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マジックカットボーイ

作者: 蓮村 遼
掲載日:2026/02/14

【マジックカット】とは……、フィルム包装を、どこからでも簡単に手で開けられるようにする【易開封加工技術】。




『おはようございます! 朝のニュースです。

 昨日、行方が分からなくなっていた斎藤光さんが遺体で発見されました。遺体は損傷が激しく、所持品から斎藤さんであることが確認されました。警察は殺人事件として捜査を進めており…』



 朝から物騒だ。最近は明るいニュースが貴重な気がする。

 朝食の準備をしながら、僕はそんなことを考える。

 朝食は大体和食にしている。その方が調子が良い。納豆は臭いが気になるが口臭対策をして、できるだけ毎日食べるようにしている。



「――しっかし、本当にこれは切れないな! 何が『どこからでも切れます』だ!! 切れた試しがない」



 納豆パックに入っている、からしとタレの袋。こういうのには必ずマジックカットがついている。どこからでも切れる画期的な発明だ思うが、いかんせん、一発で切れたことが少ない。どこからか引っ張ると、ビニールがにゅーっと引っ張られ、また別の箇所を引っ張るとにゅーっとなる。それの繰り返し。諦めが早ければ良いが、諦めの悪い日は数回チャレンジした上で勢い余ってタレをぶちまけることもしばしばだ。

 これで毎朝イライラするのは解せない。結局2回チャレンジのあと鋏でタレの袋を切り、かき混ぜた納豆に混ぜる。

 伸びてしまった袋は洗いにくいというオマケ付き。




 出勤の鞄を引っ掴み、玄関を開ける。

 眼前に人が立っていた。

 かなりびっくりして全身がビクッと跳ねあがる。

 人は男性っぽく、黒いスーツを着用し蝶ネクタイ。黒い革靴、白い手袋をして、顔は……丸い。

 頭の位置には黒い球体が載っている。そして、その球体はパカッと真ん中で分かれており、下半球に、上の半球がややズレてのっかっている。

 上の半球には白い斑点が二つ。まるで目のような。

 お互いに黙って相対する。時間とともにその異様な見た目にも少し慣れた。僕は意を決して話しかけた。



「あの……。どちら様でしょうか?」

「ボクはマジックカットボーイダヨ! マジックカットはどこからでも切れるんダ!」



 わずかな衝撃があって、僕の視点が回転した。でんぐり返しをしたみたいに縦回転。そしてバウンド。

 僕はマジックカットボーイを見上げていた。

 そして無数の切れ目が入った僕の身体も。

 マジックカットボーイが僕の身体に近づき、身体の切れ目を一つずつ、丁寧に裂いていく。僕の胸、腕、腰、足は無抵抗に、それはそれは綺麗に分離していく。

 しゃがみながらマジックカットボーイは足首まで裂き終わった。



「ネ! マジックカットはどこからでも切れるんだヨ! 切れないなんてこと、ないんだからネ!!」





『おはようございます!朝のニュースです。

 昨日、○○県◆◆市のアパートで男性の遺体が発見されました。

 遺体で発見されたのは、この部屋に住む大森新(おおもりあらた)さん(30)です。朝8時頃、警察に『隣の部屋で男性が亡くなっている』と近隣住民から通報があり、警察が駆け付けると大森さんが自宅玄関で倒れていました。大森さんはその場で死亡が確認されました。

 大森さんは遺体は、バラバラに切断された状態で発見され、警察は前日の事件と同一犯の可能性が高いとして捜査を進めています……』





「ねぇお母さーん!なんでこれ、『どこからでも切れます』って書いてるのに切れないの~?」

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