納得した。そうだ、もう一つ聞きたいんだが読書が趣味と言っていたな?」

「ああ。だけどそれがどうした?」

「俺も読書が趣味なんだがお前何か本持ってるか?あったら見せてもらってもいいか?」


ハールは少しヒートアップしてるようだ。

まあ本も何冊かあったのでそれをリュックから取り出していく。


「おおー!なんだお前の本、紙の質がすごく良いな!・・・む、これは・・・なあタケシ、一つ頼みがある。」

「ん?なんだ?本ならいくらでも貸すぞ?」

「いや、まあそれはありがたいんだが、・・・文字が読めん。」

とても落ち込んだ様子でハールはつぶやいた。


「異世界の書物を読めると思ったらまずは言語を覚えないといけないということか・・・、タケシ、文字を教えてくれ。」

「ああ、それは構わん。むしろ俺にもこっちの文字を教えてくれ。」

「ふむ、ならお互いに教えあうとするか。」


 話もまとまり自己紹介も終わった時、外からゴーンゴーンと鐘の音が鳴り響いた。


「今の音は?」

「ああ、あれは時間を知らせる鐘の音だ。今のは9時だな。」

「時報ってことだな。そういえばこっちの世界って時間とかってどうなってるんだ?」

「ふむ、時間か。まず秒からだな。」

「秒か。それってこのぐらいだろ?」


言ってから俺はポケットから携帯電話を取り出してストップウォッチの機能を使ってみる。


「む、これは凄いな。こんな小さな物が漏刻以上の機能を持ってるとは・・・ふむ、1秒あたりはこちらと同じようだな。説明の続きをしよう。120秒で1分、30分で1時間、24時間で1日、360日で1週期だ。ちなみに7日で1週日と言うんだが覚えれたか?」

「ああ、あっちの世界とあんまり差が無かったから大丈夫だ。でもところどころ違うから気を付けないと間違えそうだ。」

頭のなかで反芻しながら答えてリュックから取り出したルーズリーフにメモしていく。

するとハールが


「タケシ、惜しげも無く紙を使うんだな。ただでさえ紙は高いのにそんな白い紙なんて貴族でも持ってないぞ。」


とハールがあきれたように言う。


「あっちの世界では紙は別に貴重品じゃなかったんだ。そうだな、こっちで言えば平民の子のお小遣いで何百枚単位で買える程度の価値だな。」

「それは凄いな。だがもっと粗い紙だろう?」

「いや、これと同じ紙だな。」

「なるほどな。お前の持ち物を見ても思っていたが、タケシのいた世界は随分技術が発達していたんだな。」


納得した、と言った表情のハールであった。

それから丸1日使ってこちらの常識、作法、文化などを教えてもらい同居に関する決め事をして就寝した。





*漏刻=水時計の一種。古代中国などで用いられていた。

どうだったでしょうか?出来るだけ間は置かずに更新していきたいと思います。

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