閑話 タケシ・ヒガシノという男
俺の家に居候しているタケシはとにかく変わった男だ。
そもそも居世界の人間だという時点で常識からかけ離れている。しかしそれを信じたのはタケシの持ち物が原因だろう。今のこの世界では到底到達しえない高すぎる技術によって作られたであろう道具の数々だ。タケシが言うには、あちらの世界では誰でもが持っているような物が大半だという。
さらにタケシの持っている書物に書き記されているという情報もすごい。まだ俺はあの文字が読めないので詳細はわからんが竜巻の発生する仕組みや、他にも物を投げた場合の動きを正確に数字で表すための知識が記されているそうだ。
さらに本人の知識も大したものだ。高い所から物を落とした場合の地面に到達するまでの時間を計算したり、炎や水の性質を俺達にわかりやすく説明するなど、王都の学者でも出来ないことを平然とやってのける。しかも農業に関する知識まで持っていたりするのだ。まあそれに関しては本人は「俺のは半端な知識だから。」と言っていたが大したものだと思う。
魔術に関しても変わり者だ。基礎魔力量は少ないのに魔術に必要な魔力量を抑える事で多用出来るようにしている。本人に聞くと「発生の原理さえわかっていれば出来るよ。」というが説明を聞いても俺には出来なかった。
王都の魔術師であるエピクテトスは研究対象として認識しているぐらいだ。
戦術眼もなかなかのものだった。意見を言う時は俺達には無い視点からものを観てその上で案を出すのでなかなか関心させられたりもする。まあ経験が足りないようなので穴があったりもするが、そこは皆で補えば良いと思う。本人は「ゲームや小説でそういうのを見たことあるだけ。」と言っていた。
人柄も良いのも面白いところだと思う。何せ排他的な田舎の村でほんの4~5週日で村人達に受け入れられているのだ。しかも先日、王都に行った時などはいつの間にか王と友人関係になっていた。
あの方は人を見る目がある方なので、あの方に認められたという事があいつの人柄を表しているだろう。
これからはどんな変化をこの村にもたらしてくれるのかが気になるところだ。
今回はハール目線でお送りしました。
今のところハールの感覚では「変わってるけど面白くて、信用出来るけどよくわからない人物」みたいな感じになっています。